入試数学演習 大学受験 数学

【入試数学演習No.5】2項係数の特殊な和を求める -恒等式の利用-

目次

  1. 問題
  2. 方針
  3. 解答
  4. あとがき

問題

(問題)

\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} \)を求め,和を\(n\)の式で表せ. また,それを\(10\)で割ったときの余りは,\(n\)の値にかかわらず\(2\)であることを証明せよ.

(東工大入試実戦模試 2015年10月, 誘導を一部削除.)

方針

以前紹介した、\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_n \mathrm{C} _k \)の和と形式がとても似ています。この和は、【保存版】2項係数の関係式の証明 ②応用編 -恒等式の利用- | Sacramyで紹介したように、\((x+1)^n \)を2項展開して得られる\(x\)についての恒等式を利用して求めることができました。ですので、今回の和も、「恒等式を利用して求めるのではないか?」といったところが最初の着眼点になってきます。ですが、今回の和は\(4\)個おきの2項係数の和を求める問題になっています。ここで先ほどの恒等式に\(x=-1\)を代入することで次の等式が得られたことを思い出してみましょう:

\(0 = {}_n \mathrm{C} _0 - {}_n \mathrm{C} _1 + {}_n \mathrm{C} _2 + \cdots + (-1)^n {}_n \mathrm{C} _n \tag1 \)

つまり、2項係数をプラスマイナスを交互に足してあげると、その結果は相殺してちょうど\(0\)になることが分かりました。(3)式を分かり易くすると、

\(\displaystyle \sum_{k \in even}^{} {}_n \mathrm{C} _k = \sum_{k \in odd}^{} {}_n \mathrm{C} _k \tag2 \)

となります。

このようにすることで、\(2\)個おきの2項係数の和を求めることができました。これは\((-1)^2 =1\)という等式が成り立つことに起因しています。というのも\(x=-1\)を代入すると、2項係数にかかる係数に、\(1\)と\(-1\)が交互につまり\(2\)個セットで現れているからです。

すると、この解法と同じようにして\(4\)個おきの2項係数の和を求めるには、\(\alpha ^4 =1\)なる\(\alpha \)を利用してやれば、2項係数にかかる係数が\(4\)個周期で変動することになってうまくいくであろう、と推察できます。このような\(\alpha \)は\(1\)の\(4\)乗根であり、しかも\(\alpha, \alpha ^2, \alpha ^3, \alpha ^4\)が互いに異なるものを持ってこないとちょうど\(4\)個周期になってくれないので、\(1\)の\(4\)乗根の中でも\(1\)や\(-1\)とかではダメで、\(i\)や\(-i\)\(i\)は虚数単位とします。を持ってくるとよいでしょう。(以下の解説では簡略化のため\(i\)のほうを採用して議論を進めていますが、\(-i\)のほうを採用してもうまくいきます。)

では実際に解答のほうを進めていきましょう。ここまでで方針が立ったので、自分で解きたい方はここで一時停止してください。

解答

(前半)

まず、\(x\)についての恒等式:

\((x+1)^{4n} = {}_{4n} \mathrm{C} _0 + {}_{4n} \mathrm{C} _1 x + {}_{4n} \mathrm{C} _2 x^2 + \cdots + {}_{4n} \mathrm{C} _{4n} x^{4n} \tag1\)

を考える。この式に\(x=i\)(\(i\)は虚数単位)を代入する。

\(m,k\)を\(0\)以上の整数としたとき、\(i^m\)の値は以下のようになる:

\(m=4k\)のとき:\(1\)
\(m=4k+1\)のとき:\(i\)
\(m=4k+2\)のとき:\(-1\)
\(m=4k+3\)のとき:\(-i\)

このことを利用して、先ほどの式に\(x=i\)(\(i\)は虚数単位)を代入して得られる式を整数\(m\)の\(4\)の剰余類で整理して、シグマ記号を使ってまとめると、以下の等式を得る:

\begin{align}
(1+i)^{4n} &= \displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} \cdot 1 + \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+1} \cdot i + \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+2} \cdot (-1) + \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+3} \cdot (-i) \\
&= \displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} - \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+2} + (\displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+1} - \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+3})i \tag2
\end{align}

また、\((1+i)^{4n}\)を極形式にして考えることで、ド・モアブルの定理により、

\begin{align}
(1+i)^{4n} &= ( \sqrt{2}( \cos{ \frac{\pi}{4}}+ \sin{ \frac{ \pi}{4}}))^{4n} \\
&= (\sqrt{2})^{4n}( \cos{ \pi}+ \sin{ \pi})^n \\
&= 4^n \cdot (-1)^n \\
&= (-4)^n \tag3
\end{align}

(2)式と(3)式の実部・虚部を比較することで、

\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} - \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+2} = (-4)^n \tag4\)

を得る。

次に、

\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} + \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+2} = \displaystyle \sum_{k=0}^{2n} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k} \tag5\)

であるが、(1)式に\(x=1\)と\(x=-1\)を代入すると、

\((1+1)^{4n} = \displaystyle \sum_{k=0}^{2n} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k} + \displaystyle \sum_{k=0}^{2n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k+1} \tag6 \)

\((1-1)^{4n} = \displaystyle \sum_{k=0}^{2n} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k} - \displaystyle \sum_{k=0}^{2n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k+1} \tag7 \)

となるので(6)式と(7)式を辺々加えて、

\(2^{4n} + 0 = 2 \cdot \displaystyle \sum_{k=0}^{2n} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k} \tag8 \)

(8)式を\(2\)で割ることによって、

\(2^{4n-1} = \displaystyle \sum_{k=0}^{2n} {}_{4n} \mathrm{C} _{2k} \tag9 \)

を得る。

また、(5)式、(9)式より、

\(\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} + \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k+2} = 2^{4n-1} \tag{10} \)

を得る。

よって、(4)式、(10)式を辺々加えて、両辺を\(2\)で割ることにより、

\begin{align}
\displaystyle \sum_{k=0}^{n} {}_{4n} \mathrm{C} _{4k} &= \frac{1}{2}((-4)^n + 2^{4n-1}) \\
&= -2 \cdot (-4)^{n-1} + 4 \cdot 16^{n-1} \tag{11}
\end{align}

となる。(前半の答え)

(後半)

(11)式を\(10\)で割ったあまりが\(n\)によらず\(2\)であることを示せばよい。

\(a_n =-2 \cdot (-4)^{n-1} + 4 \cdot 16^{n-1}\)とおく。

後半の解答1(直接証明する)

まず、\(a_n = 2(-(-4)^{n-1} + 2 \cdot 16^{n-1})\)より、かっこ内部が整数であることから、\(a_n\)は\(2\)の倍数である。

次に、\(a_n\)の\(5\)の剰余類で考える。以下、\(\mathrm{mod} 5\)とする。

\(-4 \equiv 1\)
\(16 \equiv 1\)

より、

\begin{align}
a_n & \equiv -2 \cdot (-4)^{n-1} + 4 \cdot 16^{n-1} \\
& \equiv -2 \cdot 1^{n-1} + 4 \cdot 1^{n-1} \\
& \equiv -2 + 4 \\
& \equiv 2
\end{align}

である。以上のことにより、\(a_n\)は\(2\)の倍数であり、\(5\)で割って\(2\)余るので、\(a_n\)を\(10\)で割ったときの余りは、\(n\)の値にかかわらず\(2\)である。(証明おわり)

後半の解答2(数学的帰納法)

数学的帰納法で証明する。

(ⅰ)\(n=1\)のとき

\(a_1 =2\)より主張は正しい。

(ⅱ)ある自然数\(n\)で成立するとき(\(n \geq 1\))

\(a_n = -2 \cdot (-4)^{n-1} + 4 \cdot 16^{n-1} = 10N +2\)(\(N\)は整数)とおける。

この式から、\(-2 \cdot (-4)^{n-1} = 10N + 2 -4 \cdot 16^{n-1}\)を得るので、

\begin{align}
a_{n+1} &= -2 \cdot (-4)^n + 4 \cdot 16^n \\
&= -4(10N +2 -4 \cdot 16^{n-1}) + 4 \cdot 16^n \\
&= -40N - 8 + 16^n + 4 \cdot 16^n \\
&= -40N -10 + 2 + 5 \cdot 2 \cdot 8 \cdot 16^{n-1} \\
&= 10(-4N + 8 \cdot 16^{n-1} -1)+2
\end{align}

となり\(n+1\)の時も主張は正しい。

よって、帰納的に全ての自然数\(n\)について主張は正しい。以上のことにより、\(a_n\)を\(10\)で割ったときの余りは、\(n\)の値にかかわらず\(2\)である。(証明おわり)

あとがき

最後まで閲覧していただきありがとうございました。

2項係数の演習問題として以下の問題も用意しています!合わせて解いてみてください。

https://sacramy.com/math-exercise4-nikoukeisuu/

数学では入試問題1問から学ぶべきことが多くあると思います。復習して解法をどんどんと溜めていきましょう!

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最終更新:2021 1/30(Sat.)

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Y. S.

洛北(中高一貫)→京都大学理学部3生|元駿台特待, EX生|予備校勤務 |個別指導講師(英数)|高3時, 京大模試英語で全国15位以内を1年間で7回達成|ポケモン全国3位(2013), 全国Top8(2017), 全国Top4(2018)|大学受験英語・数学や大学の学問紹介の記事を中心に書いています。

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