
目次
まえがき
こんにちは。本記事では受験生が英語の学習において陥りやすい誤りにも触れながら、どのように英文解釈の学習を進めていけば良いのかということについて、例題とその解説を通して述べていきたいと思います。
→この記事が対象としている読者は高校英文法を一通り学び終えた受験生から大学生、英語指導者の方までと幅広いです。
現在、巷にはいわゆる英文解釈本なるものがたくさん存在しており、大学受験において取り組まない受験生はいないと言っても過言ではありません。実際自分も和訳問題が苦手で半分くらいしか点数が取れず、英語の偏差値が駿台全国模試で65程度で停滞していた高1の冬に英文読解問題精選という英文解釈の本に取り組んだことで、その後の駿台全国模試で偏差値75~80に安定し、高3の京大模試では全国15位以内を合計7回取ることができました。
自分は未知語に対する恐怖心からか英語がもともと嫌いでしたが、母親が英語教師であったこともあり中学2年間で高校英文法を一通り終わらせると自信もつき、そこからはずっと完全独学で英語を学習し続けています。その独学の期間において転換期となったのがこの英文解釈に取り組んだ高1冬から高2春の時期であったと、今振り返ってみてそう感じています。
英文解釈がいかに重要であるかは強調しても強調しきれません。英文解釈の学習を進めるにあたって方向性を間違えてしまうとせっかくの良い参考書も台無しになってしまうこともあるでしょう。本記事はそのような落とし穴にハマらないようにする一助にもなるかもしれません。
※なお、本記事の最後に自分が実際に取り組んだ英文解釈の参考書を紹介しています。ぜひ実際に手に取って学習を進めてみてください!
また、本記事を書くにあたって北村一真先生の「英文解体新書」の影響を強く受けているかと思います。この本は自分が最近出会った本なのですが、本当に素晴らしい本で、自分が受験生の頃に出会っていれば、と思う1冊です。(ちなみに以下で扱う問題文(英字新聞から引用)もこの本でも一部扱われています笑)
さて、前置きが長くなりましたが、本題のほうに入っていきましょう!まずは問題を解いてみてください。(実際に手元に紙とペンを用意して英文を和訳してみましょう。)
※本記事内にミスを発見した場合自分のTwitterアカウントのDMにてご連絡ください。(Twitter:@SacramyOfficial)
問題
下線部以外を読まなくとも問題が解けるように問題文に日本語で文脈も書いています。やや難しいですが、実力がある方は全文読解に挑戦してみてください。また、今回は難しいと思われる語に関しては、以下に注釈を付けています。こちらも実力がある方は注釈を見ずに意味を類推してみてください。
(問)次の文章を読み、下線部(a)および(b)を和訳しなさい。
なお以下の文章では文部科学省がフリマサイトを運営する3社と協力して宿題代行に関連する商品と思われるものを売ることを禁止しようとしているということについて言及されている。
It's the last week of August, when children who have spent their entire summer vacation slacking off suddenly realize with daunting dismay that they have piles of book reports and diaries left untouched, not to mention an art project they were supposed to start weeks ago. Bad news for them and their parents trying to help them out: Their last-minute “trump card” to get all the homework done is no longer available.
Operators of major online shopping websites — Mercari, Rakuten and Yahoo Japan - each released a joint statement together with the education ministry on Wednesday announcing they will ban the sales of what appear to be the works of a niche, if increasingly rampant, business: homework-by-proxy. (a)The three firms said that they will “remove immediately” from their websites items that appear to be catering to children desperate to conjure up essays or art projects they have neglected to work on all summer long.
(中略)
(b)Those behind the niche business go to great lengths to perfect the authenticity of their fake assignments. Some deliberately keep their prose childish to make their book reports – a popular assignment in Japan – look as if they had been written by 10-year-olds, while others dig up old artworks made by their own children in the past and seek to profit off them, the official said.
(注釈)
下線部(a)
・cater to「~の要望を満たす / ~に応える」
・conjure up「(魔法のように)一瞬にして終わらせる」
下線部(b)
・the niche business「このニッチな事業→文脈上、宿題代行業のことを指しています。」
・profit off「~を利用して利益をあげる」
出典:The Japan Times 2018 8/29
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英文解釈の基本的な着眼点
英文解釈の基本原則
そもそも英文を読む行為とは何でしょうか?読み慣れた日本語であれば特別意識することなく「これが主語であれが動詞で…」という風にすらすらと読み進めることができると思います。しかし、英文となるとまた話は別です。英文を読んでいく中で、それぞれの語がどのような文法的・意味的役割を果たしているのかを絞り込んでいき、修飾語句を取り払うことで英文の骨格を明らかにすることになります。例えばthatという語1つを例に取ってみても①代名詞のthat「あれ」②名詞を限定するthat「あの」③接続詞のthat(よくthat節と呼ばれている)④関係代名詞のthatなど様々な可能性が考えられるでしょう。
では語の意味を絞り込みながら英文を読み進めていくにあたってどのような文法上のルールが必要になってくるのでしょうか?一番基本的なものは以下の5つでしょう。ほとんどの英文解釈の本の最初のほうで言及されていることです。
1°)原則として英文には文の骨格をなす主語と動詞が存在している。
2°)主語になり得るのは名詞のみであり、前置詞+名詞のカタマリで名詞が前置詞の目的語になっている場合、その名詞は主語には成り得ない。(前置詞+名詞≠主語)
3°)that, whenなどの従属接続詞が存在する場合、そこからあたかも1つの文章が埋め込まれたかのような構造になり、その文章が終わると元の文に戻る。
4°)and, but, so, orなどの等位接続詞は前後が原則として文法的に同じ形のものを結びつける。例えば右辺が名詞ならば左辺も名詞であり、右辺がSVを含む節であれば左辺もSVを含む節である。
5°)他動詞には原則として目的語が存在する。
他にも基本的なルールはたくさんありますが、特に初歩の段階で留意しておくべきことはこの5点だと思います。他のルールは英文解釈の勉強を進める上で自分で発見していくでしょう。自分なりに留意しておくべきルールを紙にでも書き出してどんどん溜めていきましょう。
英文へのマーキング
さて、ここまでで英文解釈に必要となる基本的なルールを確認してきましたが、実際に英文を読んで和訳していく時に、文章中の語の意味がすべて分かったとします。ですが、そのまま何も書き込まずに訳し始めると複雑な修飾関係を頭の中でコントロールするのが困難であったり、単語の訳し忘れが生じてきたりと様々な問題が発生してきます。そのため、英文解釈をする際には、把握した構造を記録しておくという意味でも、ある程度のマーキングが必要であると考えています。
もちろん最初はSVOCがどの語かということも詳細に書いていても良いかもしれませんが、慣れてくればそこまで必死になってマーキングする必要もないでしょう。マーキングは形骸化の危険性も常に孕んでいることを忘れないでおきましょう。
ここでは最低限必要なマーキング事項について述べておきます。(このマーキング方法は英文読解問題精選で紹介されていたものをベースとして、自分なりに実践したものを組み込みました。)
1°)前置詞+名詞のカタマリは()で囲む
→主語に成り得ない箇所なので文の骨格である主語+動詞を明確化するために()で囲んで一度バイバイしておきます。また、それ以外にもどこに修飾しているかが明確になり、文構造が把握しやすくなります。
2°)従属接続詞+SVのカタマリや関係代名詞から始まる修飾部分は[]で囲む
→先ほども述べたように従属接続詞を起点として新たに文章が始まってしまうので[]で囲んで切れ目を明確にしておきます。また、関係代名詞の場合も切れ目を明確にするために囲んでおきます。
3°)等位接続詞で結ばれる語句や熟語は〇で囲んで繋げておく
→等位接続詞は先ほど文法的に同じ範疇のものを結びつけると言いましたが、日本語に訳す際にこの点が意識できていないと突拍子もない訳になってしまうので、「一体どことどこが対等なのか」を明確にしておきましょう。
→熟語に関しては例えば動詞+前置詞の場合でも複雑な修飾語句や挿入句などによって動詞と前置詞が離れて位置しており、カタマリとして一見認識しづらいことがしばしばあります。その際も〇で囲んで繋がりを意識しておくと、構造把握にも役立ちますし、和訳の際にも効果的です。
ここまでが英文解釈全般に関することです。さて、それでは以下で実際に英文を読み解いていきましょう。都合上、解説するのは下線部のみとさせていただきます。
解答・解説
下線部(a)
・The three firms said that they will “remove immediately” from their websites items that appear to be catering to children desperate to conjure up essays or art projects they have neglected to work on all summer long.
The three firmsが主語、saidが動詞であり、後ろにthat節が続いていることはすぐに読み取れるでしょう。
that節の中を読み進めていくわけですが、theyが主語となっているのですが、これに対応するremove「取り除く」という動詞に注目します。removeは他動詞です。先ほどの基本原則⑤から「何を」にあたる目的語が必要なわけです。removeの直後にfrom their websitesというカタマリがありますが、これは前置詞+名詞のカタマリであり品詞単位で見れば名詞とは異なり目的語には成り得ない部分です。そこでこの部分をいったん()でくくって再び「何を」にあたる目的語を探そうという問題意識をもって英文を読み進めていくことになります。
さてここでこのような6つ目の原則を提案しておきましょう。
6°)関係代名詞節において先行詞を受ける関係代名詞が後ろに続く節の主語になっている場合原則として関係代名詞を省略することはできない。
するとitems「商品」という名詞が出てきて、その後ろにthatから始まる関係代名詞節がありことが分かります。ここでは先行詞を受ける関係代名詞が後ろに続く節の主語になっており、元の文章ではitems appear to be catering…となっていますね。
細かいことですが、主語+動詞の後の目的語や補語、(入れ子になっている節)などの部分に主語を表す代名詞が来た場合、原則「自分の / 自分たちの」と訳すのが普通みたいです。
→自分が駿台全国模試で明らかに主語を受けているtheirを「彼らの」と訳出したところ×されたのが今でも強く印象に残っています。
→+αで代名詞を訳出するときは生物か無生物かには注意しておきましょう。無生物を受けているにもかかわらず「彼らの」なんて訳してしまうと明らかに不自然です。せめて「それらの」くらいにしておいたほうが良いですね。
名詞の移動
よくあることなのですが、第5文型(SVOC)のOがCの後ろに移動してSVCOとなったり、SVO+前置詞+名詞のOが後ろに移動してSV+前置詞+名詞+Oとなったりします。この移動が起きる時には①Oが長い名詞句である場合 ②Oが新情報であり、文末に移動させることで焦点を当てたい場合が多く見られます。例文を通して確認しておきましょう。
ちなみに、本問ではremove items that… from their websitesが元の文ですが目的語にあたる2つのwhen節が長く、from their websitesが旧情報であるため新情報の名詞句のほうが後ろに移動していますね。
(例1)I strongly believe that it is always the scientist's responsibility to make clear when he is speculating and when his conclusions are clearly warranted by his observations.(慶応義塾大学)
「私は、自分がいつ推論をしているのかということや、自分が出した結論がいつ観察によってはっきりと正当化されるのかを明確にすることが、常に科学者の責任であると強く信じている。」
→make when… and when… clearが元の文ですが目的語にあたる2つのwhen節が長すぎるために後ろに移動しています。また、that節内のitはto不定詞以下を受けています。
(例2)The refusal of an attempt by a friend to initiate conversation is likely to lead to charges of moodiness or some other personal failings. That is, the injured party will regard your behaviour as antisocial in that you have apparently deliberately rejected an attempt to keep open the channel of communication that exists between you.(京都大学 1995年後期)
「友人が会話を始めようとするのを断ると、相手を不機嫌にしたり、何らかの個人的な失敗を招いたりする。つまり、2人の間に存在する意思疎通の経路を開いたままにしておこうとするのを意図的に拒否したように見えるという点で、気分を害した相手はあなたの行動を社交的ではないとみなすだろう。」
→第1文目ではrefusalの部分で名詞構文が用いられており、元の文に直すとto refuse an attempt by a friend to initiate conversationとなります。名詞構文に関しては本記事でも後で触れますが英語特有の表現なので日本語らしく元の文に直して訳出しましょう。
→第2文で登場するapparently「見たところ~のようである」は文修飾の副詞です。
→keep the channel… openが元の文ですが目的語にあたる2つのwhen節が長すぎるために後ろに移動しています。
次に問題となってくるのは形容詞deperate「必死な」の修飾先です。補語として読む可能性はまずないでしょう。そこで名詞に対する修飾語句として読むのであれば名詞childrenを後置修飾していることになります。さらにdesperate to「~しようと必死になって」というカタマリが見えてきます。
最後に難しい部分はessays or art projects they have neglectedという部分です。ここで7つ目の原則を提案しておきます:
7°)名詞+名詞+動詞が続いた場合、名詞と名詞の間に関係代名詞が省略されている可能性を検討する。
→関係代名詞節の中で先行詞を受ける関係代名詞が主語ではなく目的語になっている場合です。特に2つ目の名詞が本問のようにtheyという代名詞だったり、動詞を元の文の動詞とした時に文構造に矛盾が生じる場合は特にその可能性が極めて高いです。
→本問ではthey have neglected to work on all summer longがessays or art projectsを修飾しています。もしart projectsだけが先行詞だとすると後者だけが重くなって不自然ではないでしょうか?
neglect toは「(うっかり)~するのを怠る / 無視する」のニュアンスです。(←意図的に無視するのがignore)
ここまでを踏まえて以下のようなマーキングが完成するでしょう。
The three firms said [that they will “remove immediately” (from their websites) items [that appear to be catering (to children) ←desperate to conjure up essays or art projects [they have neglected to work on (all summer long).]]]
(解答例)
夏の間ずっと取り組むのを怠っていた作文や図画工作の課題を終わらせようと必死になっている子供たちの要求に応えているように思われる商品を自分たちのウェブサイトから「直ちに取り除く」とその3社は発表した。
下線部(b)
・Those behind the niche business go to great lengths to perfect the authenticity of their fake assignments.
thoseは「~な人々」を表す用法です。
behindは「~の背後に」の意味がよく強調されますが「~の背後に→~の背後で支持して→~に従事して」くらいのニュアンスで捉えておくと文脈に自然な形でハマります。
niche「ニッチな」は今では日本語にもなっていますね。ニッチな産業という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
go to great lengths to「~するためにどんなことだってする」は見慣れないイディオムかもしれません。ここの部分を読んだ段階でこの語句の意味が分からなくとも諦めてはいけません。
・未知語の類推
未知語の意味の類推は、
①文意から推測
②対比・言い換えから推測
③単語の成り立ち・語源から推測
④日常のカタカナ語から推測(和製英語には注意!)
の4つの視点を持っておきましょう。
本問では例えば文意から推測していくことになるのですが、この場合英文でよくある文章展開として「漠然から具体」なるものがあります。まずは抽象的な内容で言いたいことをスパッと述べた後、それに続く形で具体的内容を付加していく、という流れです。本問もgo to great lengths toの部分が直後で具体化されているので後ろを読んでから意味を推測してみましょう。
また、go to great lengths toはイメージ的に捉えてやると「~するためにクソ長い距離を行く / 時間をかける」くらいになるのでそこから文脈に合う形で訳語を調節するのも1手かと思います。
to不定詞の後に続いているのでperfectは今回は他動詞として「~を完璧にする」という意味で用いられています。
the authenticity of their fake assignmentsの部分は直訳すると「子供たちの偽物の宿題の本物らしさ」となりますがやや日本語として不自然です。これも先ほどチラッと言及した英語特有の名詞構文によるものです。
→本問ではperfectと合わせて「自分たちの偽物の宿題を本物っぽく仕立て上げる」くらいで訳しておくとよいでしょう。
・名詞構文
名詞構文は動詞または形容詞が名詞化して英文の中に組み込まれたものであり、この名詞構文は英語特有の表現です。ですので、直訳してしまうと日本語として不自然になることがしばしばあります。そのため、訳出する際には、名詞を元の動詞または形容詞に戻してから訳すようにしましょう。
①他動詞を名詞化する場合、目的語はofまたは所有格で補う。主語もof, byまたは所有格で補う。
→主語のみbyを使用することもあります。特に、名詞の後ろに主語のofと目的語のofの2つが続くと分かりにくいので、その場合は主語のほうがofではなくbyで表されていることが多いです。
→また、他動詞の中にも目的語を示す前置詞の部分にof以外が来る特殊な動詞もあります。(influence / stress on [名詞], answer to [名詞], control over [名詞], demand, love for [名詞]など)
(例)The reduction of inflation must be the government's priority.
「インフレの軽減は、政府が優先してやることにしなければならない。」
→目的語はof以下です。
(例)His acceptance by the dolphin gave him confidence.
「彼はイルカに受け入れてもらったので自信がついた。」
→目的語を所有格で表していることに注意しましょう。主語はby以下で表されています。
(例)I believe that the discovery by computer science of the technical challenges overcome by our everyday mental activity is one of the great revelations of science.(京都大学)
「私は、私たちの日々の頭の活動によって克服される技術上の難題をコンピュータ・サイエンスが発見したことは科学が明らかにした重要なことの1つであると思う。」
→discovery by [主語] of [目的語]とrevelations of [主語]の2つの名詞構文が使用されています。revealは他動詞なのに目的語がない!?と一瞬戸惑うかもしれませんが、revealの目的語はこの文の主語ですよね。目的語をわざわざ書かなくともわかるので書かれていません。
②自動詞を名詞化する場合、主語はofまたは所有格で補う。
動詞が取る前置詞はそのまま受け継ぎます。例文を見ておきましょう。
(例)The punctual arrival of airplanes at the airport cannot be guaranteed.
「飛行機が空港に時間通りに到着することは保証できない。」
→主語をof以下で表しています。arrive atのat以下は名詞構文としてしっかり受け継がれていますね。
(例)The star's presence in a film is a promise of what you will see if you go to see the film.
「ある映画にスターがいることは、その映画を見に行った時、見るものがあることを約束する。」
→主語を所有格で表しています。
③形容詞を名詞化する場合、主語はofまたは所有格で補う。
(例)Montaigne believed in the superiority of wisdom- knowing what helps us live happily and morally- over mere learning.
「モンテーニュは、知恵、つまり私たちが幸せにかつ道徳的に生活するのを助けてくれるものを知っていることが単なる学問よりも優れていると信じていた。」
→Wisdom is superior to mere learning. が元の文章ですね。
・Some deliberately keep their prose childish to make their book reports – a popular assignment in Japan – look as if they had been written by 10-year-olds, while others dig up old artworks made by their own children in the past and seek to profit off them, the official said.
全体を見渡すとsomeとothersの対比が為されています。おなじみの「~する人もいれば~する人もいる」という構文です。(今回は対比のwhileまでセットで付いてきていますね。)この構文でもそうなのですがsomeやmanyなどの数量詞やsometimesやoftenなどの頻度を表す副詞は文末で訳して処理したほうが日本語として綺麗な場合が多いです。
前から順に読んでいくとまずはkeep their prose childishの部分でkeep OCの形を発見できます。その後のto不定詞以下ではmake O+動詞の原形の構造(いわゆる使役動詞のmake)をしています。もしこの部分をmake「作る」で捉えてしまうと動詞のlookだけが浮いてきて対応する主語がなく構造が矛盾します。
to不定詞(副詞的用法)の部分は目的「~するために」で訳しても文意は一応通るのですが、ここではむしろ結果「~し、(その結果)~となる」で訳すほうが自然でしょう。(接続詞のandに近いイメージですね。)
難しい英文になるとこのように動詞の後にOCと2連発したり2重目的語が来たり、O+動詞の原形が来たりと色々な要素が詰め込まれることになります。(しかも更にややこしいものはここに倒置も絡んできて…という感じです。ほんとうに厄介な構造です。)
挿入句であるa popular assignment in Japanは直前のbook reportsを補足的に説明しています。
文の最後でthe official saidと締めくくられていますが、元の文に直すと、the official said some deliberately… , while others… profit off themとなります。
ここまでを踏まえて以下のようなマーキングが完成するでしょう。
Those (behind the niche business) go to great lengths to perfect the authenticity (of their fake assignments.) [Some deliberately keep their prose(O) childish(C) (to make their book reports(O) (– a popular assignment (in Japan) –) look(C) [as if they had been written (by 10-year-olds)]), [while others dig up old artworks ←(made by their own children (in the past)) and seek to profit off them]], the official said.
(解答例)
このニッチな事業に従事する人々は自分たちの偽物の宿題を本物っぽく仕立て上げるためにどんなことだってする。意図的に文章を子供っぽくして読書感想文ーこれは日本ではよくある宿題なのだがーをあたかも10歳の子供が書いたかのように見せかける人もいれば、自分たち自身の子供がかつて作った古い作品を掘り出してきて利益を上げようと利用する人もいる、とその職員は言った。
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生徒の答案添削例
下線部(a)
(答案例1)
その3社は、長い夏休みの間[×夏の間ずっと]取り組みをおこたった作文やポスター[×図画工作の課題]を必死に終わらせようとしている子供たちの要求に応じるための[×応じているように思われる(appearの訳抜け)]商品をウェブサイトからただちに取り除くと言った。
(答案例2)
夏の間ずっと取り組むのを怠っていたエッセイや芸術作品をするのに必死な子供たちの代行をしているように[×要求に応えているように(cater toの誤訳)]見える商品をウェブサイトから[×ただちに(immediatelyの訳抜け)]取り消す予定だと3社は発表した。
(答案例3)
フリマサイトの3社は子供たちが夏中に取り組むのを怠ったエッセーや美術作品をやけくそになっている[×終わらせようと必死になっている(conjure upの訳抜け)]子供たちに対しあっという間に作品を作ってあげるケータリングの[×の要求に応えている(to conjure upの修飾先のミス・cater toの誤訳)]ように見えるウェブサイトの項目を[×商品を自分たちのウェブサイトからただちに(×××removeの目的語のミス・immediatelyの訳抜け)]取り除くように言った。
下線部(b)
(答案例1)
宿題代行業に従事する人達は、自分たちが代行した宿題を本人がしたと完璧に信じさせるために[×ように見せかけるために(perfect the authenticityの誤訳)]多くの時間を費やす[×どんなことだってする(go to great lengthsの誤訳)]。わざと文章を子供っぽくして、読書感想文ーこれが日本ではよくある宿題なのだがーをまるで10歳の子供が書いたかのように見せかける者もいれば、一方では[△もいる一方で、(whileの処理)]自分自身の子供がかつて書いた作品を掘り出してきて利用しようとする者もいる、とその広報の人[×職員(officialの誤訳)]が語った。
(答案例2)
宿題代行業をする人は偽りの宿題を本物たらしめるためにどんなことだってする。意図的に詩[×文章(proseの誤訳)]を子供っぽく書いたり[×し(keepの誤訳・結果のto不定詞の誤訳)]、日本ではよくある読書感想文[×読書感想文ーこれは日本ではよくある宿題なのだがー(assignmentの訳抜け)]をまるで10才の子供が書いたかのように見せる人もいる一方、彼らの[×自分たちの(theirの誤訳)]子供が過去に描いた作品を掘り出し、利用しようとする人もいると公式[×職員(officialの誤訳, 公式の人, くらいであればセーフ)]は説明した。
(答案例3)
宿題代行業者は彼らのための宿題の信憑性[△やや不自然な日本語だが減点なし]を完璧にするためにちょうどいい長さにする。[×どんなことだってする(go to great lengthsの誤訳)]日本で人気な宿題である読書感想文を作るのにまるで10才に人によって書かれたかのように見せるためわざと子供っぽく書く人もいる。[×××keep OC+to make OCの構造が取れていない]一方過去に自分の子供に書かせた美術作品を掘り出し、それから利益を得ようとする人もいると公式[×職員(officialの誤訳, 公式の人, くらいであればセーフ)]は言った。
まとめ
繰り返しになりますが、本記事を通して伝えたかったことを最後にもう一度書いておきます。
英文解釈の基本原則
1°)原則として英文には文の骨格をなす主語と動詞が存在している。
2°)主語になり得るのは名詞のみであり、前置詞+名詞のカタマリで名詞が前置詞の目的語になっている場合、その名詞は主語には成り得ない。(前置詞+名詞≠主語)
3°)that, whenなどの従属接続詞が存在する場合、そこからあたかも1つの文章が埋め込まれたかのような構造になり、その文章が終わると元の文に戻る。
4°)and, but, so, orなどの等位接続詞は前後が原則として文法的に同じ形のものを結びつける。例えば右辺が名詞ならば左辺も名詞であり、右辺がSVを含む節であれば左辺もSVを含む節である。
5°)他動詞には原則として目的語が存在する。
6°)関係代名詞節において先行詞を受ける関係代名詞が後ろに続く節の主語になっている場合原則として関係代名詞を省略することはできない。
7°)名詞+名詞+動詞が続いた場合、名詞と名詞の間に関係代名詞が省略されている可能性を検討する。
→関係代名詞節の中で先行詞を受ける関係代名詞が主語ではなく目的語になっている場合です。特に2つ目の名詞が本問のようにtheyという代名詞だったり、動詞を元の文の動詞とした時に文構造に矛盾が生じる場合は特にその可能性が極めて高いです。
英文へのマーキング
1°)前置詞+名詞のカタマリは()で囲む
→主語に成り得ない箇所なので文の骨格である主語+動詞を明確化するために()で囲んで一度バイバイしておきます。また、それ以外にもどこに修飾しているかが明確になり、文構造が把握しやすくなります。
2°)従属接続詞+SVのカタマリや関係代名詞から始まる修飾部分は[]で囲む
→先ほども述べたように従属接続詞を起点として新たに文章が始まってしまうので[]で囲んで切れ目を明確にしておきます。また、関係代名詞の場合も切れ目を明確にするために囲んでおきます。
3°)等位接続詞で結ばれる語句や熟語は〇で囲んで繋げておく
→等位接続詞は先ほど文法的に同じ範疇のものを結びつけると言いましたが、日本語に訳す際にこの点が意識できていないと突拍子もない訳になってしまうので、「一体どことどこが対等なのか」を明確にしておきましょう。
→熟語に関しては例えば動詞+前置詞の場合でも複雑な修飾語句や挿入句などによって動詞と前置詞が離れて位置しており、カタマリとして一見認識しづらいことがしばしばあります。その際も〇で囲んで繋がりを意識しておくと、構造把握にも役立ちますし、和訳の際にも効果的です。
あとがき
最後までご覧いただきありがとうございました!この記事がみなさんの英文解釈の学習の一助となれば幸いです。以下ではおすすめの英文解釈の参考書と、当サイトの英語のおすすめ記事を紹介しておきます!合わせてご覧になってください!
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英作文編はこちらの記事からご覧になることができます。
毎年好評を頂いている京大英語の解説です。以下の記事では2021年の最新の問題を解説しています。ぜひこちらもご覧になってください。
参考文献
・The Japan Times:Bad news for students: Completed homework assignments are no longer for sale | The Japan Times
・北村一真 著「英文解体新書」研究社 2019年第3刷発行
筆者の紹介
英語が嫌いという理由で朝のホームルームに英会話がある西京中学ではなく、洛北高校附属中学校を目指し、洛北高校附属中学校(中高一貫)に補欠合格。模試は高1から全てA判定を出し、高2では駿台全国模試の英語・数学の偏差値80越え。高3では夏の京大模試で経済学部理系で4回連続1位を取り、秋は全て理学部で冊子掲載。英語に関しては駿台で竹岡先生の高3エクストラ英語αで学び、京大模試で全国15位以内を7回取る安定した成績を収めた。
(以下、全国15位以内の模試のみ成績を添付)
京大模試
第1回京大入試プレ 117/150,11位 (74.9)
第1回京大オープン 120/150,6位 (76.5)
第1回京大実戦 113/150,13位 (77.0)
第2回京大オープン 120/150,10位 (76.2)
第2回京大入試プレ 114/150,6位 (70.8)
第4回Z会京大テストゼミ 124/150,1位 (67.5)
第3回京大本番レベル模試 136/150,1位 (70.4)
その他模試
東工大入試実戦模試 113/150,5位 (82.5)
河合塾京大本番プレテスト 121/150 など
※素点と全国順位を記載,()内は偏差値