基本事項解説 大学受験 数学

【保存版】2項係数の関係式の証明 ②応用編 -恒等式の利用-

目次

  1. まえがき
  2. 2項係数の関係式と証明
  3. 実際の入試問題
  4. あとがき

まえがき

本記事では【保存版】2項係数の関係式の証明 ①基本編 | Sacramyに引き続き、2項係数の関係式を証明していきます。今回は前回とは違って恒等式を利用することで証明を試みます。ぜひ最後までご覧になってください。

2項係数の関係式と証明

まず、議論を進めるために以下の恒等式を考えます。\((x+1)^n\)を2項展開すると得られる\(x\)についての恒等式

\((x+1)^n = {}_n \mathrm{C} _0 + {}_n \mathrm{C} _1 x + {}_n \mathrm{C} _2 x^2 + \cdots + {}_n \mathrm{C} _n x^n \tag1\)

を考えます。ここから、この恒等式に対して様々な操作を施すことで美しい等式が順に得られるのですが、どのような操作をすべきか分かりますか?

ここで一旦恒等式の扱い方について復習しておきましょう。①数値代入具体値代入) ②微分定積分 ④(整式の場合に限り)両辺の係数や因数の比較がメジャーな手法でした。詳しく知りたい方は「【保存版】恒等式の4つの扱い方」を参照してください。記事が完成し次第、URLを貼っておきます。

では順に(1)式に対して上に挙げた①~③の操作を施すことで次々に等式を導いていきましょう。

※以下の等式は、恒等式を利用せずとも、前回の記事:【保存版】2項係数の関係式の証明 ①基本編 | Sacramy で証明した2項係数の基本的な関係式3つ、あるいは数学的帰納法を用いることでも証明できます。ですが、やや冗長になってしまうので今回はスマートな証明方法のみにとどめておきましょう。余力がある方は是非こちらの方法でも証明してみてください!

まず、(1)式に\(x=1\)を代入してみましょう。すると、

\(2^n = {}_n \mathrm{C} _0 + {}_n \mathrm{C} _1 + {}_n \mathrm{C} _2 + \cdots + {}_n \mathrm{C} _n \tag2\)

を得ます。つまり、2項係数を全て足してあげると、その結果は\(2^n\)に等しくなることが分かりました。

次に、(1)式に\(x=-1\)を代入してみましょう。すると、

\(0 = {}_n \mathrm{C} _0 - {}_n \mathrm{C} _1 + {}_n \mathrm{C} _2 + \cdots + (-1)^n {}_n \mathrm{C} _n \tag3\)

を得ます。つまり、2項係数をプラスマイナスを交互に足してあげると、その結果は相殺してちょうど\(0\)になることが分かりました。(3)式を分かり易くすると、

\(\displaystyle \sum_{k \in even}^{} {}_n \mathrm{C} _k = \sum_{k \in odd}^{} {}_n \mathrm{C} _k \tag4 \)

となります。偶数番目の和と奇数番目の和が等しいというイメージをもっておくとよいでしょう。

では次は(1)式を微分してみましょう。(以下では式が少し煩雑になってしまうのでシグマ記号を用いて項をまとめておきます。)

\begin{align}
n(x+1)^{n-1} &= {}_n \mathrm{C} _1 + 2 {}_n \mathrm{C} _2 x + \cdots + n {}_n \mathrm{C} _n x^{n-1} \\
&= \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k {}_n \mathrm{C} _k x^{k-1} \tag5
\end{align}

微分しても(1)の恒等式は恒等式のままですので、(5)式に\(x=1\)を代入すると、

\(n 2^{n-1} = \displaystyle \sum_{k=1}^{n} k {}_n \mathrm{C} _k \tag6\)

となります。

最後に(1)式を\(x\)で\(0\)から\(1\)まで定積分してみましょう。すると、左辺のほうは、

\begin{align}
\int_0^1 (x+1)^n dx &= [ \frac{(x+1)^{n+1}}{n+1}]^1_0 \\
&= \frac{2^{n+1} -1}{n+1}
\end{align}

また、右辺のほうは、

\begin{align}
\int_0^1 {}_n \mathrm{C} _0 + {}_n \mathrm{C} _1 x + {}_n \mathrm{C} _2 x^2 + \cdots + {}_n \mathrm{C} _n x^n dx &= [ {}_n \mathrm{C} _0 x + \frac{ {}_n \mathrm{C} _1 }{2} x^2 + \frac{ {}_n \mathrm{C} _2 }{3} x^3 + \cdots + \frac{ {}_n \mathrm{C} _n }{n+1} x^{n+1} ]^1_0 \\
&= {}_n \mathrm{C} _0 + \frac{ {}_n \mathrm{C} _1 }{2} + \frac{ {}_n \mathrm{C} _2 }{3} + \cdots + \frac{ {}_n \mathrm{C} _n }{n+1}
\end{align}

となりますから、結局、

\(\frac{2^{n+1} - 1}{n+1} = \displaystyle \sum_{k=0}^{n} \frac{{}_n \mathrm{C} _k}{k+1} \tag7\)

※ここで紹介した応用編の等式はあくまでも応用編のスタートに過ぎません。前回記事で紹介した基本的な公式や今回恒等式に対して用いた①~③の手法を組み合わせることでより複雑な等式を導いていくことができます!

実際の入試問題

(問題)

\(n\)を\(1\)より大きい整数とする. このとき以下の条件を満たす\(0\)以上の整数\(r\)がただ一つ定まる:
条件:\(n\)は\(2^r\)で割り切れるが,\(2^{r+1}\)では割り切れない.

(1)\(1\)以上\(n\)以下の任意の整数\(i\)に対して,2項係数\({}_{2n} \mathrm{C} _{2i-1}\)は\(2^{r+1}\)で割り切れることを証明せよ.

(2)\(n\)個の2項係数\({}_{2n} \mathrm{C} _{2i-1}\) (\(i=1,2,\ldots , n\))の最大公約数は\(2^{r+1}\)であることを証明せよ.

(18 奈良県立医科大学・医学部(後期))

解答解説は以下の記事を参照してください。かなり手ごたえのある問題だと思います。

あとがき

最後まで閲覧していただきありがとうございました。

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2項係数の関係式はまだまだ奥深いものがあります。次回の「2項係数の関係式 ③応用編」に乞うご期待!(入試数学演習シリーズのほうで投稿するかもしれません。)

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Y. S.

洛北(中高一貫)→京都大学理学部3生|元駿台特待, EX生|予備校勤務 |個別指導講師(英数)|高3時, 京大模試英語で全国15位以内を1年間で7回達成|ポケモン全国3位(2013), 全国Top8(2017), 全国Top4(2018)|大学受験英語・数学や大学の学問紹介の記事を中心に書いています。

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