目次
まえがき
今回の記事では漸化式の解法について述べていきます。高校の指導過程では「このタイプの漸化式を見たらこの解法だ!」となっているケースが多いようで、解法暗記に嫌気がさしたという方も少なくないはずです。そこで本記事では前回の線形2項間漸化式の革命的解法に引き続き、特殊な2項間漸化式の解法を丸暗記に頼ることなく説明していきます。
本記事は前回の記事をまだ読んでいない方でも理解できるように仕上げました。前回の記事:「線形2項間漸化式の革命的解法」については本記事の一番下から飛べるようになっています。ぜひ合わせてご覧ください!
解ける漸化式
この章は前回の記事で既に読んでいただいた方は飛ばしてもらっても大丈夫です。復習用として利用していただいても構いません。
一般に「漸化式」という時、数列の各項をそれ以前の項の関数として定める等式、という認識がなされており、これにはすごくごちゃごちゃしていて複雑なもの(=高校数学の範囲では(ましてやたとえ大学数学の範囲に拡張したとしても)その一般項を記述できないもの)が含まれており、しかもそれらが大半を占めます。ですが、高校数学(ⅡB範囲)で扱うのは基本的には一般項を記述可能な漸化式(以下、「解ける漸化式」という)のみであり、解ける漸化式の形は決まっています。解ける漸化式は教科書・参考書を見ていると様々にあるように思えますが、つまるところ本質的には以下の3パターンに(ほとんど)帰着させることができます。
①\(a_{n+1}=a_n+d\) (等差型)
②\(a_{n+1}=ra_n\) (等比型)
③\(a_{n+1}=a_n+f(n)\) (階差型)
既知であるとは思いますが念のため①から③の解法を提示しておきます。(これに関してはあまりにも簡単なため、具体例は省略します。)
【解ける漸化式の解法】
①\(a_{n+1}=a_n+d\) (等差型)
等差数列の公式を用いることにより、\(a_n=a_1+(n-1)d\) (答え)
②\(a_{n+1}=ra_n\) (等比型)
等比数列の公式を用いることにより、\(a_n=a_1r^{n-1}\) (答え)
③\(a_{n+1}=a_n+f(n)\) (階差型)
移行することにより、
\(a_{n+1}-a_n=f(n)\)
上式のnをkで置き換えた式で、\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}\)として、\(n≧2\)のとき、
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}(a_{n+1}-a_n)=\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}f(k)\)
左辺の途中の項は相殺するから、
\(a_n-a_1=\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}f(k)\)
∴ \(a_n=a_1+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}f(k)\) \(n≧2\)
あとは\(n=1\)で成立するかを調べればOk. (答え)
では以下で本題に入っていきますが、常に頭の中で考えるべきことは「解ける漸化式に帰着させる」ということです。
階比型
\(a_{n+1}=f(n)a_n\) (階比型)
解ける漸化式に帰着させようとしたとき、\(a_n\)にかかっている\(f(n)\)が邪魔でこれをどうにかして解決しなければなりません。
この問題を解決するには主に2つの手法があります。
(ⅰ)\(g(n)a_n\)が線形2項間漸化式となるような数列\(g(n)\)を探して「解ける漸化式」の形に帰着させる。
(ⅱ)\(a_1\)になるまで漸化式を繰り返し用いる。
抽象的なことばかりでよく分からないので具体例を示しておきましょう。
例① \(a_{n+1}=\frac{n}{n+1}a_n\) \(a_1=2\)
(ⅰ)右辺の分母を払うことにより、\((n+1)a_{n+1}=na_n\)となる。
\(b_n=na_n\)とおくと、\(b_{n+1}=b_n\)が成立するからこの漸化式を解くと、
\(b_n=b_{n-1}=…=b_1=1 \cdot a_1=2\)
∴\(a_n=\frac{2}{n}\) (答え)
(ⅱ)漸化式を繰り返し用いると、
&=\frac{n-1}{n} \frac{n-2}{n-1}a_{n-2} \\
&=… \\
&=\frac{n-1}{n} \frac{n-2}{n-1} … \frac{2}{3} \frac{1}{2} a_1 \\
&=\frac{a_1}{n} =\frac{2}{n} (答え)
\end{align}
例② \(a_{n+1}=\frac{3a_n}{n}\) \(a_1=1\)
両辺に\(n!\)をかけると、\(n! \cdot a_{n+1} = n! \cdot \frac{3a_n}{n} =3(n-1)! a_n\)
\(b_n=(n-1)! a_n\)とおくと、\(b_{n+1}=3b_n\)が成立するからこの漸化式を解くと、
\(b_n=3^{n-1}\)となるから結局、\(a_n=\frac{3^{n-1}}{(n-1)!}\) (答え)
次数相異型
\(a_{n+1}=r{a_n}^p\) (次数相異型)
解ける漸化式に帰着させるために、両辺が正であることを(数学的帰納法などで)確認した後、両辺の底を\(r\)を底とする対数をとります。
例 \(a_{n+1}=2 \sqrt a_n\) \(a_1=1\)
\(a_1 > 0\)で、\(a_{n+1}=2 \sqrt a_n\)(>0)であるから、帰納的に全ての自然数\(n\)に対して\(a_n > 0\)である。
よって、\(a_{n+1}=2 \sqrt a_n\)の両辺の2を底とする対数をとると、
\(\log_2 a_{n+1}=\log_2 2 \sqrt a_n\)
ゆえに、\(\log_2 a_{n+1}=1+ \frac{1}{2}\log_2 a_n\)
\(b_n =\log_2 a_n\)とおくと、\(b_{n+1}=1+\frac{1}{2}b_n\)
これを変形することにより、\(b_{n+1}-2 = \frac{1}{2}(b_n -2)\)
ゆえに、\(b_n -2 ={(\frac{1}{2})}^{n-1}(\log_2 1 -2)\)
すなわち、\(b_n =2-2{(\frac{1}{2})}^{n-1}\)
したがって、\(log_2 a_n =2-{(\frac{1}{2})}^{n-2}\)から、\(a_n =2^{2-2^{2-n}}\) (答え)
あとがき
最後まで閲覧していただきありがとうございました。
前回の記事をまだご覧になっていない方は以下から記事をご覧ください。
次回以降では、分数型の漸化式、確率漸化式で頻出の連立2項間漸化式や教科書では基本扱われていない3項間漸化式の発展例にも言及し、高校数学で扱う漸化式を網羅していくつもりです。
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最終更新:2020 9/22(Tue.)