
目次
問題
(1)\(3^n=k^3+1\)をみたす正の整数の組\((k,n)\)をすべて求めよ。
(2)\(3^n=k^2-40\)をみたす正の整数の組\((k,n)\)をすべて求めよ。
(2010年 千葉大学・医学部)
方針
まずは整数問題の基本方針についておさらいしておきましょう。
整数問題の基本方針3つ
1. 約数・倍数に注目する(因数分解を伴うことが多い)
→式\(1\)つが式\(2\)つになるというとても強力な手段です。整数問題では文字変数に対して式の数が不足している場合がありますが、その不定性の解決策の1つがこの因数分解になるわけです。整数問題ではまず因数分解可能性を考慮してみるとよいでしょう。
特に、素数が登場する場合で因数分解できるのであれば(積の形)=(素数の累乗)と変形することが多いです。
因数分解をするために以下の②③を用いることもあれば、逆に①を用いて式を増やした後に②③を利用することもありますので、そこは臨機応変にいきましょう。
2. あまりに注目する(\(\mathrm{mod}2,3,4,5,7,8\)あたりを考えたり、素数が絡んだりすることが多い)
→特に、実験をすることが多いです。(近年の京都大学の入試問題を見てみましょう。)
「素数であることを示せ」「素数になる条件を求めよ」の類はたいてい、(ⅰ)実験により規則を発見して有名な\(\mathrm{mod}\)での論証 (ⅱ)背理法 (ⅲ)ユークリッドの互除法のいずれかで解決します。
3. とりうる範囲に注目する(分数型の不定方程式や関数の発散スピード)
→分母のほうの次数が高いとき、整数になる場合が限られることや、多項式関数、指数関数では代入する値が大きくなると関数の増加スピードが圧倒的に違うことを利用することが多いです。
→本問では
(1)については右辺が因数分解できる(←3乗と3乗の和の形)うえに、左辺が素因数分解した時に素因数が\(3\)しか出てこないのでそのまま積の形を作成して数式に起こして手順通り進んでいけば解けるはずです。
→先週の問題:【入試数学演習No.13】今週の整数問題No.2 解答・解説 | Sacramy の復習問題ですね。
念のため積の形を作成した後の絞り込みについての注意点を反復して強調しておきます。
(前回の復習)積の形を作成した後の絞り込み
1°)因数分解をして積の形を作成した後、いきなり候補となる組をすべて書き出すのではなく、積の部分の正負や大小関係、さらには偶奇の一致や相違などに注目してある程度は候補を絞ってから議論を進めていくべきである。
→候補をすべて調べていてはかなりの時間がかかってしまうことになってしまいます。特に(積の形)=\(10000\)だったとします。\(10000\)の約数なんてかなり多くありますし、そこに正負の可能性も考慮すると候補1つ1つを調べるのには心が折れそうになります。
2°)因数分解ができたならばとにかく式に起こすべきである。
3°)条件の弱い文字を消去した方が議論が進みやすい
(2)についてはまず因数分解可能性を検討してみるのですが、2乗の差を作ろうとしてもうまくいきません。
\(3^n=(k+2\sqrt{10})(k-2\sqrt{10})\)
として\(40\)を無理やり\(2\sqrt{10}\)の2乗とみて因数分解したとしても整数問題からかけ離れてしまい、的外れです。
次に、
\(k^2-3^n=40\)
としてみるのですが2乗の差の形にはなっていませんね。少し惜しいですが…。(←この惜しさに注目!)
そこで整数問題の基本方針の2つめ: あまりに注目するということを考えてみましょう。自分でいろいろ数値を代入して実験してみてください。すると何か規則が見えてこないでしょうか?慣れている方であれば実験せずとも、あまりの議論をするときに平方数を見ると以下の事実を用いるのがまず浮かんでくるんのではないでしょうか?
平方数とあまり その1-\(\mathrm{mod}3\)に注目
以下、法を\(3\)とする合同式を考える。一般の自然数\(n\)に対して、\(n\)を\(3\)で割ったあまりは\(0,1,2\)のいずれかだから、\(n \equiv 0,1,2\)なので\(n^2 \equiv 0,1,1\)である。
(∵\(2^2=4 \equiv 1\))
→このことから平方数を\(3\)で割ったあまりは\(0,1\)に限られることが分かります。
平方数とあまり その2-\(\mathrm{mod}4\)に注目
以下、法を\(4\)とする合同式を考える。一般の自然数\(n\)に対して、\(n \equiv 0,1,2,3\)なので\(n^2 \equiv 0,1,0,1\)である。
→このことから平方数を\(4\)で割ったあまりも\(0,1\)に限られることが分かります。
他にも\(\mathrm{mod}2,3,4,5,7,8\)あたりの剰余類を活用することがあります。その際も自分で適宜あまりが一体どのような値を取り得るか?ということに注目してみてください。その際、以下のような対応表を書いておくと、分かりやすいかもしれません!
また、どの剰余類で考えるかは、初めての方は①実験から剰余類を推測 ②トライ&エラーでとにかく色々な剰余類を試す のいずれかの手法になると思います。慣れている方は問題を見た段階でパッとどの剰余類が適切か判断できると思います。
→本問では、具体的には\(\mathrm{mod}4\)で議論してみると\(40 \equiv 0\)および\(k^2 \equiv 0,1\)であることから、\(3^n \equiv 0,1\)となります。ですがそもそも、\(3^n \equiv (-1)^n \)ですから\(\mathrm{mod}4\)としてあり得る値は\(1,-1\)の2種類しかありません。ということは辻褄を合わせるためには\(k^2 \equiv 1\)かつ\(3^n \equiv 1\)であることが必要です。
以上の議論によって\(k\)が奇数であること及び\(n\)が偶数であることが結論づけられます。\(n\)が偶数であることが分かれば\(k^2-3^n\)の部分で2乗の差の形を作れますので積の形に因数分解ができて、しかもその相手が\(40\)という約数がわかりやすい数なので一気に最後まで議論を進めることができそうです。
このように、整数問題の基本方針の1つめ:約数・倍数に注目するということが上手くいかなかったとしても、2つめ: あまりに注目するということによって解決できました。この2つの方針は本問のように、問題を解く過程で一方が片方を助ける形で登場することもしばしばあります。常に整数問題を違った角度から見れる準備をしておきましょう。それでは本問の模範解答に入っていきましょう!
解答
(1)解答
与式を因数分解すると、
\(3^n=(k+1)(k^2-k+1)\)
となるが、\(3^n>0,k+1>0,k^2+k+1>0\)であることと、右辺の2項の大小について\(k \geq2\)のとき、
k^2-k+1-(k+1) &= k^2-2k \\
&= k(k-2) \geq 0
\end{align}
となる。
これらのことから、整数\(i,j\)を用いることで、
k+1 &= 3^i \\
k^2-k+1 &= 3^j (0 \leq i \leq j \leq n, i+j=n)
\end{align}
とおける。この2式から条件の比較的弱い\(k\)を消去する。
第1式から\(k=3^i-1\)だからこれを第2式に代入することで、
\((3^i-1)^2-(3^i-1)+1=3^j\)
となり、これを整理すると、
\(3^{2i}-3^{i+1}+3=3^j\)
となる。ここで、\(i \geq 2\)と仮定すると、\(j \geq i \geq 2\)となるから、両辺の\(\mathrm{mod}9\)を考えることで、\((3^{2i}-3^{i+1} \equiv 0, 3^j \equiv 0\)となり、その差の\(3 \equiv 0\)となるがこれは不合理。(←\(3\)が\(9\)で割り切れるわけがない)
ゆえに\(i=0,1\)が必要なので順番に代入して調べよう。
(Case1)\(i=0\)のとき
\(k+1=3^i=3^0=1\)より、\(k=0\)となるがこれは\(k\)が正の整数であることに矛盾するから不合理。
(Case2)\(i=1\)のとき
\(k+1=3^i=3^1=3\)より、\(k=2\)であり第2式に代入することで\(j=1\)となり正しい。このとき最初の式に戻ることで\(n=2\)であることが分かる。
また、\(k=1\)のときは\(3^n=2\)となり\(n\)が正の整数であることに矛盾するから不合理。
ゆえに与式をみたす正の整数の組\((k,n)\)は\((2,2)\)である。(答え)
(2)解答
まず法を\(4\)とする合同式を考える。\(3^n \equiv (-1)^n\)だから、
\(3^n \equiv
\begin{cases}
-1 & \text{\(n\)が奇数のとき} \\
1 & \text{\(n\)が偶数のとき} \\
\end{cases}
\)
であることと、
\(k^2 \equiv
\begin{cases}
0 & \text{\(k\)が偶数のとき} \\
1 & \text{\(k\)が奇数のとき} \\
\end{cases}
\)
であること、さらに\(40\)が\(4\)の倍数であることから、\(k^2-3^n \equiv 0\)となるから以上のことから、\(k^2 \equiv 1\)かつ\(3^n \equiv 1\)であることが結論づけられる。
ここで\(n=2m\)(\(m\)は整数)とおいて与式を整理すると、
k^2-3^{2m} &=40 \\
(k+3^m)(k-3^m) &=40
\end{align}
となる。\(k+3^m>0, 40>0\)であることから\(k-3^m>0\)となり、また、左辺の2項の大小関係について\(k+3^m>k-3^m\)である。
さらに、\(k+3^m\)と\(k-3^m\)はその和が\(2k\)と偶数であることから2数の偶奇は一致する。以上のことと\(40\)の正の約数が\(1,2,4,5,8,10,20,40\)であることから、あり得る可能性としては、
\((k+3^m,k-3^m)=(20,2),(10,4)\)の2つである。それぞれの場合について、\((k,m)=(11,2),(7,1)\)となる。(当然だが\(k\)は奇数になる)\(n=2m\)だから、与式をみたす正の整数の組\((k,n)\)は\((11,4),(7,2)\)である。(答え)
類題
では最後に類題を紹介しておきましょう。本問と同じでいきなり因数分解ができないので何か工夫ができないか試行錯誤してみてください!
(類題)整数問題・因数分解とあまりの2つの視点から視る
\(m,n\)は自然数,、\(p\)は\(3\)以上の奇数であり、\(2^m=p^n+1\)を満たすとする。このとき、\(n=1\)であることを示せ。
(2009年11月 京大入試実戦模試・理系(乙)大問5)
あとがき
最後までご覧いただきありがとうございました。Twitter上で毎週金曜日の夜にハッシュタグ「今週の整数問題」をつけて問題を投稿しています。是非解いてみてください!解説記事も順次作成していきます。
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