
目次
問題
\(3^x+x^4=y!+2019\)をみたす正の整数の組\((x,y)\)を全て求めよ。
(2019年 China North MO, Problem1)
方針
まずは整数問題の基本方針についておさらいしておきましょう。
整数問題の基本方針3つ
1. 約数・倍数に注目する(因数分解を伴うことが多い)
→式\(1\)つが式\(2\)つになるというとても強力な手段です。整数問題では文字変数に対して式の数が不足している場合がありますが、その不定性の解決策の1つがこの因数分解になるわけです。整数問題ではまず因数分解可能性を考慮してみるとよいでしょう。
特に、素数が登場する場合で因数分解できるのであれば(積の形)=(素数の累乗)と変形することが多いです。
因数分解をするために以下の②③を用いることもあれば、逆に①を用いて式を増やした後に②③を利用することもありますので、そこは臨機応変にいきましょう。
2. あまりに注目する(\(\mathrm{mod}2,3,4,5,7,8\)あたりを考えたり、素数が絡んだりすることが多い)
→特に、実験をすることが多いです。(近年の京都大学の入試問題を見てみましょう。)
「素数であることを示せ」「素数になる条件を求めよ」の類はたいてい、(ⅰ)実験により規則を発見して有名な\(\mathrm{mod}\)での論証 (ⅱ)背理法 (ⅲ)ユークリッドの互除法のいずれかで解決します。
3. とりうる範囲に注目する(分数型の不定方程式や関数の発散スピード)
→分母のほうの次数が高いとき、整数になる場合が限られることや、多項式関数、指数関数では代入する値が大きくなると関数の増加スピードが圧倒的に違うことを利用することが多いです。
→本問では
因数分解しようとしても全然うまくいきませんし、範囲に注目してところで何も進まないのであまりに注目してみましょう。
まず与式中に\(3^x\)の項があるので\(\mathrm{mod}3,9\)あたりが良いのではないか?と検討をつけて進めてみます。
まず右辺についてですが、\(2019 \equiv 0 (\mathrm{mod}3)\)で\(2019 \equiv 3 (\mathrm{mod}9)\)です。つまり\(3\)の倍数ですが\(9\)の倍数ではありません。
\(y!\)についてですが、\(y\)がある程度大きくなっていくとこいつは素因数\(3\)を必然的に含みます。\(y=1,2\)は別扱いして\(y!\)が\(3\)の倍数の時のみをとりあえず議論してみましょう。
さらに言えば\(y \geq 6\)のとき\(y!\)は\(3,6\)に含まれている素因数\(3\)を\(2\)個持つので、\(y!\)は\(9\)の倍数であることになります。
ここでは\(y\)がある程度小さい時を例外のように一度除外して扱いましたが、これこそまさに整数問題で大事な感覚:「初めは大雑把に、最後に精密に」という感覚です。(黒板を消す時をイメージしてみてください。初めから全体を真綺麗にしようとするのではなく、初めは目立ったチョークの汚れだけを1回黒板消しで落とし、その次に集中的に細かい部分を消していく…という感覚です。伝わっていますか…?笑)
次に左辺ですが、右辺が\(2019\)よりも大きいので、そもそも\(x\)が\(1\)とかアホみたいに小さいとこの等式は成り立ちませんね。ですので、\(x\)はある程度大きく、\(3^x\)は素因数\(3\)を\(2\)個以上は持っているでしょう。
ということは右辺・左辺を見て残った\(x^4\)も\(3\)の倍数になります。特に\(3\)は素数なので\(x\)も\(3\)の倍数となります。ということは\(x^4\)は素因数\(3\)を少なくとも\(4\)個含み、\(9\)の倍数になります。
となると、両辺の\(\mathrm{mod}9\)を考えると\(2019\)だけが\(3\)余っているので不合理です。ということは\(y \geq 6\)としたのは誤りで、\(y\)の候補は\(1,2,3,4,5\)に絞ることができました。あとはこの残った部分を詰めていけばよいでしょう。
→今回はたまたま一発で有効な\(\mathrm{mod}\)を引き当てることができましたが、中々うまくいかないこともあります。ある程度慣れるまでは、問題を見たらとりあえず小さい値を代入して実験してみるのが妥当ではないでしょうか?実験してみることで何か規則性が見えてきて、どの\(\mathrm{mod}\)が有効かが分かることが多いです。(これこそ近年の京都大学の入試問題の整数問題を解いてみると養われる感覚でしょう。)
あるいは、「この\(\mathrm{mod}\)がダメだからじゃあ次はこの\(\mathrm{mod}\)でいこう!」みたいな解き方でもいいかもしれません。
いずれかは答えに辿り着きますので、とりあえずこのあたりは手当たり次第試してみるのが良いです。(そもそも大学入試問題という範疇で考えるのであれば解けない問題など出て来ませんからね…笑)
それでは今までの議論を答案に起こしてみましょう!答案では\(\mathrm{mod}3\)で進めていますが他の剰余類で考えても上手くいくと思います。各自、試してみてください!
解答
\(y \geq 6\)と仮定する。まず、\(2019=3 \cdot 673\)より\(3\)の倍数ではある。このとき\(9\)を法とする合同式を考えることで、
y! &\equiv 0 \\
2019 &\equiv 3
\end{align}
となる。また、\(x=1\)とすると明らかに左辺より右辺の方が大きいので不合理。よって\(x \geq 2\)としてもよく、\(3^x\)は素因数\(3\)を\(2\)個以上含むから、\(3^x \equiv 0\)となる。したがって残った部分:\(x^4\)も\(3\)の倍数となる。(∵\(9\)の倍数ならば\(3\)の倍数といえる。)
特に\(3\)は素数なのでこのとき\(x\)は\(3\)の倍数となる。\(x=3k\)(\(k\)は整数)とおくと、\(x^4=81k^4\)となるので\(x^4\)は\(9\)の倍数でもある。
ここで両辺の\(9\)で割ったあまりに注目すると、\(2019\)以外の項は\(0\)であるのに対し、この部分のみ\(3\)となっていることから不合理。
ゆえに\(y \geq 6\)となることはない。ということは\(y\)は\(5\)以下である。また、左辺については明らかに自然数\(x\)について単調増加である。左辺を\(f(x)\)とおき、右辺を\(g(y)\)とおいて、以下で手当たり次第代入していく。
\(f(1)=4, f(2)=25, f(3)=109, f(4)=337, f(5)=868, f(6)=2025, f(7)=4588, \cdots\)
\(g(1)=2020, g(2)=2021, g(3)=2025, g(4)=2043, g(5)=2139\)
より\((x,y)=(6,3)\)のみが適することが分かる。(答え)
注意
1°)階乗を含む整数問題はあまりに注目するとうまくいくことが多い。
→その際、階乗の部分が、階乗の中身が増えるにつれて、含まれるある素因数の個数が急激に増えていくことに注目して、ある程度大きな自然数では成立しないから範囲は絞れる、という論理展開をすることが多いです。
→どの剰余類で考えるかは実験または経験による感覚で判断する。
類題
では最後に類題を紹介しておきましょう。本問と同じで階乗を含んでいます。同じような視点で問題を眺めてみると良いでしょう!
(類題)整数問題・階乗を含む問題
\(n!+5\)が立方数となる自然数\(n\)をすべて求めよ。
(駿台 2021年 京大プレ理系数学 2日目 大問4)
(解答)
\(n!+5=m^3\)(\(m\)は自然数)
とおき、両辺について法を\(9\)とする合同式を考える。\(m\)と\(m^3\)の\(\mathrm{mod}9\)の対応表は以下のようになる。

この表から立方数を\(9\)で割ったあまりは\(0,1,8\)に限られることが分かる。
\(n \geq 6\)とすると\(n! \equiv 0\)より\(n!+5 \equiv 5\)となるがこれは上で見たあまりあの議論から立方数に成り得ない。よって残った\(n=1,2,3,4,5\)を調べれば十分であり、\(n=5\)のときのみ\(120+5=125=5^3\)となり適する。
よって求める自然数\(n\)は\(5\)のみである。(答え)
あとがき
最後までご覧いただきありがとうございました。Twitter上で毎週金曜日の夜にハッシュタグ「今週の整数問題」をつけて問題を投稿しています。是非解いてみてください!解説記事も順次作成していきます。
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前回の整数問題は以下の記事からご覧になることができます。