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目次
- まえがき
- 本年度の問題の総評
- パラグラフごとの要旨 -マクロな視点から読む-
- 構文解析、全文和訳 -ミクロな視点から読む-
- 第1パラグラフ
- 第2パラグラフ
- 第3パラグラフ
- 第4パラグラフ
- 第5パラグラフ
- 解答を書く
- あとがき
- 筆者の紹介
まえがき
初めまして、こんにちは。この記事では今年度の京大入試の英語の解答解説をしつつ、英語に対してどのように取り組んでいけばよいのかを説明していきたいと思います。というのも、各予備校が出している模範解答が受験生の立場から見てあまり満足できるものではないことと(特に大問2)、以前述べたように自分が受験生活で培った安定した英語力を何らかの形で発信していきたいと考えているからです。以下で自分なりの英語の文章に対するアプローチの方法などを咀嚼して伝えていきたいと思います。先に書いておきますが、自分は英語の文献を読む際、マクロとミクロという2つの視点を非常に重要視しています。
高3エクストラ英語でもお世話になった駿台英語科の竹岡広信先生と、精読を教わった駿台英語科の桜井博之先生の影響がかなり強いです。そのため、以下で行う解説は、本文通読(マクロ)においては竹岡先生の影響を強く受け、精読(構文解析、ミクロ)においては桜井先生の影響をかなり強く受けています。とはいえ、一般的に見て十分通用する解説に仕上げていきたいと思います。その点、把握よろしくお願いします。要旨解説のあと、全文の構文解析を行い、最後に解答を書きたいと思います。(京大実戦の解説と流れはだいたい同じです)
【関連記事 -2021年度の解説記事-】
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*以下、特に注意してほしいポイントは赤字にしてあります。
本年度の問題の総評
本年度の英語の試験が終わった瞬間ツイッターを見ていると、「問題傾向が変わった!」「激難化」といった声が多かったように思えます。実際、多くの京大受験生が和訳はある程度できても内容説明問題となると一気に平均点が下がる、というケースが多いです。おそらくその根本原因は、文章の言わんとすることをしっかりと理解できていないことにあると思います。内容説明問題とはいえ、所詮該当箇所を探し出して和訳し、内容や接続詞を適切に補うだけの作業です。(ここができていない受験生が極めて多い)また英作文に関しても、手紙文ということもあり、面食らった受験生も多かったと思います。このあたりはいかに基本表現を抑え、日頃から自由英作文を書いていたかが分かれ目になったかと思います。京大の過去問に限らず、様々な問題に挑戦する姿勢が大切だと思います。
この意味で、今年度の問題は本質的には難化していませんが、相対的に見て多くの受験生にとって難化したと思っています。
パラグラフごとの要旨 -マクロな視点から読む-
本文を最初に読むときはまず大雑把でいいので、文章を通じて筆者が何を言いたいかを理解しましょう。その際、本文の横に自分が読み取ったことを適宜メモすることが望ましいです。(パラグラフごとにメモするのは時代遅れだと思います。自分で文章を読み、必要に応じて適宜メモを取りましょう。)以下、口語表現を交えて簡潔にパラグラフごとの内容をまとめます。
※パラグラフの青字の部分を押すことで各パラグラフ冒頭に飛ぶことができます。
1パラ:ヒトの認識能力は進化論上優れているとされている。→ではアリはどうなのか?アリもすごい。
2パラ:神経系を利用した高度な認知能力は動物界によく見られる
(例)テッポウウオの水噴射による狩りの能力(→問1)
3パラ:ミツバチの小さい頭と認知能力のすごさ①(∵高い神経細胞密度)(→問2)
4パラ:ミツバチの認知能力のすごさ②(∵柔軟な情報処理)
5パラ:哺乳類もハチも認識能力の点で似ている。しかし単一の進化経路を経たわけではない。→なぜ似ているのかわからない。(→問3)
問題を解く際にはこれくらいのことが頭に入っていれば十分でしょう。試験後にこの文章を味わってみると、筆者は何か自分たちが動物界で唯一絶対だと考えがちな人間へ、他の動物も実は凄い能力を持っているのだと、警鐘を鳴らしているようにも思えます。(このような行間を読む作業は、どうやら京大受験生には求められていないみたいなので、解答範囲外の考察はこのあたりで止めておきます。(英語というよりはむしろ現代文チックになるので…)「自分はこんな解釈をしてみたよ!」という声があれば、ぜひ教えてください。)
構文解析、全文和訳 -ミクロな視点から読む-
試験本番では、本文を大雑把に理解した後は内容説明問題や和訳に必要な部分を特定し、その部分の意味を解析する作業が必要となります。(マクロ→ミクロ)
ここでは説明の都合上、全文の和訳と解説をします。設問該当箇所を探す段階については、各設問解説で言及します。(問題を解いて答えを確認したい方は先に解答のほうを読むことを推奨します。)
第1パラグラフ
・Various doctrines of human cognitive superiority are made plausible by a comparison of human beings and the chimpanzees.
(訳)ヒトの認識が優れていることについての様々な学説が、ヒトとチンパンジーを比較することによりもっともらしくされている。
doctrineは「教義」「教説」「学説」などの意味があるが、ここでは学問の話をしているので「学説」と訳すのが一般的。doctrineという単語を見たときに、「考え」を意味するんだな、と感じれば十分。(単語帳に載っている意味を丸暗記してはいけない、むしろ意味を感じるべきである)
human cognitive superiorityは、名詞+(修飾された名詞)の形で、tomato source(トマト(の)ソース)(名詞+名詞の形)と似た構造。直訳すると、「人間の認識的優越性」だが、やや日本語として不自然なので、「ヒトの認識が優れていること」と訳した。(直訳したからといって、模試や入試で減点されることはないが、採点官に対する心象は上がる)
humanには形容詞の用法で「人間の」の意味がある。形容詞とも解釈できる。
plausibleは「もっともらしい」「まことしやかな」の意味。
applause(ap/plause)「拍手喝采」のplause+ible(able)から成り立っている。(ableがibleになる例は、resistible「抵抗できる」を考えると良い)
以上をまとめると、原義は「拍手できる」の意味。本当のことに対して、拍手できる、といった発想。
a comparison of human beings and the chimpanzeesはcompare A and B「AとBを比較する」の名詞構文の形。(今回のofは目的格を表す)こちらも日本語の自然さを求め、「ヒトとチンパンジーの比較」ではなく、「ヒトとチンパンジーを比較すること」と訳した。また、the chimpanzeesのtheは総称のtheである。
・For questions of evolutionary cognition, this focus is one-sided.
(訳)進化論的な認識の問題からすると、この注目は一方に偏っている(不合理だ)。
forは「~にとって」を表す前置詞。
focusは「集中」ではなく、「注目」の意味。安易に英語日本語を1対1で対応させて知っている訳をむやみにあてはめないこと。
this focusがone-sidedであるということは、this focusが全文の内容を指すことを考えると、「ヒトはチンパンジーよりも認識能力が優れている」と簡潔にまとめられるだろう。
・Consider the evolution of cooperation in social insects, such as the Matabele ant.
(訳)マタベレアリのような社会性昆虫たちにおける協力が進化してきたことを考えてみよう。
the evolution of はevolveの名詞構文。(今回のofは主格を表す)自然な日本語になるように訳した。
(事後的な考察になりますが、おそらく筆者はここで、人間一辺倒な認識能力における見解に警鐘を鳴らしているのだと推察されます。)
・After a termite attack, these ants provide medical services.
(訳)シロアリに攻撃された後、これらのアリ(=マタベレアリ)は医学的に役立つことを行う。
termiteの意味が分からなくとも、何か天敵に攻撃された場合、対処するという内容が読み取れれば十分。(未知の単語にいちいち固執せず、怯えないこと)
この一文は、漠然とした内容を表し、続く文で具体化されている。
(このように英語では、漠然→具体という文章展開が多くみられる)
serviceは多義語であるが、全部に共通するイメージは「役に立つこと」。ここでは曖昧に、「役に立つこと」と訳し、冒険せずに減点を回避している。(意味の分からない単語に遭遇した時、むやみやたらに訳さず、単語のイメージで訳す姿勢が大切)
・Having called for help by means of a chemical signal, injured ants are brought back to the nest.
(訳)化学的な信号を用いて助けを求めてから、怪我をしたアリたちは巣に連れ戻される。
Having~signalまでが分詞構文となっており、意味上の主語はinjured ants。時制が一つ前なのでhavingから始まっている。この分詞構文はafterの意味で訳した。
*文頭分詞構文の主な用法5パターン
①理由
(例)Not knowing what to do, I asked you for help.
「どうしたらよいか分からなかったので、僕は君に助けを求めた。」
→否定の分詞構文は理由であることが多い。
②時
例)Walking around the city, I met him.
「その街をぶらぶら歩いているとき、私は彼に会った。」
→whenと置き換えが可能である。
③付帯状況
(例)Looking back many times, he went away.
「何度も振り返りながら、彼は去っていった。」
④完了分詞構文
(例)Having finished the work, I went to drink with her.
「仕事が終わったので/仕事が終わってから、私は彼女と飲みに行った。」
→分詞の表す時が述語動詞よりも前の時の場合、having+(過去分詞)の形になる。
⑤独立分詞構文
(例)Night coming on, the children went home.
「夜になったので、子供たちは家に帰った。」
→分詞の意味上の主語が主節の主語と異なる場合、分詞の前に主語が補われる。
by means ofは「~を利用して」の意味の熟語。meansは「手段」の意味。
・Their increased chance of recovery benefits the entire colony.
(訳)彼らが回復する可能性が高まることにより、巣全体に利益がもたらされる。
この文は無生物主語の文章。日本語として自然になるように、主体客体の焦点を入れ替えて訳した。
Their increased chance of recoveryの部分も「増加した彼らの回復の可能性」と訳すとやや不自然。increasedをやや動詞的に訳出することがポイント。
the entire Aは「A全体」と訳すのが原則。
colonyはそこらの単語帳には「植民地」の意味しか載っていないようだが、ここも単語のイメージで「まとまった集団、共同体」から、「巣」と訳した。
・Red forest ants have the ability to perform simple arithmetic operations and to convey the results to other ants.
(訳)アカヤマアリには単純な算数の作業を実行し、その結果を他のアリに伝える能力がある。
the ability to doで「~する能力」の意味。andはperformとconveyを繋いでいる。andやorなどの等位接続詞が何と何を繋いでるかが不明瞭な場合もる。日頃から、繋がりを意識するべきである。
第2パラグラフ
・When it comes to adaptations in animals that require sophisticated neural control, evolutions offer other spectacular examples.
(訳)高度な神経の制御を必要とする動物における適応ということになると、進化は目を見張るような他の例を提供してくれる。
When it comes to Aは「Aということになると」の意味。英作文でも頻繁に用いる基本表現なので暗記すること。
spectacularはspect-「見る」から意味が来ている。(inspect(in/spect)「検査する」を考えると分かりやすい)
・The banded archerfish is able to spit a stream of water at its prey, compensating for refraction at the boundary between air and water.
(訳)テッポウウオは空気と水の間の境界における屈折を補正しながら、自分の獲物に水の流れを噴射することができる。
主語+動詞の後ろに(ある主語が行う動作の中に)、主語と同じ代名詞が含まれている場合、「自分の」と訳すのがふつう。「その」とか「それの」とか訳しても意味不明。
compensating以下は文末分詞構文であり、意味上の主語は、コンマ前の最後の文の動詞の主語に一致することがほとんどであり、本文でもThe banded archerfishである。連続する動作よりは、ここでは付帯状況で訳す方が、文の流れとして自然。
refractionは「屈折」の意味で、この単語を知らない受験生が多い。compensateが「相殺する」の意味であることを知っていれば、多少は推測できたはずである。(しかしこの単語ばかりは、本入試でおそらく一番難しいと思われる)
boundaryは「境界」の意味。
*文末分詞構文の主な用法3パターン(SV~,doing…)
①「Sは~し、そして…する。」(連続)
②「Sは…しながら~する」(付帯状況)
③「Sは~し、それが…する」
→①や②とは違い、分詞構文の主語と主節の主語が一致しない場合には、関係代名詞のwhichを補って読む。
【注意】
1°)分詞構文から訳す可能性がある場合は以下の2つ。
①人物描写
(例)Tom was talking with Nancy with his arms folded.
「トムは腕を組んでナンシーと話していた。」
②「~を考えて」の類
(例)SV,thinking / hoping / believing / considering that~
2°)分詞構文がどこに修飾するかには注意が必要。
・It can also track the distance of its prey, so that the jet develops its greatest force just before impact.
(訳)また、テッポウウオは自分の獲物との距離を追うこともでき、そうしてその噴射水が獲物に命中するちょうど直前に最大の力をもつ。
alsoは「~も~する」「~はまた、~もする」と訳しておくと安全。
so thatは「~するように~」(様態)、特に,so thatの場合は「~、その結果~」(結果)で訳すのがよい。
・Laboratory experiments show that the banded archerfish spits on target even when the trajectory of its prey varies.
(訳)実験室の実験によって、自分の獲物の軌道が変化する場合でさえ、テッポウウオは標的に水を噴射するということが示されている。
無生物主語の構文であるのでthat節以下を主語のように訳出した。(主語・述語の切り替え)
that節の中にeven when「~する時でさえ」から始まる節がある。that節内部のSV節を修飾している。
trajectory「軌道」は、この単語を知らない受験生が多いが、語の成り立ちよりも、文意から推測するべき単語である。
prey「獲物」、vary「変化する」とあることから、獲物が動物であることを考えると、獲物は動くことが常識として分かる。すると、trajectoryが何か「動き」をあらわす単語であることは容易に推測される。(「動き」に近い意味に訳すことができれば十分)
*未知語を推測する際には、①文意から推測 ②対比・言い換えから推測 ③単語の成り立ちから推測 の3つの姿勢が大切である。
・Spit hunting is a technique that requires the same timing used in throwing, an activity otherwise regarded as unique in the animal kingdom.
(訳)水噴射は投てきに用いられるのと同じタイミングを必要とする技術である。そして、投てきはもしそうでなければ動物界で(人間に)特有だとみなされる。
used in throwingが過去分詞としてtimingを修飾している。
an activtyはthrowingと同格である。このように、突然、コンマ+名詞の形が出てきて文法が崩壊しているな、と思ったら同格の可能性を強く疑うべきである。(京大の過去問でもこの事例は極めて多くみられる)
A,B(同格のコンマ)と並んでいるとき、「BであるA」と訳すのはあまりよろしくない。「A。そしてB」と文章を一度切って訳すとわかりやすい。(文章を一度切って訳す発想は他の場合にも適用できるので常に頭の中に入れておくこと)
regard A as B「AをBだとみなす」の受動態が用いられている。
otherwiseはここでは「もしそうでなければ(=もし水噴射は投てきに用いられるのと同じタイミングを必要とする技術でなければ)」の意味で解釈した。投てきは人間に特有の行為である。
なぜわざわざ筆者は投擲(ものを投げる行為)に対してこのような補足を加えたのでしょうか? そもそもこの英文の第1パラグラフでは筆者が「人間の認知能力はすごいよね」みたいな誤った言説が流布していることに言及し、間接的にそのことに対して警鐘を鳴らしています。そして、投擲を上手くできるのはヒトのみだという声もあります。ここで筆者はテッポウウオの水噴射による狩りも実は投擲に分類され、そんなことはないんだよ、つまりヒト以外にも投擲を上手くできる生物はいるんだよ、だから「人間だけがすごい!」みたいな見方はやめようね、と言いたげです。(この部分はあくまでも私的見解です。 2021 9/9追記)
*otherwiseは3種類の解釈を暗記するべきである。
①「もしそうでなければ」-主に仮定法とともに用いる。
(例)I`m very tired. Otherwise, I'd go with you.
「僕は今とても疲れている。もしそうでなければ一緒に行くのだけど。」
→今とても疲れているという現実を受けて、疲れていないという状況を仮定している。
(例)The flow of water must be arrested, or otherwise the land will be flooded.
「水の流れを止めなければならない。さもないと洪水になるだろう。」
→or elseと同じ意味で使用されている。
②「その他の点では」
(例)This room is a bit small. Otherwise, it's very nice.
「この部屋は少し狭い。その他の点ではとてもよい。」
→in other waysと同義であると考えればよい。
③「その他の方法で」「違った風に」
(例)He says he has quit politics, but his recent activities suggest otherwise.
「彼は政治から足を洗ったと言われているが、最近の彼の行動は逆のことを示している。」
更に詳しい内容はこちら:【完全版】otherwiseの解釈4パターン -語源と14の例文で全パターン徹底解説!- | Sacramy
・In human beings, the development of throwing has led to an enormous further development of the brain.
(訳)ヒトの場合、投射が発達したことにより、脳の途方もないさらなる発達がもたらされた。
繰り返しになるが、無生物主語なので主語・述語の視点を切り替えて訳した。
enormousは「莫大な」「途方もない」「すごい」の意味。
・And the archerfish?
(訳)ではテッポウウオはどうなのか?
前の文と同じ構造をしているため、省略が発生している。
省略を全て補うと、And in the archerfish, has the development of throwing led to an enormous further development of the brain? と書くことができる。
・The calculations required for its extraordinary hunting technique are based on the interplay of about six neurons.
(訳)その並外れた狩りの技術に必要とされる計算は、おおよそ6個の神経単位の相互作用に基づいている。
extraordinary(extra/ordinary)は「並外れた」(+イメージ)「異常な」(-イメージ)の意味。語の成り立ちから明らかなように、「通常を逸脱している」が原義。
interplay(inter/play)は「相互作用」の意味。接頭語inter「~の間に、相互」から容易に推測できる。
neuronは「ニューロン(神経単位)」の意味。文献でも頻繁に見かけるので覚えておいて損はない。
・Neural mini-networks could therefore be much more widespread in the animal kingdom than previously thought.
(訳)それゆえ、神経の小さなネットワークはかつて考えられていたよりも、動物界にはるかに広くみられる可能性がある。
much more…thanが比較級の骨組み部分。than以下に反復を避ける為、省略が発生しており、元の文に戻すと、than neural mini-networks are previously thought to be widespread in the animal kingdomとなる。訳出に関しては「かつて考えられていたよりも」とまとめると自然。クドクド訳す必要はない。
第3パラグラフ
・Research on honeybees has brought to light the cognitive capabilities of minibrains.
(訳)ミツバチについての研究により、小さな脳の認識能力が明るみに出された。
research on Aは「Aについての研究」の意味。前置詞onを用いることに注意する。
bring A to light「Aを明るみに出す」の目的語にあたるAの部分が長いために、後ろに移動している。このように、語句が長いために本来文法上にあるべき位置とは違う位置にあることもあるので気を付けること。
この1文は漠然とした内容を表し、以下の文章で具体化されている。(例の、漠然→具体の流れ)
・Honeybees have no brains in the real sense.
(訳)ミツバチは本当の意味での脳を全く持っていない。
・Their neuronal density, however, is among the highest in insects, with roughly 960 thousand neurons―far fewer than any vertebrate.
(訳)しかし、ミツバチの神経単位の密度は昆虫の中でもっとも高い部類にあり、おおよそ960000個の神経単位を持つ。そしてこれは、いかなる脊椎動物よりもかなり少ない。
amongは「~の中にある」「~の中の1つ」の意味。one of~とやや似ている。
with+名詞(所有のwithという)は,having~と代用可能で、「~を持っている」の意味。
roughlyは「大雑把に」の意味。日常会話でも、「ラフに」と日本語で使っていることからも明らか。
-(ダッシュ)以下はneuronsを具体的に説明している。
vertebrate「脊椎動物」は推測するのも困難である。ただ、30年ほど前の京大の過去問で出題されているので、知っている人もいたはず。(ここらの単語ではあまり差はつかないと思われる。
単語の意味が分からなくとも、この1文から、ミツバチとvertebrateが対比されていることを読み取るべきである。
・Even if the brain size of honeybees is normalized to their body size, their relative brain size is lower than most vertebrates.
(訳)たとえミツバチの頭の大きさがミツバチの体の大きさに標準化されたとしても、ミツバチの相対的な頭の大きさはほとんどの脊椎動物よりも小さい。
Even ifは「たとえ~でも」と訳し、やや極端な話を持ち出して、譲歩を表す。
mostは「ほとんど」の意味。mostは基本的に3種類の訳語をストックしておくこと。
*mostの訳出3パターン(ほとんどが①か②である)
①「ほとんど」
→most of+(特定された名詞)、most+(不特定の名詞)で用いる。(英作文でも頻出なので暗記しておくこと)
②「もっとも」(比較級の最上級)
→後ろに形容詞や副詞を伴う。
③「とても」
→稀に最上級では文意が通らないことがある。その場合「とても」と訳しておく。(絶対最上級とも呼ばれる用法)
以上より、常識的に考えれば昆虫は脊椎動物よりも頭が小さく、頭の機能は劣っているはずだと推測できる。しかし、ミツバチはその昆虫の中でも例外的であり、高い神経単位密度を持ち、頭の機能も実は素晴らしい、という内容が以下に続く。
→このように、京大英語では読者の期待をいい意味で裏切ってくるような文章展開が多く見られ、新たな知見を与えてくれる。
・Insect behavior should be less complex, less flexible, and less modifiable than vertebrate behavior.
(訳)昆虫の行動は脊椎動物の行動よりもあまり複雑でなく、柔軟でなく、そして修正可能ではないはずだ。
shouldは前述のような文の流れを考えると、一般的に想定される考えを表すので「はずだ」の意味で解釈するのが適切。
・But honeybees learn quickly how to extract pollen and nectar from a large number of different flowers.
(訳)しかし、ミツバチは素早く、どのように多くの数の様々な花から花粉や蜜を抽出するかを学ぶ。
extractは「抽出する」の意味。ex「外に」+tract「引く」が原義。(attract「魅了する」やcontract「収縮する」からtractのイメージが掴みとれる)
・They care for their young, organize the distribution of tasks, and, with the help of the waggle dance, they inform each other about the location and quality of distant food and water.
(訳)ミツバチは若いミツバチを世話し、作業を分配することを組織化し、そして、揺れる踊りを用いて、遠い所にある食べ物や水の位置や質についてお互いに情報を伝え合う。
waggle danceは「ゆらゆらとした踊り」の意味だが、知らなくても文意は掴める。
2個目のandの共通関係に注意して訳すべきである。andは基本的に、同一種類・範疇の語句しか繋げないことに留意する必要がある。
inform A about Bは「BについてAに知らせる」の意味。動詞と前置詞をカタマリとして捉えることがポイント。
最後の2文でミツバチの行動が脊椎動物に比べて劣っていないことが具体化されている。
第4パラグラフ
・Early research by Karl von Frisch suggested that such abilities cannot be the result of inflexible information processing and rigid behavioral programs.
(訳)カール・フォン・フリッシュによる先行研究が示唆するところでは、そのような能力は、柔軟でない情報処理や柔軟性のない行動プログラムによるものであるはずがない。
Karl von Frisch(1886-1982)は動物行動学という学問分野を創設した有名な研究者。
suggest thatは「~ということを示唆する」という意味で、~にあたる部分がやや長いので訳し下して、「示唆するところでは~」とした。このように、文章の要素が長い場合に適宜、訳し上げ、訳し下げが行えるようにするべきである。(何度も言うが、直訳したからと言って、直接減点にはつながらない)
the result of Aは「Aの結果」「Aによる」の意味。
rigid「厳格な→固定された、柔軟性ではない」の意味が分からなくても、andが繋いでいるものは同一範疇であることを考えれば、inflexible「柔軟ではない」と似た意味であることが容易に推測される。
such abilityの具体的内容は、直前のパラグラフのBut honeybees~food and waterまでを指している。
この一文では、否定の内容を入れて、以下に挙げる柔軟なミツバチの能力と対比し、後者を強調している。(現代文でも、「AではなくB」という表現を見たときに、筆者が言いたいことはBである。)
以下でミツバチの柔軟な能力が具体化されていく。
・Honeybees learn and they remember.
(訳)ミツバチは学習し、記憶する。
・The most recent experimental research has, in confirming this conclusion, created an astonishing picture of the honeybee`s cognitive competence.
(訳)最も最近の実験的研究により、この結論を裏付ける中で、驚くべきミツバチの認識能力のイメージが浮かび上がった。
confirmは「裏付ける」の意味。
this conclusionの具体的内容は、直前2文である。
・Their representation of the world does not consist entirely of associative chains.
(訳)ミツバチの世界像は連続する鎖だけから成るのではない。
・It is far more complex, flexible and integrative.
(訳)それははるかに複雑で、柔軟で、統合的である。
この2文で、ミツバチの世界像は、単純に過去→現在→未来へと進む一本鎖ではなく、網状組織のように複雑に絡み合っている、ということを主張している。
・Honeybees show context-dependent learning and remembering, and even some forms of concept formation.
(訳)ミツバチは状況に応じた学習や記憶、そして何らかの概念形成の形態さえも見せる。
・Bees are able to classify images based on such abstract features as bilateral symmetry and radial symmetry; they can comprehend landscapes in a general way, and spontaneously come to classify new images.
(訳)蜂は左右対称や放射対称のような抽象概念に基づいてイメージを分類することができる。例えば蜂は一般的化することによって景色を理解し、自発的に新しいイメージを分類するようになることができる。
bilateral symmetryは「左右対称」、radial symmetryは「放射対称」の意味。
spontaneouslyは「自発的に」の意味。語尾がtaneousである形容詞は他に、simultaneous「同時の」、instantaneous「即座の」などがよく出てくる。併せて暗記しておくこと。
セミコロン;以下で前文の内容が具体化されている。
セミコロンの更に詳しい内容はこちら:【完全網羅】セミコロンの意味4パターン -等位接続と詳述を表す!- | Sacramy
・They have recently been promoted to the set of species capable of social learning and tool use.
(訳)最近、蜂は社会的学習や道具の使用をすることができる一連の種へと地位が上がった。
promote A to Bで「AをBに昇進/昇格させる」の意味。toは例の到達のtoである。日本語として自然になるように、「(種としての)地位を上げる」ニュアンスで訳出した。
capable of以下がspeciesを後置修飾していている。
第5パラグラフ
(3)の解説はこの部分で先に行います。
・In any case, the much smaller brain of the bee does not appear to be a fundamental limitation for comparable cognitive processes, or at least their performance.
(訳)いずれにせよ、蜂のはるかに小さい頭は、(哺乳類に)匹敵する認識処理、あるいは少なくともそれらを実行することに対する根本的な制約ではないようだ。
In any caseはany「いかなる~」+単数名詞の形で、「いかなる場合でも」の意。(日本語らしくすると、「いずれにせよ」と表現できる。)
muchは比較級を強める用法で「はるかに~」と訳すのがふつう。(far,a lot,stillなどで代用可)
appear to beは「(見たところ)~であるようだ」の意。(「現れる」と訳さないように注意すること)
fundamentalは「根本的な」「基本/基礎的な」の意味。found「確立する」と同じく基盤のようなイメージを持つ単語である。
limitation for Aは「Aにとっての制限」の意味。forはここでは「~にとって」の意味の前置詞として用いられている。
comparable(compar/able)はcompare「比較する」+able「できる」の構造で、「比較可能な」が原義だが、そのまま訳しても文意が通りづらい。もう少し良い表現を探してみると、「比較可能だ」→「(何かと)比べられるくらい同じだ」→「(何かに)匹敵する」となる。(実際、「匹敵する」という訳語は辞書にも載っている)
では次に、その「何か」にあたる単語を探してみると、直前までのパラグラフで、哺乳類や脊椎動物を蜂と比較していたことから、何か=「哺乳類」「脊椎動物」とできるだろう。また次の文でも、哺乳類と蜂の類似性について言及していることから、そう推察できるだろう。(ここでは本文の流れを理解していることが要求されている)
their performanceはperform themの名詞構文で、theirが目的語になる名詞構文のパターン
theirは具体的には、直前のcomparable cognitive processesを指している。
*名詞構文
①他動詞を名詞化する場合、目的語はofまたは所有格で補う。
(例)The reduction of inflation must be the government`s priority.
「インフレの軽減は、政府が優先してやることにしなければならない。」
→目的語はof以下である。
(例)His acceotance by the dolphine gave him confidence.
「彼はイルカに受け入れてもらったので自信がついた。」
→目的語を所有格で表していることに注意する。
②自動詞を名詞化する場合、主語はofまたは所有格で補う。
(例)The punctual arrival of airplanes cannot be guaranteed.
「飛行機が時間通りに到着することは保証できない。」
→主語をof以下で表している。
(例)The star`s presence in a film is a promise of what you will see if yo go to see the film.
「ある映画にスターがいることは、その映画を見に行った時、見るものがあることを約束する。」
→主語を所有格で表している。
更に詳しい内容はこちら:【完全版】of=「~の」としていませんか? 名詞構文の解釈3パターン -17の例文で徹底解説- | Sacramy
・The similarities between mammals and bees are astonishing, but they cannot be traced to homologous neurological developments.
(訳)哺乳類と蜂が似ていることは、驚くべきことであるが、それらは単一の神経学的な発達に帰着させることができるができるはずがない。
the similarities between A and Bで「AとBとの類似性」の意味。
homologousはhomo「単一の」から類推することが容易。(homogeneous「同種の」も同じ語源である。)
theyは具体的にはthe similaritiesを指している。
traceは動詞として用いて「追う」「追跡する」の意だが、後ろに到達のtoがることから、trace toの部分をまとめて、「追って~に到達する」→「帰着する」と訳せる。
・As long as the animal`s architecture remains unknown, we cannot determine the cause of their similarity.
(訳)その動物(=蜂)の頭の構造が未知のままである限り、(私たちは)なぜ両者が似ているかを決定することはできない。
their similarityはもとの文に戻して考えると、they are similar.である。ゆえに自然な日本語に直すと、「両者が似ていること」となる。
the cause of Aは「Aの原因」だが、日本語らしくするには、節のように訳出して、「なぜAであるのか」と訳すことができる。
解答を書く
1°)京大の解答用紙のサイズでは、一行あたり25~30文字書くのが目安。(決して、全ての行を埋める必要はない)
2°)内容説明は、下線部自体への言及+該当箇所の特定→該当部分を和訳し、内容を適切な言葉を補ってつなげる、が基本的な方針。(本質的には和訳問題と変わらない。)
(1)下線部(a)の具体例として、このパラグラフではテッポウウオが獲物に水を噴射して狩りをする能力が紹介されている。その能力の特長を3点、日本語で箇条書きにしなさい。(各2行)
問題文の指示がとても詳しいので該当箇所は非常に見つけやすい。テッポウウオについて言及している文章を第2パラグラフから探すと、続く3文がその内容を説明していることが分かる。その次のSpit hunting isで始まる文章も解答要素かと思うかもしれないが、問題文の指示に戻ると、「特長(特に優れたて目立つ点)」とあることから、解答要素としてはあまり適切ではないことが感覚的にわかる。(入試本番の採点ならばこの部分を書いても許容されるかもしれないが、模試では該当箇所が違うという理由で0点になるだろう。)
このように、内容説明問題は該当箇所さえ特定してしまえば、後は所詮和訳問題である。該当箇所の特定を難しいと感じる人が多いようだが、そこは結局文章の流れを理解しているかが問題であり、まずはパラグラフ・リーディングから始め、その後に精読するといった姿勢が大切である。
箇条書きで良いので、先ほど直訳したものをコピペして解答すればよい。
(解答)
・空気と水の間の境界における屈折を補正しながら、自分の獲物に水の流れを噴射することができる点。
・自分の獲物との距離を追うこともでき、そうしてその噴射水が獲物に命中するちょうど直前に最大の力をもつ点。
・自分の獲物の軌道が変化する場合でさえ、テッポウウオは標的に水を噴射する点。
(2)下線部(b)でいうminibrainとは、ミツバチの場合、具体的にどのような意味で用いられているか。本文に即して日本語で説明しなさい。(7行)
下線部そのものの内容説明の問題はまず、下線部自体の意味に言及したうえで、該当箇所を特定し、要素を増やしていくのが基本的な姿勢である。
下線部はminibrain「小さな頭」であることから、まず説明するべきは、mini「小さい」ことに対する言及である。具体的に説明している箇所を探すと、続く3文にその内容があることが分かる。しかし、この要素だけでは全然解答欄が埋まらないので、次に、brain「頭」がどのようなものであるかに言及する。一旦マクロな視点に戻ってみると、2~4パラグラフでミツバチの認識能力の凄さについて述べていることを思い出せる。3、4パラグラフに述べられているミツバチの能力をすべて直訳してしまうと、解答欄が足りなさそうなので、ある程度要約して書くとよい。その際、具体例は適宜省く必要がある。メインの要素を先に確定し、字数に余裕がありそうならば、書けばよい。(解答するべき箇所は添付したpdfファイルに下線が引いてあるので参考にしてください。)
7行あるので、150~200文字で解答することが目安。
(解答)
真の意味で脳とは言えず、脊椎動物よりも脳の大きさははるかに小さいが、約96万の神経単位からなり、昆虫の中では最も高いレベルの神経単位密度を持ち、状況に応じた学習や記憶をしたり概念確立をしたりし、抽象概念に基づいたイメージを分類し、自発的に新しいイメージを分類するようになり、はるかに複雑で柔軟で、統合的な世界像を構成する認識能力をもつという意味。
(3)第5パラグラフで解説済みなのでここでは割愛します。
あとがき
最後まで閲覧していただきありがとうございました。
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大問2の解説もこちらの記事で行っています。合わせてご覧になってください!
2021年度の解説もこちらからご覧になることができます!
参考文献
・京都大学令和2年度入学試験問題 外国語 英語
・The Smart Set | Articles | Inference: International Review of Science (inference-review.com) 最終閲覧日時:2021 2/4
筆者の紹介
英語が嫌いという理由で朝のホームルームに英会話がある西京中学ではなく、洛北高校附属中学校を目指し、洛北高校附属中学校(中高一貫)に補欠合格。模試は高1から全てA判定を出し、高2では駿台全国模試の英語・数学の偏差値80越え。高3では夏の京大模試で経済学部理系で4回連続1位を取り、秋は全て理学部で冊子掲載。英語に関しては駿台で竹岡先生の高3エクストラ英語αで学び、京大模試で全国15位以内を7回取る安定した成績を収めた。
(以下、全国15位以内の模試のみ成績を添付)
京大模試
第1回京大入試プレ 117/150,11位 (74.9)
第1回京大オープン 120/150,6位 (76.5)
第1回京大実戦 113/150,13位 (77.0)
第2回京大オープン 120/150,10位 (76.2)
第2回京大入試プレ 114/150,6位 (70.8)
第4回Z会京大テストゼミ 124/150,1位 (67.5)
第3回京大本番レベル模試 136/150,1位 (70.4)
その他模試
東工大入試実戦模試 113/150,5位 (82.5)
河合塾京大本番プレテスト 121/150 など
※素点と全国順位を記載,()内は偏差値
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