
目次
問題
問1
\(xyz\)空間の3点\(\mathrm{A}(1,0,0), \mathrm{B}(0,-1,0), \mathrm{C}(0,0,2)\)を通る平面\(\alpha\)に対して点\(\mathrm{P}(1,1,1)\)と対称な点\(\mathrm{Q}\)の座標を求めよ。ただし, 点\(\mathrm{Q}\)が平面\(\alpha\)に対して点\(\mathrm{P}(1,1,1)\)と対称とは, 線分\(\mathrm{PQ}\)の中点\(\mathrm{M}\)が平面\(\alpha\)上にあり, 直線\(\mathrm{PM}\)が\(\mathrm{P}\)から平面\(\alpha\)に下した垂線となることである。
問2
赤玉,白玉,青玉,黄玉が1個ずつ入った袋がある。よくかきまぜた後に袋から玉を1個取り出し, その玉の色を記録してから袋に戻す。この試行を繰り返すとき, \(n\)回目の試行で初めて赤玉が取り出されて4種類全ての色が記録済みとなる確率を求めよ。
方針
問1
ごく基本的な空間ベクトルの計算問題です。点\(\mathrm{Q}\)が平面\(\alpha\)に対して点\(\mathrm{P}(1,1,1)\)と対称な条件を立式して、連立1次方程式を解いてやれば簡単に解くことができます。ここで、見かける頻度があまり高くない平面の方程式について、一度復習しておきましょう。
平面の方程式
\(xyz\)空間上の平面の方程式は一般に, 実数\(a,b,c,d\)(ただし, \((a,b,c) \neq (0,0,0)\))を用いて、
\(ax+by+cz+d=0\)と表される。
(証明)
点\(\mathrm{A}\)(\(\vec{a})\)を通り、\(0\)ではないベクトル\(\vec{n}=(a,b,c)\)に垂直な平面\(\alpha\)を考えよう。平面内の任意の点を\(\mathrm{P}(\vec{p}\))とすると、点\(\mathrm{P}\)が平面\(\alpha\)上にある条件は、
点\(\mathrm{P}\)が点\(\mathrm{A}\)と一致しないとき:\(\vec{\mathrm{AP} \perp \vec{n}}\)
点\(\mathrm{P}\)が点\(\mathrm{A}\)と一致するとき:\(\vec{\mathrm{AP}}= \vec{0}\)
となるので、これらをまとめると、
\(\vec{\mathrm{AP}} \cdot \vec{n} =0\)
つまり、
\((\vec{p}- \vec{a}) \cdot \vec{n} =0\)
となる。
\(\mathrm{P}(x,y,z)\)、\(\mathrm{A}(X,Y,Z)\)として先ほどの条件式に代入すると、
\(a(x-X)+b(y-Y)+c(z-Z)=0\)
となる。特に、\(d=-aX-bY-cZ\)とおくことで、
平面の方程式の一般形:\(ax+by+cz+d=0\)
を得ることができた。(証明おわり)
証明の過程でも出て来ましたが、平面\(\alpha\)に垂直なベクトルのひとつは次のように取ることができます。
平面\(\alpha\):\(ax+by+cz+d=0\)に垂直なベクトル(法線ベクトル)のひとつは、
\(\vec{n}=(a,b,c)\)と表される。
つまり平面の方程式の\(x,y,z\)の係数を順に並べたものが法線ベクトルになっているわけですね。
この事実は2次元平面上で直線の方程式が一般に\(ax+by+c=0\)で表現されることに似ていますね。2次元では\(x,y\)の1次式の線形結合が直線を表し、次元を1つ上げて3次元にしてやると、\(x,y,z\)の1次式の線形結合が表すものは先ほどの直線が平面に変わっています。
この事実が理解できていれば、後は1次方程式を解くだけの作業になります。くれぐれも計算ミスだけには注意しましょう。
問2
「~して初めて」の類の確率は、ちょうど~の部分と、~よりも直前の部分の様子に分けて探ることで現象が把握しやすくなります。(もちろん、確率漸化式を用いる場合もありますが。)
本問では、\(n\)回目には赤玉が出て、\(1\)回目から\(n-1\)回目までは白玉、青玉、黄玉がそれぞれ少なくとも1回出ることになります。次に、残った\(1\)回目から\(n-1\)回目までを処理することになりますが、「少なくとも~」の形で確率が表されているので、確率を集合として捉えるようなやり方(ベン図を書くことと本質的には同じです。)を実行すると分かりやすいです。この手法を駿台数学科の三森先生は「ふるいの方法」と称されていました。ここでもその呼び名を使用することにします。
ふるいの方法
題意の確率の条件が「すべての~」「少なくとも~」「かつ」「または」などの日本語で表されているとき、この手法が有効です。以下では簡単のため、\(\mathrm{U}\)を全体集合(全事象)とし、\(\mathrm{A,B,C, \cdots}\)をその部分集合(部分事象)としておきます。このとき、それらの事象とその事象が起こる確率について以下の関係式が成立します。(証明は多すぎるので今回は省略させていただきます。)
・全体事象と余事象
\(P(\mathrm{U})=1\), \(P(\mathrm{E} \cap \mathrm{A})=P(\mathrm{E})-P(\mathrm{E} \cap \mathrm{\overline{A}})\)
→特に第2式で\(\mathrm{E}= \mathrm{U}\)とすると、\(P(\mathrm{A})=1-P(\mathrm{\overline{A}})\)
→「少なくとも~」など直接考えにくい場合は否定のほうの確率に注目して、全体から引いてやる方が早く求まることが多いです。全体は全事象\(\mathrm{U}\)のみならず、その部分事象の\(\mathrm{E}\)とすることもあります。(→本問)
・ド・モルガンの法則
\(P(\overline{\mathrm{A \cap B}})=P(\overline{\mathrm{A}} \cup \overline{\mathrm{B}})\)
\(P(\overline{\mathrm{A \cup B}})=P(\overline{\mathrm{A}} \cap \overline{\mathrm{B}})\)
余事象を考える時に否定を考えましたが、否定する部分が「かつ」「または」で表されている場合にはこの法則を用いるとうまくいきます。
・和の公式
[2つの場合]
\(P(\mathrm{E} \cap (\mathrm{A} \cup \mathrm{B}))=P(\mathrm{E} \cap \mathrm{A})+P(\mathrm{E} \cap \mathrm{B})-P(\mathrm{E} \cap ( \mathrm{A} \cap \mathrm{B}))\)
→特に\(\mathrm{E}= \mathrm{U}\)とすると、\(P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B})=P(\mathrm{A})+P(\mathrm{B})-P(\mathrm{A} \cap \mathrm{B})\)
[3つの場合]
\begin{align}
P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C})=P(\mathrm{A}) &+P(\mathrm{B})+P(\mathrm{C}) \\
&-P(\mathrm{A} \cap \mathrm{B}) -P(\mathrm{B} \cap \mathrm{C})-P(\mathrm{C} \cap \mathrm{A}) \\
&+P(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} \cap \mathrm{C})
\end{align}
P(\mathrm{A} \cup \mathrm{B} \cup \mathrm{C})=P(\mathrm{A}) &+P(\mathrm{B})+P(\mathrm{C}) \\
&-P(\mathrm{A} \cap \mathrm{B}) -P(\mathrm{B} \cap \mathrm{C})-P(\mathrm{C} \cap \mathrm{A}) \\
&+P(\mathrm{A} \cap \mathrm{B} \cap \mathrm{C})
\end{align}
さいごに和の処理方法を抑えておきましょう。関連する例題を載せておきましたので、興味がある方は後で解いてみてください!
類題
(類題)ふるいの方法・さいころを投げる問題①
さいころを\(n\)回振り, 第1回目から第\(n\)回目までに出たさいころの目の数\(n\)個の積を\(X_n\)とする。
(1)\(X_n\)が\(5\)で割り切れる確率を求めよ。
(2)\(X_n\)が\(4\)で割り切れる確率を求めよ。
(3)\(X_n\)が\(20\)で割り切れる確率を\(p_n\)とおく。\(\displaystyle \lim_{n \to \infty} \log(1-p_n)\)を求めよ。
注意:さいころは\(1\)から\(6\)の目が等確率で出るものとする。
(03 東京大学理系前期)
(類題)ふるいの方法・さいころを投げる問題②
\(n\)を\(2\)以上の自然数とする。さいころを\(n\)回振り、出た目の最大値\(\mathrm{M}\)と最小値\(\mathrm{L}\)の差\(\mathrm{M}-\mathrm{L}\)を\(\mathrm{X}\)とする。
(1)\(\mathrm{X}=1\)である確率を求めよ。
(2)\(\mathrm{X}=5\)である確率を求めよ。
(17 京都大学文系)
解答
問1
\(\mathrm{Q}(X,Y,Z)\)とおく。また平面\(\alpha\)の方程式を実数\(a,b,c,d\)(\((a,b,c) \neq (0,0,0)\))を用いて\(ax+by+cz+d=0\)とおく。
この平面は3点\(\mathrm{A}, \mathrm{B}, \mathrm{C}\)を通るのでそれぞれの座標を代入することで、
a+d &=0 \\
-b+d &=0 \\
2c+d &=0
\end{align}
を得るが、\(d=0\)とすると、\((a,b,c) = (0,0,0)\)となってしまい不合理。よって\(d \neq 0\)であり、平面\(\alpha\)の方程式は、
\(-x+y-\frac{1}{2}z+1=0\)
とおける。
ゆえに、この平面の法線ベクトルは\(k(-1,1,- \frac{1}{2})\)(\(k\)は\(0\)ではない実数)と書け、
\vec{\mathrm{PQ}} &=(X-1,Y-1,Z-1) \\
&= k(-1,1,- \frac{1}{2}) \tag1
\end{align}
と書ける。また、\(\mathrm{PQ}\)の中点が平面\(\alpha\)上にあることから、
- \frac{X+1}{2}+\frac{Y+1}{2}- \frac{Z+1}{4}+1=0 \tag2
\end{align}
と書ける。
(1)式と(2)式から\(X,Y,Z\)を消去して\(k\)について解く。
X &=1-k \\
Y &=1+k \\
Z &=1- \frac{1}{2}k
\end{align}
を(2)式に代入することで、\(k=- \frac{4}{9}\)を得る。
ゆえに、\(\mathrm{Q}(\frac{13}{9},\frac{5}{9},\frac{11}{9})\)となる。(問1の答え)
問2
\(n\)回目に赤玉が出る確率は\(\frac{1}{4}\)である。
\(1\)回目から\(n-1\)回目までを考えると、赤玉は0回で白玉、青玉、黄玉はそれぞれ少なくとも1回以上出る。
\(\mathrm{R}\):(\(1\)回目から\(n-1\)回目までに)赤玉が1回も出ない事象
\(\mathrm{W}\):白玉が少なくとも1回出る事象
\(\mathrm{B}\):青玉が少なくとも1回出る事象
\(\mathrm{Y}\):黄玉が少なくとも1回出る事象
としておく。すると、求める確率は、\(P(\mathrm{R} \cap \mathrm{W \cap B \cap Y})\)となるので、全体事象を\(R\)としたときの余事象を考えて、
P(\mathrm{R} \cap \mathrm{W \cap B \cap Y}) &= P(\mathrm{R})- P(\overline{\mathrm{R} \cap \mathrm{W \cap B \cap Y}}) \\
&= P(\mathrm{R}) - P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}} \cup \overline{\mathrm{B}} \cup \overline{\mathrm{Y}}) \\
&= P(\mathrm{R}) - (P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}})+P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{B}})+P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{Y}}) \\
&-P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}} \cap \overline{\mathrm{B}})-P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{B}} \cap \overline{\mathrm{Y}})-P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{Y}} \cap \overline{\mathrm{W}}) \\
&+P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}} \cap \overline{\mathrm{B}} \cap \overline{\mathrm{R}})
\end{align}
となるが、\(\mathrm{W,B,Y}\)の対称性に注目すると、
\(P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}})=P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{B}})=P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{Y}})\)
\(P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}} \cap \overline{\mathrm{B}})=P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{B}} \cap \overline{\mathrm{Y}})=P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{Y}} \cap \overline{\mathrm{W}})\)
となる。
\(P(\mathrm{R})\)は\(1\)回目から\(n-1\)回目までに赤玉が1回も出ない確率であり\((\frac{3}{4})^{n-1}\)
\(P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}})\)は\(1\)回目から\(n-1\)回目までに赤玉も白玉も1回も出ない確率であり\((\frac{2}{4})^{n-1}\)
\(P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}} \cap \overline{\mathrm{B}})\)は\(1\)回目から\(n-1\)回目までに赤玉も白玉も青玉も1回も出ない確率であり\((\frac{1}{4})^{n-1}\)
\(P(\mathrm{R} \cap \overline{\mathrm{W}} \cap \overline{\mathrm{B}} \cap \overline{\mathrm{R}})\)は\(1\)回目から\(n-1\)回目までに赤玉も白玉も青玉も1回も出ない確率であり\(0\)
となるから結局求める確率は、
\( \displaystyle \frac{3^{n-1}-3 \cdot 2^{n-1} +3}{4^{n-1}} \cdot \frac{1}{4} = \frac{3^{n-1}-3 \cdot 2^{n-1} +3}{4^n}\)(答え)
あとがき
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注意
・京都大学の入試問題の掲載にあたり、著作権法上の権利を損ねないよう、試験問題等の利用について | 京都大学 (kyoto-u.ac.jp)に従って記事作成後一か月以内に「京都大学入試問題等利用報告書」を提出しています。
・以上6問はすべて京都大学2021年度理系数学の問題です。