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【全国模試1位に学ぶ英語】令和2年度 京大英語2020 大問2解説

【関連記事】
・大問1の解説はこちらから→【全国模試1位に学ぶ英語】令和2年度 京大英語2020 大問1解説 | Sacramy

目次

  1. まえがき
  2. 京大入試で求められている力
  3. パラグラフごとの要旨 -マクロな視点から読む-
  4. 構文解析、全文和訳 -ミクロな視点から読む-
  5. 第1パラグラフ
  6. 第2パラグラフ
  7. 第3パラグラフ
  8. 第4パラグラフ
  9. 解答を書く
  10. あとがき
  11. 筆者の紹介

まえがき

こんにちは、【全国模試1位に学ぶ英語】 令和2年度 京大英語 大問1解説 | Sacramyに引き続き2020年度の京大英語の解説をさせていただきます。よろしくお願いします。第2講では、かつての京大入試の形式とは異なる問題形式の大問2のほうを解説したいと思います。試験本番問題を見て「あれ、いつもと問題形式が違うぞ!?」「京大にまさかの要約問題登場!?」と面食らった方も多いと思います。そんな時に、まず第1講で解説した英文の読解方法を思い出してほしいです。今回は、これからも問題形式の変容を続けていくであろう京大英語にどのように対処したらよいのか、ということを説明していきます。(新時代宣言をしているようなので、来年どんな問題が出てきてもおかしくないと思います。でも… →2章へ)

前記事に引き続きしつこいようですが、自分は英語の文献を読む際、マクロとミクロという2つの視点を非常に重要視しています。まずはパラグラフ・リーディングをしながら通読し、その後マクロな文脈のもとで必要な部分に絞って精読を行い、その部分を正確に日本語に変換するという姿勢がとても大切だと思います。

【関連記事 -2021年度の解説記事-】
・大問1の解説はこちらから→【全国模試1位に学ぶ英語】令和3年度 京大英語2021 大問1解説 | Sacramy
・大問2の解説はこちらから→【全国模試1位に学ぶ英語】令和3年度 京大英語2021 大問2解説 | Sacramy

*以下、特に注意してほしいポイントは赤字にしてあります。

京大入試で求められている力

問題形式がいくら変容しようが、京大の問題は解答欄がやけに長いので、どうやら入試において必要とされているスキルは該当箇所を探し出し、その部分を和訳し、適切な内容を補ってつないでいくことであるようです。

一説によると、京大は文科省の要請によって「問題を和訳ばかりにするのはやめてくれ!」と求められたので、本質的には和訳問題なのだけれども、仕方なく表面上違う系統の問題に見えるようにしているそうです。(具体的には、2015年から内容説明問題が登場しました。)

「該当箇所がわからない!」、という問題は、そもそも本文を十分に理解できていないところに問題があるので、まずはマクロ・ミクロの2つの視点で文章を読むことから始めてみてください。量さえ積み上げれば、自ずと力は付いていくと思います!

だから、問題文がどのような問い方をしていても、怯えずに以前紹介した英文の読解の姿勢をもつことが大切です。何度も言いますが、所詮和訳問題です。ただ、文章の質自体は新たな知見を会得させてくれ、たいてい素晴らしいものなので、和訳だけの学習にとどまらず筆者の主張を汲み取る練習には最適だと思います。このブログをその一助としていただければ幸いです。

加えて、以下のような事態は起こりえないと思うのですが、京大が東大みたいにコンパクトにまとめることを要求してきた場合に備えて自分で文字数を決めて要約する練習をすることも効果的だと思います。(話は逸れますが、東大の問題は本来の英語力を問うていて本当に素晴らしい入試問題としてのクオリティだと思います。)

パラグラフごとの要旨 -マクロな視点から読む-

本文を最初に読むときはまず大雑把でいいので、文章を通じて筆者が何を言いたいかを理解しましょう。その際、本文の横に自分が読み取ったことを適宜メモすることが望ましいです。(パラグラフごとにメモするのは時代遅れだと思います。自分で文章を読み、必要に応じて適宜メモを取りましょう。)

特に本問では、いきなり第1パラグラフから内容を拾いきることは容易ではなく、しかも一貫して筆者が主張しようとしていることはあるのですが、いかんせんそれが不明瞭で内容をメモしつつ整理しておかないと、何の話かさっぱり分からなくなります。(先に言っておきますが、「古代の証拠が見つからねぇ!」が主題ではありません(笑))

とにかく、ガチの論文みたいな文章の形式をしているので頑張って一度じっくり読んでみましょう。

※パラグラフの青字の部分を押すことで各パラグラフ冒頭に飛ぶことができます。

1パラ:北アメリカはインディアンの故郷である。移民や帝国による支配の歴史があり本当の歴史が歪められている。→本当はヨーロッパ人が到着する前から歴史があった。
2パラ:初期のインディアンがどのような生活をしていたかは、分からない(∵海面が上昇し、証拠が埋まっている。)(→問1
3パラ:インディアンの生活形態は移動式から定住式に変化した。環境が豊かでも移動式生活なので証拠が残りにくく、初期のインディアンの歴史は知り難い→考古学にとって不都合である(→問2
4パラ:結局、ヨーロッパ人が到着した時には既にインディアンに長い歴史があった。しかし、その生活の証拠はもう海の下に埋もれている。(→問1)やがて動物狩りが終わり農業へと移行した。そしてスペイン人が当時見たのは、沿岸部のみで農業が発展している雑多な民族の数々であった。

本文を読んでいて、やたらヨーロッパの国名(特にスペイン)が出てきました。世界史選択の方でなくとも、16世紀後半くらいにアメリカは被植民地時代が到来し、1776年に独立宣言をしたことは知っていると思います。ではなぜ、世界地図もまともに作れないはずの当時にヨーロッパ人はアメリカ大陸の存在を知ることができたのでしょうか?それは実際中学校の社会でも習うのですが、1492年にヨーロッパを出発し、インドを目指したクリストファー・コロンブスがカリブ諸島に到達した時に、インド周辺の島々であると誤解し、先住民をインディオスと呼んだことから、それ以降アメリカ先住民をインディアン(Indian)と呼ぶようになった話は有名です。自分の民族がそのような名称で呼ばれていると思うと、自尊心が傷つく感じがしませんか…?

※なんか色々語ってますが、自分はセンター試験は倫理・政経選択です。世界史はあまり知らないので無知を晒す前にここでいったん雑談はやめておきます(笑)

さて、雑談はさておき、通読をして一通り内容を整理してみると、本文冒頭の文言「次の文章は自ら「インディアン」としての誇りをもつアメリカ先住民の筆者が、…」の意味するところが分かる気がします。

自分の民族は古来素晴らしい歴史を持っているのにも関わらず、最初に外部世界に知られるようになる頃にはもうその生活の証拠もなく、ただ農業をしたりしていなかったりの民族だと思われてしまい、それに加えて考古学のやり方がやり方なので、自分たちの由緒ある歴史を知ってもらえない、そんな筆者の嘆きが感じられると思います。

ここまで文章を考察すると分かるように、筆者の主張はもちろん、「古代の証拠が見つからねぇ!」ではなくて、「我々先住民の歴史は由緒正しきものなんだよ」であることに納得していただけると思います。納得できなかったら$3-1を何回か読んでみてください。

本問でもそうなのですが、重要な話題が第1パラフラフで展開されている英文は多いです。だから、1パラの内容は極力押さえておくことが望ましいです。

大問2(1)(2)では、考古学にとって不都合である理由を問うているにとどまっているので、問題を解く際にこの流れを理解しておくことは、本問ではたまたま絶対必要というわけではないのですが、長文を読みながらこれくらいのことは推論できる力を身につけましょう。(というか、本音を言うと、この文章の素晴らしい内容にも関わらず、このようなつまらない問題が出題されていることは遺憾です。←本質的に和訳重視の京大が出題するとこのような問題形式になるのは少々は仕方がないのですが…)

このように、一回目に長文を読む時に、設問要求されたところだけを読むのではなくて、しっかりと文章全体の展開が見えていないという癖がついてしまうと後々苦労すると思います。だからこそ、マクロ・ミクロの2つの視点を持って文章を読み進めることは非常に大切です。

構文解析、全文和訳 -ミクロな視点から読む-

試験本番では、本文を大雑把に理解した後は内容説明問題や和訳に必要な部分を特定し、その部分の意味を解析する作業が必要となります。(マクロミクロ

ここでは説明の都合上、全文の和訳と解説をします。設問該当箇所を探す段階については、各設問解説で言及します。(問題を解いて答えを確認したい方は先に解答のほうを読むことを推奨します。)

 以上前置きが約1万文字とバカ長くなりましたが、真面目にミクロ・リーディングをしていきましょう。第1パラグラフからいきなり難しいので覚悟が必要です。

第1パラグラフ

・Despite the variety of tribal belief (or perhaps in part because of it), North America is uniformly seen as an Indian homeland that has shaped and been shaped by the Indians living there then and living there now.
(訳)部族間で信じられていることが様々にあるにもかかわらず(いやむしろ、ひょっとすると一部にはそれのせいかもしれないのだが)、北アメリカはどの部分も、当時そこ(=北アメリカ)に住んでいたインディアンと今そこに住んでいるインディアンたちを作り、そして(そのインディアンたちにより)作られたインディアンの母国として見なされている。

一文目から修飾関係がやや複雑な文章なので、丁寧に解説していきます。

Despiteは「~にもかかわらず」の意味の前置詞であり、コンマ以前を直訳すると、「様々な部族的信念にもかかわらず」となり、やや日本語として不自然なので、Despite+(名詞)をAlthough there be動詞+(名詞)のように訳出した。すると、「様々な~があるにもかかわらず」となり、分かりやすい。

or perhapsは「いやむしろ(あるいは)、ひょっとすると」の意味。orは①あるいは、②さもなければ、③いやむしろ(③は稀)の3つの意味を覚えておくべきである。

uniformlyは「均一に」「一様に」の意味の副詞。uniform「均一な」は基本単語。(意味が分からなければ、school uniform「制服」を考えると、学校では皆同じ(=一様な)服を着ているので意味が推測できるだろう)

また、uniformはuni「1つの」+form「形」が原義である。

see A as Bで「AをBと見る/みなす」の意味。本文では受動態になり、A is seen as Bの形になっている。

that節以下がan Indian homelandを修飾しており、that節内部ではshapedとbeen shapedが並列、またliving there thenとliving there nowが並列。andは同一範疇の語句をつなぐことを考えれば自明だろう。(ここで並列関係を間違えるようなことがあれば教える側としては発狂しそうになる。)また、現在完了のニュアンスをしっかりと訳出するべきである。

livingはthe Indiansを後置修飾している。名詞+現在分詞の形で解釈する。

*名詞+Vingの解釈2パターン

①意味上の主語+動名詞
(例)I cannot stand things not being kept in their proper places.
「私は物があるべき所に置いていないことには耐えられない。」
→Things are not kept…を動名詞にした形であり、thingsがnot being kept…の意味上の主語となっている。「あるべき所に置いていないもの」と訳すのは誤りである。というのも、「耐えられない」対象は「もの」それ自体ではないからである。
→notが入る位置は意味上の主語とVingの間である。英作文で用いる時には注意すること。

②名詞+現在分詞
(例)One of the key factors contributing to a country`s health care conditions is its number of health care workers.
「国の医療事情に影響する重要な要因のひとつは、医療従事者の数である。」
→contributing to…がthe key factorsを修飾している。

【注意】
①か②かは文脈次第だが、まず①の形であることを疑うのが鉄則。(本文では②のほうで解釈するのが適切。)入試では圧倒的に①が理解できているかの是非を問う問題が経験上多い。(模試でもこのタイプの問題は非常に出来が悪いらしい。)

更に詳しい内容はこちら:名詞+Vingの解釈2パターン -動名詞の意味上の主語を見落とすな!- | Sacramy

・Over these homelands various empires and nation-states — Spanish, British, French,Dutch, and, later, American — have crawled, mapping and claiming as they went.
(訳)これらの母国をめぐって、様々な帝国や国家ースペイン、イギリス、フランス、オランダ、そしてその後アメリカーが進出し、進出するにつれ地図を作り、自分の領土だと言い張った。

Over these homelandsは「これらの母国中に」の意味の副詞句で本来文末にくるべきであるが、旧情報として文頭に移動している。そしてhave crawled, mapping and claiming as they wentを新情報として文末に際立たせている。日本語とは違い、英文ではこのような要素の移動がありうるので、「あれ、文法的にバグってない?」と思った時には注意すること。

→本文では、筆者の母国が植民地支配され、後に独立宣言を果たす過程が強調されていることになる。(そりゃ誰かって、自分の土地を他人に奪われたら怒りますよね。)

mapping以下はvarious empires and nation-statesを意味上の主語とする文末分詞構文となっている。

mapは「地図を作る」「測量する」の意味の動詞。動詞であることを見抜き、意味を推測することは容易。

crawlは「はって進む」の意味で、主語が「帝国」なので、「帝国がはって進む」ことは「帝国が徐々に進出する」さまの比喩であると解釈した。(水泳のクロールをイメージしてみよう。)

claimは「主張する」の意味だが直訳しても意味が分からないので「(自分のモノだと)主張する」→「自分の領土だと言い張る」と訳出した。

as they wentのasは「~するにつれて」(比例)で訳出した。

*(復習)文末分詞構文の主な用法3パターン(SV~,doing…)

①「Sは~し、そして…する。」(連続

②「Sは…しながら~する」(付帯状況

③「Sは~し、それが…する

→①や②とは違い、分詞構文の主語と主節の主語が一致しない場合には、関係代名詞のwhichを補って読む

【注意】

1°)分詞構文から訳す可能性がある場合は以下の2つ。

①人物描写
(例)Tom was talking with Nancy with his arms folded.
「トムは腕を組んでナンシーと話していた。」

②「~を考えて」の類
(例)SV,thinking / hoping / believing / considering that

2°)分詞構文がどこに修飾するかには注意が必要。

*asの解釈12パターン

(多すぎるので例文は省きますm(__)m)こればかりは自分で英文に触れながら全部覚えるしかありません。しかし、asの原義は同じくらい」であり、以下12個の意味は全てそれに派生しています。(聞いた話によると、元々は「同じくらい」の意味しかなかったが、アメリカの若者がasを乱用しだして意味が増えたらしいです。頼むから増やさんといてくれ(嘆き))

1°)前置詞:as+(名詞)

①「~として」→特に、動詞 A as Bで用いられることが多い。

②「~の頃」→as a childなどで用いる。

2°)接続詞:as+完全文

①「~すると同時に」「~しながら」(同時

②「~するにつれて」(比例

③「~するように」(様態

④「~するのとは違って」(対比)→④を否定の文脈で用いる時⑤の意味になる。

⑤「~なので」(理由

⑥「~と同じくらい」(比較級原級

⑦「φ(訳さない)」(名詞限定)→as we know itなどの形で用いる。

⑧「~なのだけれども」(譲歩)→(補語)+as SVの形で用いる。

3°)関係代名詞:as+不完全文

①As is usual「いつものことだが」の類

②the same A as~「~と同じA」

・But neither these maps nor the conquests enabled by them eradicated or obscured the fact that immigrants made their homes and villages and towns and cities on top of Indian homelands.
(訳)しかし、これらの地図もそれらにより可能になった征服も、移民たちがインディアンの母国の上に住居や村、町、都市を作ったという事実をかき消したり、分かりにくくしたりするのではない。

neither A nor Bで「AもBも~ない」の意味。

these maps「これらの地図」は意味的には、前文の分詞構文のmappingの部分を指している。

enabled by themのthemはthese mapsを指していると解釈した。すると、「地図ができる」→「(進むべき方向が分かり、)征服が可能になる」と文意がつながる。

eradicateは「根絶する」「消す」の意味。正直推測するのは難しいですが、orでobscure「不明瞭にする」「ぼやけさせる」と似たような意味であることは推定できるはず。

asはここでは1°)前置詞:as+(名詞)の形で、①「~として」の意味で用いられている。

on top ofが斜体になっているが、おそらくここで筆者はon top of「上に」を強調したいはずである。(そりゃ誰でも、自分の母国を侵略されたらちょっとは憤慨して感情的になるでしょう、そんな感じです。)

・Any history that persists in using the old model of New World history as something made by white people and done to Indian people, therefore, is not a real history of this place.
(訳)それゆえ、新世界の歴史を白人によって作られ、インディアンの人々に行われたものとして捉える古いモデル用いることに固執する歴史はどれも、この場所(=北アメリカ)の本当の歴史ではないのだ。

persist in Vingは「~することに固執する」「~し続ける」の意味。persistはper「通して」+sist「立つ」→「(粘り強く)立ち続ける」が原義。(perの意味はpermanent「永久的な」から、髪の毛のパーマ(髪の毛に波形をつけること)を連想すると分かりやすいだろう。)

→このように、意味の分からない単語でも知っている単語から成り立ちを考えると意味が分かることもある。

*(復習)未知語を推測する際には、①文意から推測対比・言い換えから推測単語の成り立ちから推測 の3つの姿勢が大切である。

わざわざ大文字になっているNew Worldは、大航海時代以降にヨーロッパ人が新しく発見した、南北アメリカやオセアニアなどの地域のことである。

→この2文が意味するところはやや難しい。(自分も特に、最初に読んだ時なぜ接続詞のtherefore「それゆえ」が用いられているのかよく分かりませんでした。)

 ここで再び文頭の「自ら「インディアン」としての誇りをもつアメリカ先住民の筆者」という文言(この文章のテーマ)を思い出しつつ、この2文の内容をまとめると、ヨーロッパの白人のアメリカ大陸に対する征服の歴史ばかりが目立ってしまい、自分たちインディアンの由緒正しき歴史が埋没してしまっている、とまとめられるだろう。(やはりマクロな文脈に照らして考える必要がありますね。)

*これはあくまでも自分なりの解釈なので、他に「自分はこうだと思う!」という意見があればぜひ聞かせてください。参考にします。

・Rather, as the historian Colin Calloway has suggested, history didn't come to the New World with Cabot or Columbus; they — and those who followed — brought European history to the unfolding histories already here.
(訳)むしろ、歴史家のコーリン・キャロウェイが示唆したように、歴史はカボットやコロンブスと共に新世界が始まったわけではない。つまり、彼らーそして、それに続いた人々ーがヨーロッパの歴史を既にここで展開されていた歴史に持ち込んだのだ。

asは上に挙げた、3°)関係代名詞:as+不完全文の①の用法であり、元の文に直すと、Rather, the historian Colin Calloway has suggested that history didn't…となる。元の文のthat節以下を文頭にasから始まる部分に持ってきている、とみなせばわかりやすい。

Colin Calloway(1953~)は英米歴史家であり、Reinterpreting New England Indians and the Colonial Experience「ニューイングランドのインディアンと植民地経験の再解釈」という本の著者である。

Cabot(1450(?)-1498)は本名ジョン・カボットであり、コロンブスと同じジェノヴァに生まれ、カナダ東南岸のケープ・ブレトン島に到達し、北アメリカ大陸の発見者として知られる航海者であるが、コロンブスに比べれば知っている人は少ないはず。(自分も試験本番、誰か分かりませんでした。)

軍機マニアの方の為に説明しておくと、アメリカ海軍の航空母艦カボット(USS Cabot, CV/CVL-28)はそのジョン・カボットが名前の由来である。

Columbus(1451(?)-1506)は本名クリストファー・コロンブスであり、3章でも触れたのでここでの詳しい説明は省きます。m(__)m

history didn't come to A with Bは直訳すると、「歴史はBとともにAにやって来なかった」となるが意味不明なので、文意が伝わるように視点を切り替えて、「Aにとって歴史はBとともに始まらない」と訳出した。

bring A to Bは「AをBに持っていく/連れて行く」の意味。

unfoldは「広げる」「広がる」「展開する」の意味。多くの人が中学高校で「日本文化を英語で紹介しよう!」的なことをしているはずであり、その時に折り紙について調べていればfold the paper「紙を折る/たたむ」のような表現を使ったはずである。foldの逆がunfold(un「否定」+fold「たたむ」)であることを考えれば、unfoldが何か広がっていくイメージを持つ単語であることは容易に推測できるだろう。身近な単語の知識を疎かにしないようにしよう。

この一文を読むと、2、3文前の内容が「ヨーロッパの白人のアメリカ大陸に対する征服の歴史ばかりが目立ってしまい、自分たちインディアンの由緒正しき歴史が埋没してしまっている」であることに、納得できると思う。筆者は、ヨーロッパ人が来る前から我々インディアンの歴史はあったんだよ、と言いたいことが分かるだろう。

第2パラグラフ

・When Europeans first arrived on the Atlantic coast, they landed on a richly settled and incredibly fecund homeland to hundreds of tribes.
(訳)ヨーロッパ人が初めて大西洋の沿岸に辿り着いたとき、彼ら(=ヨーロッパ人)はたくさんの人が住み、何百もの部族にとっての、信じられないくらい肥沃な故郷に上陸したのだ。

Atlanticは「大西洋の」意味。ヨーロッパとアメリカの間にある海洋は誰がどう考えようと大西洋です。ちなみにPacificが「太平洋の」の意味です。合わせて覚えておきましょう。

land on Aで「Aに着陸/上陸する」の意味。細かいことだが、この当時人間はまだ空を飛べていないので「着陸する(空移動のニュアンス)」と訳すと誤りである。

richly settledは直訳すると「十分に定住された」の意味だがやや日本語として不自然なので、住んでいる人に焦点に当てて、「たくさんの人が住んでいる」と訳出した。

incrediblyは「信じられないくらいに」の意味。incredible「信じられない」を知っている人がほとんどだろう。in「~ない」+credit「信用」+able「~できる」が原義である。

fecundは「肥沃な」の意味。この単語は誰も知らないが、故郷が何か栄えているイメージを表す単語であることを読み取れれば十分。

第1パラグラフに引き続きこの一文でも、筆者はヨーロッパ人が来る前から我々インディアンの歴史はあったんだよ、と主張してる。(こんだけ繰り返し主張されていることなので、よっぽど大事なことなのでしょう。)次の一文からは、その古き良きインディアンの歴史に関する内容へと移行していきます。

・When prehistoric first Indians emerged in what is now the eastern United States, the water levels were considerably lower than they are now, because much of the world's water was trapped in glaciers that spread across a large part of the Northern Hemisphere.
(訳)有史以前の最初のインディアンたちが、現在のアメリカ合衆国の東部に現れた時、水面の高さは、現在よりもかなり低かった。というのも、世界の水の大部分が、北半球の大部分にかけて広がる氷河の中に閉じ込められていたからである。

prehistoricは「有史以前の」の意味。pre「前の」+historic「歴史に残る」→「歴史に残る前の」が原義。

what is now the eastern United Statesは「現在のアメリカ合衆国の東部」の意味で、what(=the thing(s) which)が名詞節を作っている。(ここが分からない人は表紙に森が生えている文法書でも参照してください。)

比較級の部分を分かりやすくすると、the water levels were considerably lower than they are low nowとなるが原則比較対象の形容詞は省くので、本文のような形になる。(加えておくと、they areも省略可能)

much of Aは「Aの多くの部分」の意味。much A「多くのA」と混同しないように注意すること。

・Because of this, (a)coastal archaeology has uncovered only a very fractured record of habitation.
(訳)このことが原因で沿岸考古学は居住のごく限られた記録だけしか解明してない。

thisは前文の内容(=海面が上昇したこと)である。

archaeologyは「考古学」の意味。archaeo「古代の/原始の」+logy「学問」→「古代の学問」が原義。ちなみに、始祖鳥の学名もArchaeopteryx (アーケオプテリクス)でありarchaeo-で始まっている。(化石から出てくるポケモンのアーケオスの名前もここから派生しています。)

ここで下線部(a)が出てきましたが、第4パラグラフも読まないといけないので、ひとまず第2パラグラフの内容だけ拾うと、「直前に解答部分に使ってくれよな!」と言わんばかりに、Because of thisという文言があるので、一度thisの指す内容(前文の内容)を軽く理解しておきましょう。そのほうが解答を書く時にスムーズに書けます。(詳しい説明は解答のほうで行います。)

第3パラグラフ

・Even so, five-thousand-year-old shell middens in Florida and North Carolina suggest vibrant coastal cultures in this region.
(訳)たとえそうだとしても、5000年前のフロリダやノースカロライナの貝塚は、この地域の活気に満ちた沿岸文化を示唆している。

Even so「たとえそうだとしても」とは、前文の内容から考えて、「たとえごく限られた古代の生活の記録だけしか解明されていないとしても」の意味である。

shell middensは「貝塚」の意味。

・In Virginia alone there are thousands of known prehistoric village sites.
(訳)バージニアだけでも、有史以前の知られた村の場所がある。

副詞句のIn Virginia aloneが文頭に移動した形になっている。

・How these early tribes were organized or how they understood themselves is hard to know.
(訳)これらの初期の部族がどのように組織化されていたかということや、彼らが自分自身をどのように理解していたかということは知り難い。

考古学的証拠があまりない上に、知られた村がバージニアにしかなければ調査できる場所も十分になく、古代の生活は知り難い、という文章展開となっています。

・What made for a relatively easy life — abundant rivers, streams, and springs, plentiful fuel, fairly constant aquatic and terrestrial food sources, and a relatively mild climate — (b)makes for bad archaeology.
(訳)比較的簡単な生活に役立ったものー豊かな川、泉、たっぷりとある食物、かなり絶え間なくある水中や陸上の食糧源、そして比較的温暖な気候ーが悪い考古学を助長してしまう。

make for Aは「Aに向かう」「Aに役立つ」「Aを促進する」の意味。make forが2箇所あるが、1つ目は+の意味、2つ目は-の意味で用いられているので、それぞれ順に「役立つ(+イメージ)」、「助長する(-イメージ)」で訳出した。

aquaticは「海の」の意味でterrestrial「陸の」と対義語の関係になっている。

ここで下線部(b)が出てきましたが、ここまでの部分だけで理由を判断できないので第3パラグラフを読み進めていきましょう。その際、なぜ考古学にとって不都合なのか?というマクロな文脈を頭に入れておくと話が分かりやすいでしょう。

・It seems that, in this early period, coastal Indians lived in small villages of about 150 people and that they were fairly mobile, spending part of the year on the coast, part farther inland, and getting most of their calories from fish and game and opportunistic harvests of nuts and berries.
(訳)この初期の時代に沿岸のインディアンたちは150人くらいの小さな村に住んでいて、彼らはかなり移動的であり、一年の一部を沿岸で過ごし、また一部をさらに内陸部で過ごし、自分たちの栄養のほとんどを魚や、狩りや機会を狙った木の実や小果実から得ていたようだ。

It seems that SVは「SVであるようだ」の意味であり、it=that SVの関係が成立しており、that節以下が長いために形式主語のitが用いられている。(形式主語のitを訳出してしまうと和訳問題では点数が残らないと思うべきである。)

mobileは「移動性の」の意味。mobileが動きを意味する単語であることは誰でもしっているだろう。例えば、mobile phone「スマートフォン」は"移動"しながら持ち運べる携帯電話である。

分詞構文以下でfairly mobileの内容が具体化されている。とにかくこの1文で、初期のインディアンは移民的で非定住性の生活を送っていたことを読み取るべきである。あちこち移動されては、1箇所に証拠が残り難く、考古学をする人にとっても明らかに不都合である。このように考えると下線部(b)の理由が分かり始める。

・Populations seem to have risen and shrunk like the tide, depending on the availability of calories.
(訳)栄養が手に入るかどうかに応じて人口は潮(の満ち引き)のように上下するようである。

availabilityは「入手できること」の意味。available「入手可能な」の名詞形である。

食べ物が手に入るかどうかは古代人にとってどう考えても死活問題です。上記に加えて人口も減ったりして生活の証拠が残りにくくなってしまえば、考古学者にとっては発狂もんです。すると、どんどん下線部(b)の理由が分かり始めていきますね。

・Archaeological evidence suggests that between 2500 and 2000 BCE, tribal groups began making clay pots, which indicates a more sedentary lifestyle, the need for storage (which in turn suggests that there were food surpluses), and a greater reliance on plants for sustenance.
(訳)考古学的な証拠が示唆するところでは、紀元前2500年から2000年の間に、部族集団は粘土のポットを作り始めた。そして、そのことは、より定住的な生活、貯蓄の必要性(そしてそれ(=貯蓄)により、今度は食料が余分にあったことが示唆される)、そして生活維持のために植物により依存することを示している。

which以下の主語は前の文のbetween~clay potsであり、…clay pots, which indicates…をもとの文に直すと、…and this indicates…となる。(2021 3/23修正)
→indicatesに3人称単数のsがついていることから、先行詞をclay potsと解釈してしまうと矛盾してしまいます。

sedentary「定住的な」はmobile「移動的な」と対比されている。火を使ったり農業をしたりするためには一つの場所に留まらないといけないことは誰でも分かるだろう。それゆえ、意味は知らなくても容易に推測できたはずである。

in turnは「それが今度は」の意味。

surplusは「余剰分」の意味。sur「上に」+plus「加える」→「上に加えられたもの」が原義である。

rely on A for Bは「Bを求めてAに頼る」の意味。onは依存のon、forは先程も出てきた方向のforである。このように、前置詞にイメージを持つことは非常に大切である。

a greater reliance on plants for sustenanceはgreatly rely on plants for sustenanceの名詞構文の形。名詞構文は第1講でも解説しましたが、そのまま訳してしまうと冗長な日本語になってしまうので、元の文をイメージして訳しましょう

この一文で、インディアンの生活形態が初期の狩りの移動式から農業を営む定住式に変化したことが述べられています。どうやら、下線部(b)の理由の対比要素として解答に使えそうですね。

・A bit later eastern coastal and woodland Indians were planting or cultivating sunflowers, lamb's-quarter, gourds, goosefoot, knotweed, and Jerusalem artichokes.
(訳) 少し後の東沿岸部や森林地帯のインディアンたちはヒマワリやシロザ、ウリ科の植物、アカザ属の植物、タデ、エルサレムのアーティチョークを植えたり栽培したりしていた。

意味わからん植物の名前が羅列されていますが、農業を営んでいたことの具体化であると読み取れれば十分です。(ちなみに自分は本番ヒマワリとアーティチョーク以外の単語を知りませんでした。逆に知ってるほうが怖いです(笑))

前文の漠然とした内容が具体化されています。(例の、漠然→具体の流れです。)

第4パラグラフ

・When Ponce de León arrived in Florida in 1513, with explicit permission from the Spanish crown to explore and settle the region, Indians had been living there for at least twelve thousand years.
(訳)ポンセ・デ・レオンが1513年に、スペインの君主によってその地域を探検し移り住むことを公然に許可されてフロリダに到着した時、インディアンたちは少なくとも2000年はそこに住んでいた。

Ponce de León(1474-1521)はスペイン人の探検家である。

with permission from A to doは「Aにより、~する許可を所持して」の意味。withはhavingと置換可能な所有のwithである。

explicitは「明白な」が直訳だが、「(世の中からみて)明白な」と読んで、「公然な」と訳出した。

「インディアンたちが少なくとも12000年はそこに住んでいた」ことは「ポンセ・デ・レオンが1513年に、スペインの君主によってその地域を探検し移り住むことを公然に許可されてフロリダに到着した」ことよりも前のことなので、過去完了進行形が用いられている。

第1パラグラフ第2パラグラフ冒頭に引き続きこの一文でも、筆者はヨーロッパ人が来る前から我々インディアンの歴史はあったんだよ、と主張してる。(こんだけ繰り返し主張されていることなので、よっぽど大事なことなのでしょう。)だから何度もいいますが、筆者の主張は「古代の証拠が見つからねぇ!」ではなくて、「我々先住民の歴史は由緒正しきものなんだよ」ですね。

・Because of the lower water levels, during prehistoric times Florida's land mass was double what it is today, so much of the archaeological evidence is under the sea.
(訳)低い海面のせいで、有史以前の時代の間、フロリダの陸塊は現在の2倍あった。だから、考古学的証拠の大部分が海の下にある。

下線部(a)の直前のthisがその前文の内容(=海面が上昇したこと)を指しており、海面上昇が考古学にとって不都合であるという部分第2パラグラフにがありましたが、その部分がここで明白に書かれています。すると話が上手く繋がって、海面上昇した→証拠が海に埋もれてしまう→考古学にとって不都合、となりますね。(勘のいい方はこの内容が既に予測できていたと思います。)これで下線文(a)の理由も分かりました。

この部分以下ではインディアンの生活が徐々に発展していく様子が記述されています。解答に直接は関係ありませんが、歴史の進歩が感じられて読んでて面白いです。

・It was also much drier and supported all sorts of megafauna such as bison and mastodon.
(訳)それ(=フロリダの陸塊)ははるかに乾燥しており、バイソンやマストドンのようなあらゆる種の巨大動物相に支えらていた。

faunaは「動物相」の意味。

・As megafauna died out (climate change, hunting), the fruits of the sea in turn supported very large Archaic and Paleolithic societies.
(訳)巨大動物が絶滅するにつれて(気候変動や狩りによる)今度は海産物がとても大きな古代の、旧石器時代の社会を支えた。
・Agriculture was late in coming to Florida, appearing only around 700 BCE, and some noncoastal Florida tribes still had no forms of agriculture at the time of Spanish conquest.
(訳)農業は後でフロリダにやって来て(伝来して)、紀元前700年頃になってはじめて現れたのだが、非沿岸部のフロリダの部族の中には依然として、スペインによる征服の時にいかなる農業形態も持っていなかったものもあった。

no+(名詞)はnoをnot anyに分解して、「いかなる~もない」と訳出すると上手くいくことが多いです。

・Presumably the rich fresh and brackish water ecosystems were more than enough to support a lot of different peoples.
(訳)多分、豊かな淡水や海水の生態系は様々な人々を支えるには有り余るほどだった(からであろう)。
・What the Spanish encountered beginning in 1513 was a vast, heterogeneous collection of tribes, among them the Ais, Alafay, Amacano, Apalachee, Bomto, Calusa, Chatot, Chine, Guale, Jororo, Luca, Mayaca, Mayaimi, Mocoso, Pacara, Pensacola, Pohoy,Surruque,Tequesta, Timicua, and Viscayno, to name but a few.
(訳)スペイン人が1513年の初め頃に遭遇したのは、ものすごく多くの雑多な部族の集まりであり、その中には、ほんの数例を挙げるとアイス族、アラファイ族、アカマノ族、アパラチー族、ボント族、カルーサ族、チャトト族、チネ族、グアレ族、ジョロロ族、ルカ族、マヤカ族、マヤイミ族、モコソ族、パカラ族、ペンサコーラ族、ポホイ族、サルクエ族、テケスタ族、ティミクア族、ビスカイノ族があった。

第1パラグラフ最終文の内容、「彼らーそして、それに続いた人々ーがヨーロッパの歴史を既にここで展開されていた歴史に持ち込んだのだ。」を復唱する文章構成になっています。

また、第1パラグラフ冒頭の1文で「部族が同じものだとまとめてみなされてしまっている」ことに関して言及がありましたが、それに反論する1文にもなっています。21個の部族も列挙するなんて狂気に満ちている部分を感じ取ってしまいます。笑(実際には1000以上の部族があるらしいですね。)

解答を書く

1°)京大の解答用紙のサイズでは、一行あたり25~30文字書くのが目安。(決して、全ての行を埋める必要はない)

→短すぎると採点官に対する心象が悪いが、自信がなくて変に間違った内容を書き加えるよりはマシ。(現代文でもそうである、決して内容を捏造してはならない。)

→逆にたくさんの書きたいことをミジンコみたいに小さい字で詰めて回答しても、採点側としては読む気が起こらない。(京大入試実戦模試の国語では文字を詰め込みすぎると採点されないらしい)12行あるといってもある程度は見切りをつけて書き始めるべきである。

→まとめると、常識の範囲内で解答欄を使用ましょう、ということ。

→また本問では12行もあるので具体的な要素も積極的に解答に含めていくべきである。(京大では字数制限が非常に緩く、該当箇所を全部書いてしまえば満点が取れる内容説明問題が多い。ここがコンパクトにまとめる能力を要求してくる東大との列記とした差である。)

2°)内容説明は、下線部自体への言及該当箇所の特定該当部分を和訳し、内容を適切な言葉を補ってつなげる、が基本的な方針。(本質的には和訳問題と変わらない。)

→該当箇所さえ特定できてしまえば、あとは和訳と変わらない!、と思えば話が早いです。そのためにも文章の流れは汲み取っておきましょう。

 ※特に本問ではこのことを徹底できていないと、論理性のない解答や、自分の主観的見解の混じった、一般的に見て通用しない解答を書くことになってしまいがちです。(大学生が論文を批評する場合ならば自分の好き勝手にやってもらって構わないですが、今は文章を読めてるかどうかを問う”入試問題”の範疇の中で議論しているので客観的な視点をもつことを忘れないようにしましょう。)

(1)下線部(a)の理由を、第2パラグラフおよび第4パラグラフの内容にもとづき、日本語でまとめなさい。(12行)

 まず下線部の直前に理由を表す語句であるBecause of thisがあるので、そこを解答に含めない理由がありません。thisの指す内容は具体的には前文であり、

次に下線部自体の意味を考えると、「沿岸考古学は居住のごく限られた記録だけしか解明してない」ということになりますが、これでは氷が溶けて海面上昇した→考古学にとって不都合となりやや論理に飛躍があるので、問題文の指示にある通り第4パラグラフを参照しましょう。(どう考えても、証拠が海に埋もれて見つからない的な内容を補えばよいことは分かるのですが、しっかりと本文からその内容を探しましょう。内容を自分で捏造してはいけません。)

海面上昇と関係がありそうな部分を探すと、第4パラグラフの第2、3文が該当することが分かります。すると、予測した通りに、海面上昇した→証拠が海に埋もれてしまう→考古学にとって不都合となり話がうまく繋がりました。

最後に第4パラグラフ第4文以降の内容をどこまで解答に含めるか、ということが問題になってくるのですが、第2パラグラフで言及されているのは有史以前の最初のインディアンたちの記録がないことだけであり海面上昇が起きたタイミングがはっきりと記述されていません。いっぽう第4パラグラフに書かれている農業が現れたのは紀元前700年と比較的遅いです。(この時代は有史以後です。)推測ですが、海面は上昇しきっているでしょうし、定住的なのでこの頃の記録は比較的簡単に出土するはずです。ゆえにこの時代の証拠が海に埋もれていることはなさそうです。(本文からは断定できません)なので、確実に海に埋もれているであろう有史以前の内容に関する部分だけを解答に書きましょう。やや難しいですがPaleolithic「旧石器時代の」という語に注目すれば(旧石器時代は先史時代に含めます)海産物が沿岸部のインディアンたちの生活を支えた、という内容を加えることができます。すると沿岸部のインディアンたちの生活を支えた→水面が上がれば沿岸部は真っ先に沈み出す→証拠が海に埋もれてしまう→考古学にとって不都合とここも内容がうまくつながります。

正直、第4パラグラフ第4文以降は軸の理由からは少し外れますので、解答に含めなくてもよいでしょうが、京大の採点基準は謎につつまれているので、確実な部分を書いておいて損はないでしょう。(特に今回はここを書かないと圧倒的に解答欄が余るので、「書いてくれよ」という京大からのメッセージかもしれません。)

後は、この軸となる理由に和訳した該当箇所の内容を肉付けし、適切な接続詞を補えば解答が完成します。

(解答)
有史以前の最初のインディアンたちが現在の北アメリカ大陸の東沿岸部に現れた時、世界の水の大部分が北半球の大部分にわたって広がっていた氷に閉じ込められていたために、水面の高さは現在よりもかなり低かった。それゆえ、フロリダの陸塊は現在の2倍もあり、乾燥しており大型動物が暮らしていた。そして、陸上の大型動物が絶滅した後は当時の人々は豊かな淡水、海水の生態系に支えられて沿岸部に住み、海産物を糧に暮らしていた。しかし、氷が溶けてしまい水面が上昇してしまった今では、当時の先住民たちの生活の様子を示す証拠は既に海の下に沈んでしまっており、見つけ出すことが困難になってしまっているから。

(2)下線部(b)の理由を、第3パラグラフの内容にもとづき、日本語でまとめなさい。(12行)

下線部(b)自体の意味は、「比較的簡単な生活に役立ったものが悪い考古学を助長してしまう。」ということですが、これだけではさっぱり何のことか分からないので第3パラグラフを読み進めていくと、初期のインディアンは移民的で非定住性の移動式の生活を送っていたことが読み取れます。分かりやすくするために内容を少し頭の中で補うと、あちこち移動する→1箇所に証拠が残り難い→考古学をする人にとっても明らかに不都合となります。加えて、食料が死活問題の初期のインディアンの人口が上下してしまうことも書かれており、人口が少ない→証拠が残りにくいとなり話が上手く繋がります。後は字数にゆとりがあるので、移動式の生活と対比されている農業のことなんかも解答に含めましょう。

初期のインディアンの移動的な生活(証拠が残りにくい)と農業を営む定住的な生活(一箇所に証拠が残りやすい)と対比すると明解でしょう。

あとは字数にゆとりがあるので書ける具体的要素は全て脳死でつめこむ方針で解答を作成すれば完成です。

(解答)
豊かな川、泉、たっぷりとある食物、かなり絶え間なくある水中や陸上の食糧源、そして比較的温暖な気候のおかげで初期のインディアンたちは150人くらいで小さな村に住みかなり移動的であり、1年の一部を沿岸部で過ごしまた一部はさらに内陸部で過ごし自分たちのエネルギー源を魚や狩りの獲物,運任せに得られる木の実やベリー類から得るためあまり安定した収穫が望めず、エネルギー源がどの程度手に入るかに応じて人口はまるで潮の満ち引きのように上下してしまい、後に始まる余剰分を貯蓄したり土器を作ったりしていた定住式の農耕を営む生活と比べて一箇所に証拠が残りにくい生活をしており、何千もの知られた有史以前の村の場所があるのはバージニアだけであるから。

あとがき

最後まで閲覧していただきありがとうございました。

 このブログを書き終える頃にはパソコンの「い」の予測変換のトップに「インディアン」が表示されています(笑)。論文チックで読んでてとても知見を与えてくれるストーリーでした。京大には来年以降、もう少し内容重視の問題を作ってほしいですね。(筆者の主張部分を問題として問わないとはいったいどうしたことだよ、と思いました。)

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大問2の解説もこちらの記事で行っています。合わせてご覧になってください!

2021年度の解説もこちらからご覧になることができます!

参考文献

京都大学令和2年度入学試験問題 外国語 英語

David Treuer on the Myth of an Edenic, Pre-Columbian ‘New’ World ‹ Literary Hub (lithub.com) 最終閲覧日時:2021 2/4

筆者の紹介

英語が嫌いという理由で朝のホームルームに英会話がある西京中学ではなく、洛北高校附属中学校を目指し、洛北高校附属中学校中高一貫)に補欠合格。模試は高1から全てA判定を出し、高2では駿台全国模試の英語・数学の偏差値80越え。高3では夏の京大模試で経済学部理系で4回連続1位を取り、秋は全て理学部で冊子掲載。英語に関しては駿台で竹岡先生の高3エクストラ英語αで学び、京大模試で全国15位以内を7回取る安定した成績を収めた。
(以下、全国15位以内の模試のみ成績を添付)

京大模試

第1回京大入試プレ 117/150,11位 (74.9)
第1回京大オープン 120/150,6位 (76.5)
第1回京大実戦 113/150,13位 (77.0)
第2回京大オープン 120/150,10位 (76.2)
第2回京大入試プレ 114/150,6位 (70.8)
第4回Z会京大テストゼミ 124/150,1位 (67.5)
第3回京大本番レベル模試 136/150,1位 (70.4)

その他模試

東工大入試実戦模試 113/150,5位 (82.5)
河合塾京大本番プレテスト 121/150 など

※素点と全国順位を記載,()内は偏差値

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  • この記事を書いた人
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Y. S.

洛北(中高一貫)→京都大学理学部3生|元駿台特待, EX生|予備校勤務 |個別指導講師(英数)|高3時, 京大模試英語で全国15位以内を1年間で7回達成|ポケモン全国3位(2013), 全国Top8(2017), 全国Top4(2018)|大学受験英語・数学や大学の学問紹介の記事を中心に書いています。

-大学受験, 英語
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