
目次
問題
\(f(x)\)は区間\([0, \infty)\)上で一様連続であるとする。このとき, ある正の定数\(\mathrm{M}\)が存在して,
\(|f(x)| \leq \mathrm{M}(x+1)\)
とできることを示せ。
(※)ただし. 関数\(f(x)\)が区間\(\mathrm{I}\)上で一様連続であるとは, 任意の\(\epsilon>0\)に対してある\(\delta>0\)が存在して, 任意の\(x,y \in \mathrm{I}\)に対して,
\(|x-y|<\delta\)ならば\(|f(x)-f(y)|<\epsilon\)
が成立することをいう。
方針
式だけ見ていても分かりにくいので、一度視覚的に捉えてみましょう。まずは以下の画像をイメージしてみてください。

この問題は\(f(x)\)の絶対値つきを上から評価する問題でしたね。ですので、\(|f(x)|\)が最大限大きくなれるような状況を考えてみます。(話を簡潔にするため、以下では\(y>0\)の部分で議論を進めます。)
\(|x-y|<\delta\)ならば\(|f(x)-f(y)|<\epsilon\)の部分で\(y\)を\(x\)から増やしていった時に\(f(y)\)もそれにつれて大きくなる(\(f(x)\)が単調増加関数である)場合、\(|f(x)|\)がより大きくなってくれそうです。(この部分は自分でいろいろ図を書いてみましょう。)
すると、イメージ的には\(x\)軸方向に大体\(\delta\)増やしたら\(y\)軸方向にも大体\(\epsilon\)増えることになります。これはちょうど1次関数くらいのスピードで増えてくれそうですね!
今評価したいのは\(|f(x)|\)なので座標\(x\)に来るまでに\(x\)軸方向に\(\delta\)を\(n\)回増やしたとしましょう。(\(n\)は自然数とします。)このとき、
\(x\)は大体\( n\delta\)
\(|f(x)| \)は大体\( |f(0)|+n \epsilon\)
となるので、前者を後者の式に代入すると、
\(|f(x)| \)は大体\(\displaystyle |f(0)| + \frac{\epsilon}{\delta}x\)
となり、最大でもせいぜい1次関数のオーダーで増加することが感じ取れます。あとはこのあたりの定性的な議論をしっかりと数式に起こしてあげれば解答が完成します。
解答
一様連続における\(\epsilon\)を特に\(1\)としておく。
ここで\(x>0\)を任意に取る。このような\(x\)と一様連続の\(\epsilon =1\)に対する\(\delta\)に関して、アルキメデスの原理より、ある自然数\(n\)が存在して
\(x< n\delta \tag1\)
とできる。\(n \leq 2\)のとき、(1)式を満たす自然数\(n\)のうち特に最小のものを考えることで、
\((n-1)\delta \leq x < n\delta \tag2\)
となる。このとき、三角不等式を繰り返し用いることで、
|f(x)| &= |\sum_{k=1}^n (f(\frac{k}{n}x)-f(\frac{k-1}{n}x))+f(0)| \\
&= |(f(\frac{n}{n}x)-f(\frac{n-1}{n}x))+ \cdots + (f(\frac{1}{n}x)-f(0))+f(0)| \\
&\leq |(f(\frac{n}{n}x)-f(\frac{n-1}{n}x))|+ \cdots + |(f(\frac{1}{n}x)-f(0))|+|f(0)| \\
&\leq1+ \cdots +1 + |f(0)| \\
&= n + |f(0)| \tag3
\end{align}
ただし、3行目から4行目の式変形では\(\displaystyle |\frac{k}{n}x - \frac{k-1}{n}x|=\frac{x}{n} < \delta\)となり、一様連続の式から\(\displaystyle |f(\frac{k}{n}x) - f(\frac{k-1}{n}x)|<1\)と抑えられることを利用した。
また、(2)式の左側の不等式から\(\displaystyle n \leq \frac{x}{\delta}+1\)を得るので(3)式に代入することで、
\(\displaystyle |f(x)| \leq n + |f(0)| \leq \frac{x}{\delta}+(1+|f(0)|) \tag4\)
となる。\(n=1\)のときについては、(3)式について、
\(\displaystyle 1+|f(0)| \leq \frac{x}{\delta}+(1+|f(0)|\)(∵\(\displaystyle \frac{x}{\delta} \leq 0\))
となるから(4)式は正しい。また、\(x=0\)のときについても、
\(\displaystyle |f(0)| \leq 1+|f(0)| \leq \frac{x}{\delta}+(1+|f(0)|\)
となるから(4)式は正しい。
以上のことにより、\(\displaystyle \mathrm{M}=\max\{\frac{1}{\delta},1+|f(0)|\}\)とおくと、
\(\displaystyle |f(x)| \leq 1+|f(0)| \leq \frac{x}{\delta}+(1+|f(0)| \leq \mathrm{M}(x+1)\)
となり題意が示された。(証明おわり)
関連入試問題
(類題)一様連続と不等式評価
\(a_0, a_1, a_2, \cdots , a_n , \cdots\)を実数の数列とする。ある正整数\(p\)が存在し,
\(|m-n| \leq p\)
を満たす零以上のすべての整数\(m,n\)に対して, 不等式\(|a_m-a_n|<1\)が成り立つとする。このとき, ある正の実数\(\alpha, \beta\)が存在し, 零以上の任意の整数\(n\)に対して不等式
\(|a_n|< \alpha n+\beta\)
が成り立つことを証明せよ。
(17 奈良県立医科大学後期)
(方針)
一様連続における連続関数を数列に置き換え(さらに定義域を連続量から非負整数という離散量に変え、)\(\epsilon=1, \delta=p\)とした問題に見えます。先ほどと同様の考え方により解答することができます。
(解答)
順次作成します。
あとがき
最後までご覧いただきありがとうございました。
大学の数学の記事を書くのは今回が初めてでしたが、これからも稀に投稿していこうと思います。特に、大学数学の中でも今回の問題のように受験生でも理解することができ、高校数学と大学数学の橋渡しとなるような内容を提供していきたいと思います!
最後に、自分が大学1回生の時に重宝した微分・積分の参考書を紹介して締めさせていただきます。大学に入ると行間を省きすぎて初学者にはすぐには分からない本が多いですが、この本は初学者の方でもスラスラと理解できると思います。
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