
本記事では、英文を読んでいてよく目にする「名詞+Ving」の解釈について2パターン紹介していきます。結論として、①名詞+現在分詞 ②動名詞の意味上の主語+動名詞の2パターンの可能性があります。このうち試験でよく問題になるのが②の解釈のほうで、よく誤訳が見られるそうです。お急ぎの方は②の解釈の説明だけでも見ていってください。意外と盲点を突かれます。
最後に確認用の入試問題の例文もついているので合わせてご利用ください!では本編に入っていきましょう!
※本記事の例文の出典は全てロイヤル英文法です。
目次
名詞+現在分詞
①形容詞的に用いる分詞の中でも、分詞が目的語や補語、修飾語を伴う場合は名詞の後ろから修飾します。(後置修飾)
(例)The man standing over there is the owner of the store.
「あそこに立っている人がその店の持ち主だ。」
→standing over thereはThe manを修飾する現在分詞です。
②知覚、使役動詞の場合にも分詞を用いる場合があります。
(例)I can see birds hopping among the branches of a tree.
「鳥たちが木の枝の間でぴょんぴょん跳ねているのが見える。」
→SVO+現在分詞の形が用いられています。
動名詞の意味上の主語+動名詞
そもそも動名詞の意味上の主語を表すには①所有格 ②目的格の2つの方法がありました。
①所有格については、2単語並んでいるうちの1単語目が名詞になることはなく、1.の解釈は適応されません。ですので、本記事では言及しません。
②目的格については1.とぱっと見で見分けがつかないので、本記事で言及する部分になります。
(例1)I can’t understand my brother being in love with Betty.
「私には兄がベティを愛しているわけがわからない。」
→my brother being in love with Bettyは「(私の)兄がベティを愛していること」の動名詞です。
→この部分を名詞+現在分詞と解釈して「ベティを愛している(私の)兄」とするのは間違いです。この英文において私が理解できない対象は「兄」ではなく、「兄がベティを愛していること」だからです。
(例2)He insisted on young and old being warmly welcomed.
「彼は老いも若きも温かく迎えられるべきだと主張した。」
→young and old being warmly welcomedは「老いも若きも温かく迎えられること」の動名詞です。
→この部分も名詞+現在分詞と解釈して「温かく迎えられる老いも若き」とするのは間違いです。主張する対象は明らかにyoung and old「老いと若き」ではありません。
実際の入試問題で確認しよう!
1. The Origin of Species made an epoch. It proposed a hypothesis surpassing all its predecessors in its agreement with facts, and in its wide reach.(京大2021[2] 本文)
【文脈】
ダーウィンの「種の起源」が大きな影響力をもったということをその背後にある原因も含めて考察した英文からです。出典は物議を醸した2021京大英語大問2です。
【訳例】
「種の起源」は新時代を切り開いた。それ(=「種の起源」)は事実と合致しており、幅広い影響力をもったという点でそれより以前の全ての仮説をしのぐ仮説を提唱した。
→make an epochは「新時代を切り開く」の意味です。抽象的な内容なのでこれ以降の文で対応する具体的な内容が続くだろうな、と予測しながら英文を読み進めていきましょう。何度も言いますが、このように英文では「漠然→具体」の流れがよく展開されます。内容が同一であることも多いので、意味が分からない単語の推測にも役立ちます。必ず抑えておきましょう。
→surpassing以下はa hypothesisを修飾する現在分詞です。
→predecessorは「前任者、前のもの」の意味です。pre「前に」+de「離れて」+cede「行く」が語源で、precede(pre「前に」+cede「行く」→「先行する」)と同じ語源です。
→surpassは「上回る / しのぐ」の意味です。sur「上に」+pass「通る」→「上を越えていく」が語源です。surはsurprise, surmountなどと同じ語源でスペル的にもよく見ますね。
→ここでは主語がa hypothesis「仮説」であり、仮説がすべてのpredecessorをしのぐ、という話なのでpredecessorが人であるというよりはそれより以前の仮説であると読んで上のような訳にしています。仮説が人をしのぐ(仮説vs人)というよりは仮説が仮説をしのぐ(仮説vs仮説)としたほうが自然でしょう。
→inは「~という点において」くらいの意味でどのような点でsurpassしているのかを説明しています。
→its agreement with factsはit agrees with facts「事実と一致する」の名詞構文です。もとの文章を考えて訳出したほうが自然な日本語になります。
→its wide reachも同様でit widely reaches、直訳すると「広く広がる」の名詞構文です。この部分は名詞構文であることを意識したうえで少し意訳気味にしてから訳出しました。
【単語】
・make an epoch:「新時代を切り開く」
・propose:「提唱する」
・surpass:「超える / しのぐ」
【参考記事】
①【全国模試1位に学ぶ英語】令和3年度 京大英語2021 大問2解説 | Sacramy:この英文の入試問題の全英文解釈および解答例を書いています。
②【完全版】of=「~の」としていませんか? 名詞構文の解釈3パターン -17の例文で徹底解説- | Sacramy:先ほど登場した名詞構文について詳しく解説しています。
2. The building is at least a century old, and nowadays each of those sandstone steps is looking a little worn. This wear is the result of a century of people walking up and down from their flats.(東大2014 1A)
【文脈】
地球が疲弊していることを述べた英文からです。地球の疲弊の例えとして、建物がすり減っているという具体例が述べられています。冒頭のThe buildingはエディンバラにある築100年くらいの古いアパートを指しています。
【訳例】
この建物は少なくとも築100年で、今日ではこれらの砂岩の階段の1つ1つが少しすり減ってきているように見える。この摩耗は100年間、人々が自分たちの部屋から歩いて上り下りした結果である。
→第1文目のis looking a little wornの部分は「~のように見える」という状態動詞のlookが現在進行形になっています。状態動詞も現在進行形にすることができますが、その場合は「~しつつある」などの訳を当てることがあります。
→第2文目のpeople walking up and down from their flatsは「人々が自分たちの部屋から歩いて上り下りすること」の動名詞です。名詞+Vingで解釈してしまうと、「人々の結果(?)」となって意味不明です。
【単語】
・sandstone step:砂岩の階段
・flat:アパートの一室(同一階の教室を一家族が住めるように設備した住居。)※イギリス英語
3. Some attempts have been made to frame an evolutionary logic for birth-order effects, in terms of younger siblings having to differentiate themselves in order to compete for resources with their older siblings.(Daniel Nettle: Personality京大オープン2009 8月[2])
【文脈】
子供の誕生順と人格形成には関係がない、ということを述べた英文からです。本問は家庭内の相互作用について述べられた箇所からです。筆者はたしかに誕生順は家庭内の相互作用には影響するかもしれないけれども、生涯に渡って持続する人格には影響しないよね、と主張しています。
【訳例】
必要なものを求めて兄や姉と争うために、弟や妹が他との違いを示さなければいけないという観点から、誕生順が及ぼす影響についての進化上の理論の枠組みをつくるためのいくつかの試みがなされてきた。
→make some attempts to Vが受動態として用いられています。to不定詞以下はattemptsを修飾していますが、主語の直後に置くと長すぎるため後置されています。
→younger siblingsは兄や姉、older siblingsは弟や妹を指しています。
→younger siblings having to differentiate themselvesは動名詞の意味上の主語+動名詞の構造です。「弟や妹が他人との違いを示さなければいけないこと」の意味です。
→in order to以下はdifferentiateにかかる副詞句です。compete with A for Bは「Bを求めてAと争う」の意味です。
【単語】
・frame:「枠にはめる / 構築する」
・sibling:「兄弟姉妹」
・differentiate oneself:「違いを示す」
4. A well-ordered cosmos, such as the one that the Greeks believed themselves to live in, would see the heavens moving in regular circles.(京大2003後期[2] 下線部)
【文脈】
ギリシャ人の宇宙観について述べた英文からです。ギリシャ人の宇宙観には様々なものがあり、中には現代から見るととんでもないようなものもたくさんありました。その中でも共通していた点としては天体の動きは一定の円運動である、という点でした。その共通点を述べた部分に続く箇所となっています。
【訳例】
自分たちが暮らしている場所であるとギリシャ人が信じていたような秩序の取れた宇宙では、空は一定の円を描いて動いているように見えただろう。
→カンマは挿入の合図です。カンマ内部のoneは可算名詞の代用の役割を果たしており、a cosmos「宇宙」のことを指しています。oneにかかる関係代名詞節内では、believe O to be Cの形が用いられています。直訳すると、「自分たちがそこに住んでいると信じていた宇宙」ですが、これを「自分たちが暮らしている場所であるとギリシャ人が信じていた宇宙」くらいに訳出していきたいです。前置詞+関係代名詞の訳出には注意を払いましょう。
→wouldが用いられているのは仮定法過去ではなく、単純に過去の話を話題にしているからです。(下線部直前の英文も過去形で述べられています。)
→see O Ving「OがVするのを見る」の形が用いられています。
→seeの主語が時間・場所などの無生物の場合、「その時間や場所であれば~が見られる」や「その時間や場所では~ということが起きる」などと訳出を工夫したいです。
(例)The year 2000 witnessed a rapid growth in China’s foreign trade.「2000年は中国の対外貿易が急成長した年であった。」
【単語】
・cosmos:宇宙
・heaven:空
【参考記事】
一般の人も表すことがある! oneの解釈3パターン | Sacramy:本問でも登場した可算名詞の代用のoneですが、実は他にも色々な役割があります!それらを全て解説しています!
あとがき
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