
英文でよく見にするコロンですが、その役割は曖昧にされがちです。もちろん入試学習参考書の中にはその役割を明確化しているものもありますが、その他多くがなんとなくの意味の説明で終わっています。
そこで本記事では、コロンの用法を深堀し、使用法をできる限り全て網羅していきます。23の例文を見ながらコロンの意味を理解していきましょう!
目次
コロンのコアイメージは具体化
コロンには前文で述べたことについて、その例や内容、説明などを具体的に表す役割があります。「コロン=つまり」と捉えておけばよい場合が比較的多いですが、それだけにとどまりません。コロンの役割は主に以下の5つに分類することができます。
1°)コロン以前が完全文の場合
1. 列挙
2. 補足説明、強調
3. 引用
4. not only A but also Bなどの相関構文で前半と後半を分離する
2°)コロン以前が不完全文の場合
ではそれぞれについて例文をいくつか確認していきましょう!
列挙
コロン以下で前述の内容に該当するものをリスト的に列挙する用法があります。訳出する際には「つまり」で大丈夫でしょう。
また、訳出する際には「何を具体化に列挙しているのか」ということに注意しましょう。
(例1)I like Japanese foods: sushi, tempura, and sukiyaki.
「私は和食が好きです。寿司や天ぷら、すき焼きが好きです。(=好きなものは寿司や天ぷら、すき焼きです。)」
→和食の中でも具体的に何が好きかをコロン以下で列挙しています。
(例2)We need three kinds of support: economic, political and moral.
「私たちには3種類の支援が必要だ。つまり、経済的、政治的、道徳的支援である。」
→3種類の支援の中身をコロン以下で列挙しています。
(例3)Examples of serendipity* in science are said to abound: Fleming's discovery of penicillin, Becquerel's discovery of radioactivity, the discovery of tranquilizers, and on and on.(Lewis Wolper: THE UNNATURAL NATURE OF SCIENCE 京大OP 2006 8月 [1])
* serendipity:「偶然発見すること」
「科学における偶然の発見の例はたくさんあると言われている。フレミングによるペニシリンの発見、ベクレルによる放射能の発見、精神安定剤の発見などなどである。」
→コロン以下でExamples of serendipity in scienceの具体例を列挙しています。
【参考】
【完全版】of=「~の」としていませんか? 名詞構文の解釈3パターン -17の例文で徹底解説- | Sacramy
(例4)Narrative is everywhere: news, gossip, dreams, fantasies, reports, confessions, and so on and so forth.(京大2021 [1] 本文)
「物語はあらゆるところにある。報道やうわさ話、夢、空想、報告、告白、その他もろもろがある。」
→コロン以下でNarrative「物語」の具体例を列挙しています。
→and so on and so forthは「その他もろもろ」の意味です。
【参考】
【全国模試1位に学ぶ英語】令和3年度 京大英語2021 大問1解説 | Sacramy
(例5)We can list four maxims, or basic rules, that follow from the cooperative principle: quantity, quality, relation, and manner.(京大1987 [1] 本文)
「協力の原則に付随する4つの原理、つまり基本原則をあげることができる。それらは量、質、関係、態度である。」
→コロン以下でfour maxims, or basic rulesの具体例を4つ列挙しています。
→four maxims, or basic rulesのorは換言のorで「つまり」の意味です。
→that follow from the cooperative principleはfour maxims, or basic rulesにかかる関係代名詞節です。
(例6)Where, previously, stage drama, live theatre, was the only method for the communication of dramatic performance, today dramatic performance can reach its audiences in a multitude of ways: through the cinema, television, videotape, radio, cassette recordings.(京大1992 [2] 本文)
「以前は舞台演劇、つまり生の舞台は劇の上演を伝えるための唯一の方法であったのに対し、今日では、劇の上演は多数の方法で観客に届けられる。その方法とは、映画、テレビ、ビデオ、ラジオ、カセットによる録音を通してである。」
→文頭のWhereは過去と現在の対比を表しています。また、文末のコロンは具体例を列挙する役割のコロンです。
【参考】
条件や対比を表すこともある! 関係副詞whereの解釈4パターン | Sacramy
(例8)We have all heard of experts who fail basic tests of sensory selection in the own field : wine snobs who cannot tell red from white wine, or art critics who see deep meaning in random lines drawn by a computer.(京大2010 [1] 本文)
「私たちは皆、自分の専門分野での感覚に関する選択の基本的なテストに失敗する専門家たちのことを聞いたことがある。例えば、赤ワインと白ワインを区別できないワイン通やコンピュータによってランダムに描かれた線の中に深い意味を見出す美術評論家である。」
→コロン以下で基本的なテストに失敗する専門家の具体的が列挙されています。
補足説明、強調
コロンと言えば一番この用法がなじみ深いのではないでしょうか。補足説明とは、前述の内容をコロン以下によって詳述する用法です。補足説明にも主に2パターンあり、
1. 前述の内容を単に具体化する
2. 前述の内容の理由を具体的に説明する
役割があります。こちらも訳出する際は「つまり」「というのも」くらいで大丈夫でしょう。
(例1)Japan is a forest country: 67% of the land is covered with forests.
「日本は森林の国です。国土の67パーセントが森林で覆われています。」
→コロン以前の内容がコロン以後の内容によって具体的に説明されています。
(例2)The rules were clear: they were not allowed to speak to the committee directly.(CGEL)
「規則ははっきりしていた。つまり、彼らは委員会に直接話すことが許可されていなかったのだ。」
→コロン以後の内容がコロン以前で述べられたThe rulesの内容を具体化しています。
(例3)I have very little time to go to the gym: my new job starts in two weeks.
「私はジムに行く時間がほとんどない。というのも2週間後には新しい仕事が始まるからだ。」
→ジムに行く時間がほとんどない理由がコロン以後で述べられています。このコロンはbecauseと置換してもよいですね。
(例4)We decided not to go on holiday: we had too little money.
「休暇は取らないことに決めたんだ。全然お金がなくてね。」
→休暇を取らなかった理由がコロン以後で述べられています。
また、補足説明の一種として前述の内容を満たす要素を指定するような強調の用法もあります。
(例5)Only one student from the school has been nominated for the piano award: me.
「その学校のたった1人の生徒だけがピアノ賞に選ばれました。それは私です。」
→前述のOnly one studentがまさにmeであることを述べています。
(例6)Just one person is making trouble: you.
「一人だけ厄介なやつがいるんだよ。お前だよ。」
→前述のJust one personがまさにyouであることを述べています。
(例7)I don't think, in the last analysis, that the novelist and the poet are trying to do different things: they are both using language to say something about life in emotional rather than analytic terms.(京大1988 [2] 下線部)
「私は結局のところ、小説家と詩人が別のことをしようとしているとは思わない。つまり、両者ともに、分析的というよりはむしろ感情的な面から人生について何かを語ろうとして言語を用いているのだ。」
→コロン以後でコロン以前の内容を具体的に補足説明しています。
→the novelist and the poetのtheは総称のtheで堅い表現です。「学問のthe」ともしばしば呼ばれます。
(例8)Unlike simple recording equipment, human perception is brilliantly selective: you can ignore almost anything you want to, but the sound of someone speaking your name will cut through a forest of other sounds.(京大1990 [1] 本文)
「単純な録音機械とは違って、人間の知覚には素晴らしく選択的である。つまり、無視したいことはほとんど何でも無視できるが、誰かが自分の名前を口にしている音は、他の音の森を通り抜けて聞こえてくる。」
→コロン以後でコロン以前の内容を具体的に補足説明しています。
→the sound of someone speaking your nameは名詞+Vingの形でsomeoneが意味上の主語、speaking your nameが動名詞になっています。
【参考】
名詞+Vingの解釈2パターン -動名詞の意味上の主語を見落とすな!- | Sacramy
引用
引用のコロンにはその名の通り、誰かの発言や文章を引用する役割があります。コロン以前が完全文の場合と不完全文の場合がありますが、ここでは前者の場合を扱います。後者の場合は5. 発話内容や補部の導入として扱っています。
(例1) Pliny the Younger (whose uncle, Pliny the Elder, was nearby and was among those killed) vividly described the eruption: it looked like an Italian umbrella pine―a tall "trunk" spreading out at the top to a dense cloud shot with flashes of lightning.(京大1995 [2] 本文)
「小プリニウスは鮮烈に噴火を描写した(小プリニウスの叔父、大プリニウスは傍におり、死者の1人となった)。噴煙はイタリアカサマツのように見えた。背の高い「幹」はその先端で稲妻の閃光を放つ厚い雲に向かって広がっていた。」
→小プリニウスが噴火を描写した内容がコロン以後で引用されています。
(例2)As anyone who has ever been in a verbal disagreement can confirm, people tend to give elaborate justifications for their decisions, which we have every reason to believe are nothing more than rationalizations after the event. To prove such people wrong, though, is an entirely different matter: who are you to say what my reasons are ?(京大2010 [1] 下線部)
「言葉の食い違いを経験したことがある人なら誰でも分かることだが、人々は自分の判断に対して手の込んだ正当化をする傾向がある。そして、私たちにはその手の込んだ正当化が事後の合理化でしかないと信じる十分な理由がある。しかし、そのような人々が間違っていると示すことは全く別問題だ。『私の論拠が何だとか言うなんて貴様何様や!』と言われるだろうから。」
→冒頭のasは関係代名詞のasで元の文はAnyone who… can confirm people tend to…となります。
→which以下は連鎖関係代名詞節であり、元の文はwe have every reason to believe elaborate justifications are nothing more…となります。またeveryはここでは「十分な」の意味です。
→コロン以下で、自分たちが間違っていると示そうとしている人に対してsuch peopleが言うセリフを引用しています。描出話法に近いですね。
相関構文で用いるコロン
コロンはカンマやセミコロンと同様に、最初の節がnot [only / simply / merely / just]を含む場合、前後の節を分離することができます。
(例1)The Romans built not only the Fort of Othona: they had a pharos, or lighthouse, on Mersea.(CGEL)
「ローマ人が建設したのはオソナの塔だけではなかった。彼らはメルシアにファロス、つまり灯台も建設したのだ。」
(例2)The infant's world is also full of aggression. The reason for this is not merely that parental figures are frustrating or angry : it is also a reflection of the child's urgent drive towards self-assertion and independence.(Anthony Storr: Reaching out for the world 京大実戦1997 [1] 本文)
「子供たちの世界はまた、攻撃性で満ちてもいる。この理由は単に両親が自分の邪魔をしたり、怒りっぽいということだけではない。それは、自己主張と独立へと向かう子供の差し迫った衝動を反映したものでもある。」
発話内容や補部の導入
本来、直接話法で発話内容を導入する前にカンマを付けるべき部分ですが、発話内容が比較的長い場合にはカンマの代わりにコロンも使用可能です。コロン以下が不完全文になることに注意しましょう。(これも3. 引用のコロンとみなしても良いかもしれません。)
(例1)He added: ‘Some missiles missed their targets, resulting in collateral damage.’(CGEL)
「『数発のミサイルが標的から外れ、その結果副次的被害が生じた。』と彼は付け加えた。」
→彼が実際に発言した内容をコロンで導入しています。
また、発話内容以外に、本来動詞の後に文法上必要である部分(補部、つまり補語や目的語など)を導入する際にも使用します。
(例2)The seminar will cover: superannuation, financial planning, personal insurance, home and investment loans.(CGEL)
「セミナーでは以下のようなものをカバーする。老齢年金、資産運用、個人保険、住宅及び投資ローンである。」
→coverの目的語をコロンが導入しています。
(例3)One major point of Aristotle's theory is said to be: while history expresses the particular, concentrating on specific details as they happened, poetry can illuminate the universal, not allowing the accidental to intervene. Hence the justification.(京大2021 [1] 下線部)
「アリストテレスの理論の重要な点の1つは次のようなことであると言われている:歴史は発生した特定の細かいことに注目しながら特定のものを伝えるのに対し、詩は突発的なことが介在するのを許さず、普遍的なことを明るみに出す。それゆえ、詩は正当化されるのだ。」
→is said to beに続くbe動詞の補語をコロンで導入しています。
→whileが対比を表し、historyとpoetryが対比されています。
→the+[形容詞]で「(形容詞)なもの、こと」の意味です。(the particularとthe universalおよびthe accidentalの部分)
→更には文末分詞構文が2箇所用いられています。(, concentratingと, not allowingの部分)
→asは「名詞限定」のasであり京都大学でも過去に何度か出題されていた気がします。よく、as we know itのような形で見るasと同じであり、中身の代名詞部分は訳出しないことに注意したいです。
→interveneはinter「中に」+vene(←venio)「来る」→「介在する」という意味です。後ろの部分はeventと同語源で単語の意味を知ってい場合でも語源から推測できます。また、対比構造が読めていれば「邪魔者として入ってくる」ようなニュアンスが読み取れると思います。
→Hence the justificationの部分は難しいです。意味するところをしっかりと訳出する必要があります。Henceをロングマン英英辞典で引いてみると分かるのですが、SV. Hence+[名詞].のとき、直訳すると「SV。(そのことから)[名詞]が生じる」となります。
この部分は本文を踏まえて訳出するべき部分です。以下の記事で更に詳しく解説していますので、是非ご覧ください。
【参考】
【全国模試1位に学ぶ英語】令和3年度 京大英語2021 大問1解説 | Sacramy
あとがき
最後までご覧いただきありがとうございました。当サイトでは英語・数学を中心に大学受験+αの情報を発信しています。以下のおすすめ記事もぜひ合わせてご覧になってください。それでは!
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