入試数学演習 大学受験 数学

【入試数学演習No.19】今週の整数問題No.8 解答・解説

目次

  1. 問題
  2. 方針
  3. 解答
  4. あとがき

問題

\(n\)を整数の定数とする。\(x,y\)に関する方程式

\(x^3+y^3-3xy=n\)

を満たす整数の組\((x,y)\)が無限個存在するのは\(n=-1\)のときに限ることを示せ。

(京大入試実戦模試 2007年11月 乙問題 大問3 平均:2.4/35

方針

まずは整数問題の基本方針についておさらいしておきましょう。

整数問題の基本方針3つ

1. 約数倍数に注目する(因数分解を伴うことが多い)
式\(1\)つが式\(2\)つになるというとても強力な手段です。整数問題では文字変数に対して式の数が不足している場合がありますが、その不定性の解決策の1つがこの因数分解になるわけです。整数問題ではまず因数分解可能性を考慮してみるとよいでしょう。
特に、素数が登場する場合で因数分解できるのであれば(積の形)=(素数の累乗)と変形することが多いです。
因数分解をするために以下の②③を用いることもあれば、逆に①を用いて式を増やした後に②③を利用することもありますので、そこは臨機応変にいきましょう。

2. あまりに注目する\(\mathrm{mod}2,3,4,5,7,8\)あたりを考えたり、素数が絡んだりすることが多い)
→特に、実験をすることが多いです。(近年の京都大学の入試問題を見てみましょう。)
「素数であることを示せ」「素数になる条件を求めよ」の類はたいてい、(ⅰ)実験により規則を発見して有名な\(\mathrm{mod}\)での論証 (ⅱ)背理法 (ⅲ)ユークリッドの互除法のいずれかで解決します。

3. とりうる範囲に注目する分数型の不定方程式や関数の発散スピード
分母のほうの次数が高いとき、整数になる場合が限られることや、多項式関数指数関数では代入する値が大きくなると関数の増加スピードが圧倒的に違うことを利用することが多いです。

→本問では

結論から言うと、以下のような因数分解の公式(←公式なのか?)を用いることで解決します。この公式を直ちに連想することができれば、解答は極めて容易になるでしょう。

・因数分解の公式
\(x^3+y^3+z^3-3xyz=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)\)
と因数分解することができる。

→本問はこの式で\(z=1\)としたものにあたります。\(n=-1\)のときは定数項を左辺に移項することで、

\begin{align}
x^3+y^3+1-3xy &= 0 \\
(x+y+1)(x^2+y^2+1-xy-x-y) &=0
\end{align}

と因数分解できます。一般の\(n\)に対しては右辺の\(n\)を無理やり\((n+1)-1\)とみなして、\(-1\)だけを左辺に移項して右辺に\(n+1\)を残せば無事、因数分解できます。

あるいは本問の場合だと、与式を\(x,y\)の対称式とみて\(x+y=a\),\(xy=b\)とおくと

\((x+y)^3-3xy(x+y)-3xy+1=0\)

を利用することで、

\begin{align}
a^3-3ab-3b+1 &= 0 \\
a^3+1-3b(a+1) &= 0 \\
(a+1)(a^2-a+1-3b) &=0
\end{align}

となり先程と同様に因数分解することができました。

京大実戦模試で出題されたとき、平均点が2.4/35点と著しく低かったのはこの因数分解の公式を思い付かない受験生が多かったためでしょう。しかし、この因数分解を知らなくとも(あるいは忘れていても)、この問題は打破することができます。いやむしろ、打破すべき問題でしょう。

そもそも、ある程度問題を観察した後、整数問題を解き始めた時にまず考えるべきことはやはり「因数分解可能性」です、何度も言いますが因数分解は式1つから少なくとも2つ以上の式を得る可能性がある非常に強力な手段です。

本問の場合だと、左辺には\(x,y\)と2文字あるので、\(y\)を固定して\(x\)の3次方程式ともみなせます。このとき、勘の良い方は「\(x=(yの1次式)\)を因数にもつのではないか」と予想するでしょう。この因数の予想に関しては小さな\(x,y\)を代入することによって実験をしてみても分かります。

まずは適当に\(x\)に\(-2,-1,0,1,2\)くらいを入れて\(n=-1\)のときの\(y\)解を確認してみると、それぞれ\(y=1,0,-1,-2,-3\)となるので、\(x\)を1つ決めると\(y=-x-1\)も解になる、つまり「左辺は\(x+y+1\)を因数としてもつのではないか?」と予想を立てて因数分解することができます。

では解答へどうぞ!\(n \neq -1\)のときに有限個しか解が存在しないことの議論がやや難しいかもしれません。

解答

与式を因数分解すると、

\begin{align}
x^3+y^3+1-3xy &= n+1 \\
(x+y+1)(x^2+y^2+1-xy-x-y) &=n+1
\end{align}

となる。

①\(n=-1\)のとき

\((x+y+1)(x^2+y^2+1-xy-x-y) =0\)となるから、この解は、\(x+y+1=0\)または\(x^2+y^2+1-xy-x-y=0\)である。

特に前者に関しては整数\(x\)を1つ決めた時に\(y=-x-1\)とすると整数解を構成することができ、\((x,y)=(k,-k-1)\)(\(k\)は整数)は解となるから、与式を満たす整数の組は無限個存在する。

②\(n \neq -1\)のとき

\((x+y+1)(x^2+y^2+1-xy-x-y) =n+1\)であり、\(x+y+1,x^2+y^2+1-xy-x-y\)はともに整数である。\(n+1\)は整数だから、その約数は正のもの、負のものを含めても高々有限個である。

実際、\(n+1\)の素因数分解を考えたとき、素因数\(p_1, \cdots ,p_m\)の指数を\(q_1, \cdots ,q_m\)とすることで、

\(n+1={p_1}^{q_1} \cdot \cdots \cdot {p_m}^{q_m}\)

となっているとき、約数の個数は正のものは\((q_1+1) \cdot \cdots \cdot (q_m+1)\)個とやはり有限個である。負のものはこれにマイナスをつけるだけなのでこれと同じだけある。

\(N=2(q_1+1) \cdot \cdots \cdot (q_m+1)\)

となすると、\(n+1\)の約数は正負のものを含めて\(N\)個あり、余方程式の解は\(n+1\)の約数\(a_i\)(\(i=1, \cdots , N\))を用いて

\begin{align}
x+y+1 &= a_i \\
x^2+y^2+1-xy-x-y &= \frac{n+1}{a_i}
\end{align}

と書くことができる。この連立方程式から\(y\)を消去すると、\(x\)の2次方程式、

\(x^2+(a_i-x-1)^2+1-x(a_i-x-1)-x-(a_i-x-1)= \displaystyle \frac{n+1}{a_i}\)

を得る。(\(x\)の2次の係数が\(3\)だから2次方程式である。)

2次方程式の実数解は高々2個であり、そのことから2次方程式の整数解も高々2個であることが従う。ゆえに、もとの方程式の解は高々\(2 \cdot N\)個であることが結論付けられ、余方程式の解は有限個である。

ゆえに、余方程式の整数の組\((x,y)\)が無限個存在するのは\(n=-1\)のときに限る。(証明おわり)

注意

1°)「~となる条件」「~の必要十分条件」という文言は、命題\(\mathrm{P}\)と命題\(\mathrm{Q}\)の同値性を示せ、ということを言っている。2つの命題間の同値性を示すには以下の手法が典型的である。

1. 片方の命題を同値変形していった結果もう片方の命題と同値になることを述べる。

2. 片方が成立するならばもう片方も成立することを述べる。すなわち、「\(\mathrm{P}\)ならば\(\mathrm{Q}\)」と「\(\mathrm{Q}\)ならば\(\mathrm{P}\)」の両方が成立することを述べる。
→本問では命題\(\mathrm{P}\)を「与方程式の解が無限個存在する」、命題\(\mathrm{Q}\)を「\(n=-1\)である」とおくと、
解答の①の部分:「\(\mathrm{Q}\)ならば\(\mathrm{P}\)」
解答の②の部分:「\(\mathrm{P}\)ならば\(\mathrm{Q}\)」の対偶、すなわち、「\(\mathrm{Q}\)でないならば\(\mathrm{P}\)」でない
ということを述べていることになる。

2°)自然数の正の約数の個数に関しては以下の関係式が成立する:
本問のように\(n={p_1}^{q_1} \cdot \cdots \cdot {p_m}^{q_m}\)と素因数分解できているとき、\(n\)の正の約数の個数は\((q_1+1) \cdot \cdots \cdot (q_m+1)\)個である。
→実際、\(n\)の正の約数の候補は\({p_1}^{r_1} \cdot \cdots \cdot {p_m}^{r_m}\)(各\(i\)に対して\(0 \leq r_1 \leq q_i\))と書けるので、各素因数\(p_i\)の指数\(r_i\)が\(q_i+1\)通り選べることになるから、結局\(n\)の正の約数の個数は\((q_1+1) \cdot \cdots \cdot (q_m+1)\)個ある。

類題

本問とほぼ同じ問題です。Twitterで自分がこの問題を出題する2日前にTwitterでフォロワーさんが出題されていた問題になります。

(類題)特殊な因数分解
(1)等式\(x^3+3xy+y^3=1\)を満たす整数\(x,y\)の組\((x,y)\)は無限に存在することを示せ。
(2)(1)の\((x,y)\)のうち、\(x,y\)がともに負であるものは\((x,y)=(-1,-1)\)に限られることを示せ。
(作問:mathmouthさん(@mathmouth1))

(解答)

順次掲載します。

あとがき

最後までご覧いただきありがとうございました。Twitter上で毎週金曜日の夜にハッシュタグ「今週の整数問題」をつけて問題を投稿しています。是非解いてみてください!解説記事も順次作成していきます。

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前回の整数問題は以下の記事からご覧になることができます。

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Yuya Sakurada

洛北(中高一貫)→京都大学理学部2回生|元駿台特待, EX生|予備校勤務 |個別指導講師(英数)|高3時, 京大模試英語で全国15位以内を1年間で7回達成|ポケモン全国3位(2013), 全国Top8(2017), 全国Top4(2018)|大学受験英語・数学や大学の学問紹介の記事を中心に書いています。

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