入試数学演習 大学受験 数学

【入試数学演習No.21】京都大学理系数学2022 大問1 解答・解説

目次

  1. 問題
  2. 方針
  3. 解答
  4. あとがき

問題

【三角関数・指数対数】
\(5.4 <\log_4{2022}< 5.5\)であることを示せ。ただし, \(0.301 < \log_{10}{2} < 0.3011\)であることは用いてよい。

全問題はこちらから→【過去問解説】京都大学 2022年度 理系数学 -分析から解答の方針まで徹底解説- | Sacramy

方針

まず、基本事項として、よく用いる対数の計算の議論を復習しておきましょう。

【対数関数の性質1 -底の変換公式-】
\(a, b, c\)は正の数で, どの数も\(1\)ではないとする。このとき、以下の等式が成立する。
\(\displaystyle \log_{a}{b}= \frac{\log_{c}{b}}{\log_{c}{a}}\)

特に, \(c=b\)とすると,
\(\displaystyle \log_{a}{b}= \frac{1}{\log_{b}{a}}\)
と分母・分子と底・真数が逆転する。

→対数計算ではしばしば底を揃えれやる必要性が生じます。その理由としては①底が揃っていると対数の和・差は積・商にまとめられる ②底が揃っていると対数関数の単調性から不等式評価が可能になる、という2点があります。その際にこの底の変換公式を使用するのでしたね。

【対数関数の性質2 -対数関数の単調性-】
1対数関数\(y= \log_{a}{x}\)の定義域は正の数全体, 値域は実数全体である。
2-1\(a>1\)のとき, \(0<p<q \Leftrightarrow \log_{a}{p} < \log_{a}{q}\)(単調増加)
2-2\(0<a<1\)のとき, \(0<p<q \Leftrightarrow \log_{a}{p} > \log_{a}{q}\)(単調減少)
となる。

→この単調性があるおかげで、我々は数学ⅡBで桁数や最上位の数の求値が可能になっているわけですね。

→本問では

一見単純そうな問題ですが、意外と苦戦を強いられる問題になっています。まず、底が\(4\)だったり\(10\)だったりバラバラで扱いにくいので、底の変換公式を用いて底を統一することから始めましょう。指数・対数の問題の基本です。すると、

\begin{align}
\log_{4}{2022} &= \displaystyle \frac{\log_{10}{2022}}{\log_{10}{4}} \\
&= \frac{\log_{10}{(2 \cdot 1011)}}{2 \log_{10}{2}} \\
&= \frac{ \log_{10}{2}+ \log_{10}{1011}}{2 \log_{10}{2}} \\
&= \frac{1}{2}(1 + \frac{\log_{10}{1011}}{\log_{10}{2}})
\end{align}

となります。この部分のうち、\(\log_{10}{2}\)に関しては問題文の条件から評価可能ですので、議論すべき部分は\(\log_{10}{1011}\)をどうするか、ということになりそうです。

他に結論から同値変形していった場合など別のところから問題を攻めていった場合でも、本質的にするべき議論は\(\log_{10}{1011}\)の評価になります。

さて、この部分をどう処理すればよいでしょうか?この類の問題は経験がないと難しいかもしれませんが、ポイントとしては「直接計算できない、あるいはすることが難しい値を、計算可能な値で不等式評価する」ことです。何のことを言っているかというと、数学Ⅲの定積分ち不等式の分野で値が分からない無限級数の値を定積分で面積評価して求めることがありましたね。それと同じ原理です。つまり、本問ではよく分からない\(\log_{10}{1011}\)という値をうまくいじって計算可能な(つまり我々が大小を簡単に論じれるような)値に帰着させてやればいいのです。

ここで考えるべきこととしては①\(1011\)だと計算が難しい原因は何か逆にどうすれば計算がうまくいくか の2点になります。②のほうをまず考えてみるために、計算がうまくいく場合を想像してみましょう。\(\log_{10}{10^n}\)(\(n\)は自然数)の場合とか、あるいは問題文に\(\log_{10}{2}\)の大体の値が書いてあるので、\(\log_{10}{2^n}\)の場合であれば計算が進んでくれそうです。また、①のほうを考えてみると、\(1011\)という数がそのどちらにも当てはまっていない、ということになります。ゆえにこのバリアを解決するためには、「\(1011\)という数付近の\(10^n, 2^n\)の組み合わせで表される数を考えてみて、不等式で挟む」ことになりそうです。具体的に言うと、

\(3= \log_{10}{10^3} < \log_{10}{1011} < \log_{10}{2^{10}} = 10 \log_{10}{2}\)

としてやるとうまく計算できそうです。後は計算してやればOKです。以下で類題を紹介しておきます。

(類題)不等式評価 -ざっくり評価する-
\(\displaystyle \frac{10^{210}}{10^{10}+3}\)の整数部分のけた数と, \(1\)の位の数字を求めよ。ただし\(3^{21}=10460353203\)を用いてよい。
(89 東京大学理系前期)

(解答)
順次掲載します。

では解答のほうに入っていきましょう!

解答

まず、底の変換公式を適用することで、

\begin{align}
\log_{4}{2022} &= \displaystyle \frac{\log_{10}{2022}}{\log_{10}{4}} \\
&= \frac{\log_{10}{(2 \cdot 1011)}}{2 \log_{10}{2}} \\
&= \frac{ \log_{10}{2}+ \log_{10}{1011}}{2 \log_{10}{2}} \\
&= \frac{1}{2}(1 + \frac{\log_{10}{1011}}{\log_{10}{2}})
\end{align}

となる。次に、\(1011<1024=2^{10}\)であることから、対数関数の単調性を考えることで、

\begin{align}
\displaystyle \frac{\log_{10}{1011}}{\log_{10}{2}} &< \frac{\log_{10}{1024}}{\log_{10}{2}} \\
&< 10 \frac{\log_{10}{2}}{\log_{10}{2}} \\
&< 10
\end{align}

となる。ゆえに、

\begin{align}
\log_4{2022} &< \frac{1}{2}(1+10) \\
&= 5.5
\end{align}

を得る。よって右側の不等式が証明された。次に、\(10^3= 1000 <1011\)であるから、再び対数関数の単調性を考えることで、

\begin{align}
\frac{\log_{10}{1011}}{\log_{10}{2}} &> \frac{\log_{10}{1000}}{\log_{10}{2}} \\
&= 3 \frac{1}{\log_{10}{2}} \\
&> 3 \frac{1}{0.3011} \\
&= 9.96 \ldots \\
\end{align}

となる。ゆえに、

\begin{align}
\log_4{2022} &> \frac{1}{2}(1+9.96) \\
&= 5.48 \\
&> 5.4
\end{align}

を得る。よって左側の不等式が証明された。

よって、\(5.4 <\log_4{2022}< 5.5\)を得る。(証明おわり)

あとがき

過去問学習をする上で役に立つ参考書を紹介しておきます。いずれも最新版のものになります。ぜひ手に取って演習を積んでください!

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2022年度理系数学の問題一覧はこちらから見ることができます。

注意

・京都大学の入試問題の掲載にあたり、著作権法上の権利を損ねないよう、試験問題等の利用について | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)に従って記事作成後一か月以内に「京都大学入試問題等利用報告書」を提出しています。

・以上6問はすべて京都大学2022年度理系数学の問題です。

  • この記事を書いた人
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Y. S.

洛北(中高一貫)→京都大学理学部3生|元駿台特待, EX生|予備校勤務 |個別指導講師(英数)|高3時, 京大模試英語で全国15位以内を1年間で7回達成|ポケモン全国3位(2013), 全国Top8(2017), 全国Top4(2018)|大学受験英語・数学や大学の学問紹介の記事を中心に書いています。

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