
目次
問題
【立体図形, 空間ベクトル】
四面体\(\mathrm{OABC}\)が
\(\mathrm{OA}=4,\)
\(\mathrm{OB}=\mathrm{AB}=\mathrm{BC}=3,\)
\(\mathrm{OC}=\mathrm{AC}=2 \sqrt{3},\)
を満たしているとする。\(\mathrm{P}\)を辺\(\mathrm{BC}\)上の点とし, △\(\mathrm{OAP}\)の重心を\(\mathrm{G}\)とする。このとき, 次の各問に答えよ。
(1)\(\vec{\mathrm{PG}} \perp \vec{\mathrm{OA}}\)を示せ。
(2)\(\mathrm{P}\)が辺\(\mathrm{BC}\)上を動くとき, \(\mathrm{PG}\)の最小値を求めよ。
全問題はこちらから→【過去問解説】京都大学 2022年度 理系数学 -分析から解答の方針まで徹底解説- | Sacramy
方針
まずは立体図形問題の解法について確認しておきます。
立体図形問題の基本方針3つ
まず、どの解法にも共通することですが、立体図形は適切な平面で切断して、3次元から2次元に落として議論することが非常に大切です。また、以下に示す1~3の解法は別々に用いることよりも組み合わせて用いることのほうが多いです。
1. 空間座標
→万能がゆえに、計算も煩雑になりがちなのが座標です。直線、平面、曲面、球…など何でも座標によって方程式・不等式で記述できてしまいます。2. 空間ベクトルと合わせて用いることが多いです。(例えば、平面と直線の交点を求めるために用いる)直角や有名角が多いなど、座標設定がしやすい場合は積極的に用いていくといいです。半面、角度の指定が全くない四面体など座標設定が困難な問題では避けましょう。
2. 空間ベクトル
→こちらも1. 座標と同様に頻出です。交点(直線どうし、あるいは直線と平面の交わりの点)や内分点の情報に強いのが特徴です。また、角度や辺の長さを扱うのにもある程度強いです。角度の指定が全くない四面体など、交点や内分点の情報で攻めるタイプの問題でよく用いる道具になります。また、成分表示することで1. 座標とセットで扱うことも多いです。この手法で考える際は、とにかく始点を揃えることを意識しましょう。(ベクトルの基本です)
3. 初等幾何
→初等幾何は閃きが必要な問題が多く、平面図形の問題では汎用性の観点からなるべく忌避してきましたが、立体図形でも同様です。ただ、角の2等分線くらいの初歩レベルの条件にはすぐに気付けるようにしておきましょう。また、初等幾何の知識の中でも1. 2.によく用いるものとしては、平面図形の基礎知識に加え、3垂線の定理などがあります。
→本問では
(1)条件が辺の長さのみであり、座標で扱うには少し難しそうです。それよりかは、交点や内分点の条件が多いため、空間ベクトルで考えていったほうが良さそうです。具体的には、点\(\mathrm{P}, \mathrm{G}\)あたりの情報を記述する際に交点や内分点の情報を考えるとよいでしょう。
また、初等幾何から着想を得て、3垂線の定理から攻める方法もあるので、別解で紹介しておきます。
(2)こちらも(1)同様に空間ベクトルで議論を進めていくとよいでしょう。値域の問題が登場していますが、変数が点\(\mathrm{P}\)の分で1つしかないので、1変数関数になり、2次関数または微分で処理できてしまいます。
(1)(2)ともにチャート式の例題・練習問題に載っていてもおかしくはないレベルですので、確実に計算を合わせるようにしましょう。2022年度の京大理系数学のセットの中では確実に満点を取っておきたい大問です。
計算ミスが発生しやすいポイントとしては、\(\mathrm{PG}\)の長さを変数を用いて表すところだと思います。このようなときは、極端な値を代入して検算する、ことを意識してみましょう。本問だと、\(\mathrm{P}=\mathrm{B}, \mathrm{C}\)のときどうなるだろう?と考察してみるといいと思います。
では解答のほうに入っていきましょう!
解答
(1)

\( \vec{\mathrm{OA}}=\vec{a}, \vec{\mathrm{OB}}=\vec{b}, \vec{\mathrm{OC}}=\vec{c},\)
とおく。題意の条件から、
\(|\vec{a}|=4, |\vec{b}|=3, |\vec{a}|=2 \sqrt{3}\)
\(|\vec{b} - \vec{a}|=3, |\vec{c} - \vec{b}|=3, |\vec{c} - \vec{a}|=2 \sqrt{3}\)
である。後半3式の両辺を2乗することで、各々のベクトル同士の内積を求める。
\({|\vec{b}|}^2 + {|\vec{a}|}^2 -2 \vec{b} \cdot \vec{a} = 9\)
\( {|\vec{c}|}^2 + {|\vec{b}|}^2 -2 \vec{c} \cdot \vec{b} = 12 \)
\(|\vec{c}|^2 + |\vec{b}|^2 -2 \vec{c} \cdot \vec{a} = 9\)
前半3式から、\(|\vec{a}|^2=16, |\vec{b}|^2=9, |\vec{a}|^2=12\)であるから代入することで、
\(\vec{a} \cdot \vec{b}=8\)
\(\vec{b} \cdot \vec{c}=6\)
\(\vec{c} \cdot \vec{a}=8\)
となる。次に、点\(\mathrm{P}\)は線分\(\mathrm{BC}\)上にあるから、実数\(t\)\((0 \leq t \leq 1)\)を用いて、
\(\vec{\mathrm{OP}}=(1-t) \vec{b}+t \vec{c}\)
と書ける。また、点\(\mathrm{G}\)が三角形\(\mathrm{OAP}\)の重心であることから、
\vec{\mathrm{OG}} &= \frac{1}{3}(\vec{\mathrm{OO}}+\vec{\mathrm{OA}}+\vec{\mathrm{OP}}) \\
&= \frac{1}{3}(\vec{a}+ \vec{\mathrm{OP}})
\end{align}
と書ける。ゆえに、
\vec{\mathrm{PG}} &= \vec{\mathrm{OG}} - \vec{\mathrm{OP}} \\
&= \frac{1}{3} \vec{a} - \frac{2}{3} \vec{\mathrm{OP}} \\
&= \frac{1}{3} \vec{a} - \frac{2}{3}(1-t) \vec{b} -\frac{2}{3} t \vec{c}
\end{align}
となる。よって、内積を計算すると、
\vec{\mathrm{PG}} \cdot \vec{\mathrm{OA}} &= (\frac{1}{3} \vec{a} - \frac{2}{3}(1-t) \vec{b} -\frac{2}{3} t \vec{c}) \cdot \vec{a} \\
&= \frac{1}{3} |\vec{a}|^2 - \frac{2}{3}(1-t) \vec{a} \cdot \vec{b} -\frac{2}{3} t \vec{c} \vec{a} \\
&= \frac{1}{3} 16 - \frac{1}{3}8(1-t) -\frac{2}{3}8t \\
&= \frac{1}{3}(16-16+16t-16t) \\
&= 0
\end{align}
となるから、\(\vec{\mathrm{PG}} \perp \vec{\mathrm{OA}}\)となる。(証明おわり)
(2)
|\vec{\mathrm{PG}}|^2 &= |\frac{1}{3} \vec{a} - \frac{2}{3}(1-t) \vec{b} -\frac{2}{3} t \vec{c}|^2 \\
&= \frac{1}{9}|\vec{a}|^2+\frac{4}{9}(1-t)^|\vec{b}|^2+\frac{4}{9}t^2|\vec{c}|^2 - \frac{4}{9}(1-t) \vec{a} \cdot \vec{b} +\frac{8}{9}t(1-t) \vec{b} \cdot \vec{c} -\frac{4}{9} \vec{a} \cdot \vec{c} \\
&= \frac{1}{9}(16+36-72t+36t^2+48t^2-32+32t+48t-48t^2-32t) \\
&= \frac{1}{9}(36t^2-24t+20) \\
&= \frac{4}{9}(9(t-\frac{1}{3})^2+5)
\end{align}
この関数は下に凸の2次関数であり、\(t= \displaystyle \frac{1}{3}\)を軸にもつ。\(0 \leq t \leq 1\)であるから、この関数は\(t= \displaystyle \frac{1}{3}\)で最小値を取り、\(|\vec{\mathrm{PG}}|^2 = \displaystyle \frac{16}{9}\)となる。
ゆえに、\(\mathrm{PG}\)の最小値は\(\displaystyle \frac{4}{3}\)である。(答え)
(1)の別解

\(\mathrm{OB}= \mathrm{AB}, \mathrm{OC}= \mathrm{AC}\)であるから、三角形\(\mathrm{OAB}\)と三角形\(\mathrm{OAC}\)はそれぞれ二等辺三角形である。ゆえに、辺\(\mathrm{OA}\)の中点を\(\mathrm{M}\)とすると、\(\mathrm{BM} \perp \mathrm{OA}, \mathrm{CM} \perp \mathrm{OA}\)となる。ゆえに、\(\mathrm{OA}\)は平面\(\mathrm{BCM}\)の平行ではない2直線と垂直であるから、\(平面\mathrm{BCM} \perp \mathrm{OA}\)となる。
ここで、点\(\mathrm{G}\)は三角形\(\mathrm{OAP}\)の重心であるから、線分\(\mathrm{PM}\)上に存在する。点\(\mathrm{P}\)も平面\(\mathrm{BCM}\)上に存在するから、点\(\mathrm{G}\)も平面\(\mathrm{BCM}\)上に存在する。よって、直線\(\mathrm{PG}\)は\(平面\mathrm{BCM}\)上に存在する。\(平面\mathrm{BCM} \perp \mathrm{OA}\)であるから、直線\(\mathrm{OA}\)は平面\(\mathrm{BCM}\)上の任意の直線と垂直である。
ゆえに、\(\vec{\mathrm{PG}} \perp \vec{\mathrm{OA}}\)となる。(証明おわり)
あとがき
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注意
・京都大学の入試問題の掲載にあたり、著作権法上の権利を損ねないよう、試験問題等の利用について | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)に従って記事作成後一か月以内に「京都大学入試問題等利用報告書」を提出しています。
・以上6問はすべて京都大学2022年度理系数学の問題です。